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かわいい?
しおりを挟む「かわいー主人公と握手できたし、じゃあ俺、帰るね」
にこにこ手を振ってくれる透夜に、手を振りかえす僕を後ろに押しこめるようにカイが前に出た。
「もうちょっと、いてくれますか、トゥヤ師匠。抑止力として。
この、あやしさ満開のユィリおぼっちゃまのオトモダチ、あんぽんたんみたいに強いんでしょう」
カチリと音をたてるように、透夜の目と海の瞳が重なった。
海の膝が、屈するように微かに曲がる。
首をかしげる透夜の夜の髪が、しずかに流れた。
「……ああ、カイとだと、ちょっと厳しいかな。常葉はいける」
ふんと、緑の髪を揺らした常葉が、緑の瞳をひらめかせ、かわいい鼻を鳴らした。
「変な技を使われなければでしょう。僕、トゥヤみたいな化け物じゃないよ」
「ひでえな」
笑った透夜と常葉を前に、海の額に汗がにじんだ。
「……どっちも、化け物だろ……」
しぼりだすような海の声が、ふるえてる。
「俺にさえ気配を追わせないスキルを持ってる化け物に言われたくない」
鼻を鳴らす透夜に、海も高い鼻を鳴らした。
「追ってきたくせに。だからこんなに早く帰ってきたんだろう」
「ユィリの気配を追ったんだよ。連れてるユィリの気配は、ちょこっと漏れてた」
「……は……!? そんなはず──」
目をむく海を、背中に押しこめた僕は、前にでる。
「大事なお話の途中ですが!
僕のこと『ユィリ』って呼んでいいのは、セゥスさまだけだから──!」
きゅう
セゥスさまを、抱っこしてみた。
耳まで真っ赤になったセゥスが、僕を抱っこしてくれる。やさしい。かわいい。
「だいすき!」
心のなかで思ったはずが、声に出てた!
きゃ──!
緊迫しかなかった皆が
「…………は…………?」
あんぐりしてる。
紅に染まったセゥスが
「ユィリ、だいすき」
ぎゅうぎゅう抱っこしてくれました。
しあわせ!
「いやもうユィリくん、天然なの? あざといの? あざとかったら相当だよ!?」
アーシェくんに、しかられました!
「あ、ユィリくんならいいのか。すまん、ユィリくん」
びっくりするくらいの、ごつごつの手で、透夜が頭をぽんぽんしてくれました。
「じゃあまあ抑止力として、話しあいしようか?
とりあえず最初は転生者仲間で」
透夜の目が、海と、アーシェと、僕を見る。
「……え……?」
ぽかんと見あげる僕に、透夜の瞳が細くなる。
「スキルに反応しなかった。転生者だよな?」
洞察力の怖すぎる透夜……!
さすが激つよカイの師匠だよ!
海くんが冷や汗かいちゃうくらい、つよつよなんだよ……!
きゃ──!
「……え、えとえと、僕、も……?」
ちょっと涙目になっちゃう僕……!
色々ありすぎて、まだセゥスさまに前世のこととか話してないよ!
話すべきなのかどうかもわからないのに……頭のおかしい子だと思われたら、泣いちゃう……!
まだ、つよつよ希望だから!
まだちょっと、よわよわだから……!
「なんか怖いから、ユィリくんも一緒にいて!」
抱きついてくるアーシェくんが、セゥスに、べりべり引きはがされました。
「ユィリが参加するなら、僕も参加する」
セゥスが僕を抱っこしてくれる。
「いや、ちょっと外してほしい。誓って何もしないし、させないから」
透夜が軽く手をふった。
ただそれだけで
パァン──!
海の頬をかすめ、窓の隙間を通りぬけた大気に撃ち抜かれた、白い宮を彩る噴水の雫が、破裂した。
はらりと海の髪が頬にもどる。
なめらかな頬に、傷はひとつもない。
髪はひとすじも、傷つけられていない。
けれど確かに海の頬の横をかすめ、窓の隙間を通りぬけた大気の斬撃が、噴水の雫を弾けさせた。
誰もが息をのんだ。
いつものんきな僕でさえ、動けなくなる。
「……化け物か……」
ふるえる海の声に、透夜は笑う。
「今のは『よい子の隠密団』なら皆できる。な、常葉」
「かわいい空撃だからね。そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」
可愛い顔で、首をかしげてる!
ほ、ほんとに、よい子なの……!?
きゃ──!
めちゃくちゃビビって、ぷるっぷるで抱きあうアーシェくんと僕と、海くんと、透夜くんで、お話とか、こわすぎる……!
きゃ──!
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