悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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ごめんなさい

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 セゥスさまが帰ってきてくれるまで、僕はいい子でお待ちした。

『いい子で待っててね!』言う人も、いい子で待てないとね!

 さすが、つよつよな僕!


「ゆりちゃぁあぁああん! よかったよぉおおおお!」

 僕の捜索に奔走してくれていたというサザお兄ちゃんと、爆速で駆けつけたロドお兄ちゃん、おかあさん、おとうさんが、泣いて抱っこしてくれた。

「心配かけて、ごめんね!」

 僕も、うるうるだよ。
 そんなに心配してくれるなんて!

「ちょっとうれしい」

 照れ照れの頬で笑ったら、皆がぎゅうぎゅう抱きしめてくれる。

「けがはない?」
「苦しくない?」
「大変だったね……!」

 泣いて抱っこしてくれて、あまやかしてもらうのも、ちょっと怖い目に遭った後は、とってもうれしいのです。


 でも

「セゥスさま、帰ってこないね」

 しょんぼり落ちてしまう肩に、家族の皆が、ギリギリしてる。


「ゆりちゃんの方が、はやく帰ってくるとか、何やってるの……?」

 ロドお兄ちゃんの背中から闇が噴きあがりそうなのを、あわあわ止めた。


「カイには連絡つくのかな?」

 心配で見あげる僕の頭を、サザお兄ちゃんがなでなでしてくれる。

「今日の夜、連絡をくれるはずだから、そのときに知らせるよ」

 じゃあ、今日の夜には、セゥスさまにも伝わって、帰ってきてくれるかも!

「よかった。皆の無事をお祈りするね」

 ふわふわ笑ったときだった。



「ユィリ──!」

 陽のひかりの髪が揺れる。

 若葉の瞳が、揺れている。


「おかえりなさい……!」

 セゥスさまが、僕を抱きしめて泣いてくれる。

 セゥスさまの香りがする。

 涙の、香りがする。


「僕、つよつよになるの。
 だから今度からは、いい子で待っててね」

 胸を張って笑ったら


「いなくなったら、追いかけたいよ、ユィリ」

 ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれる。


「うれしい、セゥスさま」

 背伸びして、あなたのおでこに、口づける。

 ちゅ


「だいすき」


 照れくさくて燃える頬で、うれしさと、しあわせに弾ける胸で笑うのに


「ユィリ……! あいしてる……!」


 セゥスさまが、泣いてる。


 ……笑ってほしかった。

『よくがんばったね、ユィリ』

『ひとりで帰ってこられるなんて、すごいよ』

『ユィリ、つよつよだね!』

 ほめて笑ってほしいだなんて、僕はちょっぴり、よわよわで。

 笑ってくれることばかり、思いえがいていたのに


「ユィリ、無事だった?
 ひどいこと、されなかった?」

 ロベナ王国でいちばんのかんばせを、くしゃくしゃにして、あなたが、泣いてくれる。

 僕のために。


 抱きしめてくれる肩が、指が、ふるえてる。

 僕のせいで。


「……僕のこと、心配、してくれた……?」

 してくれたらいいと願っていた。

 だって、それはきっと、愛だから。


「胃の腑がなくなるかと思った」

 あふれる涙とささやくセゥスが、真っ青だ。

 僕のせいで。


「うわあん……!
 心配かけて、ごめんなさい、セゥスさま……!」

 くしゃくしゃに泣きだした僕を、あたたかな潮の香りのする腕が抱きしめてくれる。


「ユィリがさらわれたことに気づけなくて、追いかけられなくて、追いつけなくて、ほんとうにごめんなさい……!」

 ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれる。


「ゆーりが無事で、ほんとに、よかった……!」

 くずおれるノゥスに

「ゆりさま……!」

 涙をにじませるカイに、僕は皆をどれだけ心配させていたのか改めて噛みしめた。


 うれしいよりも

『僕、つよつよになる!』

『立派に、ひとりでお家で帰るんだ!』

『いい子で待っててね!』

 とってものんきに、元気にしていた僕が、申しわけなくて、涙がにじむ。


「心配かけて、ごめんなさい……!」

 のーすちゃんを、カイを抱きしめたら、セゥスさまがちょこっと、ぷっくりして、トトラと、きんにくひめと、アーシェが笑ってくれた。



 感動の再会を見守ってくれていた海に

「お前が元凶か──!」

 僕の家族の皆(カイ含む)と、のーすちゃんから闇が噴いた。


「ユィリを連れ戻してくれたことには感謝するが、さらったのも君だね?」

 セゥスの瞳が切れあがる。





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