悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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ゆらゆら

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 ノゥスとカイ、セゥスは馬で早駆けしてバギォ王宮へと向かう。

 同じ帝国の属国で親善国ともなったバギォ王国の王は、さきほども突然やってきたセゥスたちに馬を貸してくれ、今もまた快くノゥスとカイ、セゥスを迎えてくれた。

「ああ、いらっしゃい、待ってたよ。転移門だね、どうぞ使って」

 やさしく微笑んでくれたバギォ王は、トゥヤとトコハとお茶を飲んでた。

「……えぇえええ……?」




 転移門は、帝国の各地と属国を繋ぎ、一瞬で移動を可能にする魔導門だ。
 朝早くに出立したのに、まだ陽は中天に差しかかってもいない。

 あっという間にラゼン王宮に戻ってきたノゥスとカイ、セゥスに、皆があんぐり口を開ける。

「は、はやくない……!?」

 トトラといっしょに、アーシェも、ラディまでのけぞってる。


 離宮のユィリが使っていた寝室に入ると、いつも鋭いトゥヤの瞳がさらに切れあがった。

「ここでユィリがいなくなったんだな。ちょっと皆、出ていてくれ」

 仕切ってくれるトゥヤに、皆がすぐに従った。

 14歳の少年なのに。

 その強さが分からないだろうトトラもアーシェも、ぷるぷるしてる。


「……僕は残っても構わないだろうか。隅で気配を消しているから」

 セゥスの言葉に、ちょっと眉をあげたトゥヤが、ちらちら瞬く光と話をしてる。

「わるい、出てくれるか。
 他の人の気配があると、あまりに微かな残滓は消えてしまう」

「……わかった。すまない」

 胸に手をあてて、心からの謝罪を表したセゥスに、トゥヤが微笑む。


「ユィリのことが、ほんとにすきなんだな」

「ああ」

 うなずいたら、トゥヤは不思議そうに首をかしげる。


「それでも伴侶(予定)契約を破棄した?」

「……間違った。……僕は、人形で……父上の屈辱をそそぐことが僕の使命だと……思っていたんだ。
 それでユィリを傷つけた。周りの皆も」

「反省した?」

 ふかく、うなずく。


「ユィリを、大事にする?」

 まっすぐ顔をあげる。


「命を懸けて」


 ──きみのためなら

 どんなことも、成してみせる。


 きっと、間違わないほうがいい。
 ユィリを傷つけるなんて、絶対だめだった。

 でも間違ったからこそ僕は、きみへの愛を、知ったんだ。



「なら、たすける」

 いつも鋭い目をほそめたトゥヤが、ふうわり、笑ってくれた。











 * * *




「着いたぞ、ゆり。またしばらく揺れる。今度は馬だ」

 丸太みたいにかつぐんじゃなくて、おひめさま抱っこして船から降ろしてくれたらしい海の言葉に、目隠しされたままの僕は、しょんぼりだ。

「まだ揺れるんだね……」

「とうぶん揺れる。疲れただろう、寝てていい」

「いや、僕はさらわれてるだけだから、疲れてるのはウミでしょう」

 とんと、海の胸をたたいたら、低い声が落ちる


「……ゆりをさらった悪人に、あんまりやさしくするな」

「ウミは、わるい人じゃないでしょう」

 僕を抱きしめる腕が、強くなる。


「弟のために、ゆりをさらう、酷い人だ」

 声は、馬のいななきに、かき消された。


 目隠しされたままの僕の身体が、揺れる。

 強い潮の匂いが遠くなり、大地の緑の香りが鼻をかすめる。


 あったかい海の腕に抱っこされて、揺すられて、酔い止めの治癒魔法で、ぽかぽかしてる僕は、ゆらゆらされて…………馬って、想像以上にものすごく揺れるんだけど、海の抱っこが、かんぺきだ……!


 ゆらゆら……ゆらゆら……ゆらゆら……


 …………ぐぅう…………



 ……寝ちゃったみたい、で、す……!


 緊張感の、まるでない僕……!







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