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こくはくじゃないよ!
しおりを挟む「よし、じゃあ改めて、海には、悪意も害意もないってことでいいんだな」
まとめてくれる透夜に、ありがとうの視線を送りつつ振りかえる僕に、海は胸に手をあてたまま宣誓するように、うなずいた。
「誓う。
ゆりのためなら、なんでもするよ」
「そ、そんなのいいんだよ! 気にしないで!」
あわあわする僕の言葉にかぶせるみたいに
「きゃー♡ 告白みたい!」
アーシェが、きゃわきゃわして、透夜も拍手してる。
「おお、いいな! 『鉄板BL』の話、鉄板すぎて俺も覚えてないけど、BLゲームなロロァさまと俺も、ゲームの筋から外れて元気に生きてるし、皆すきに生きていいんだよ。
転生者の子孫×悪役令息か。あんまりないかも? よかったな、ユィリ……くん!」
透夜が話を、まとめにきてる!
「海くんは僕に恩義を感じてくれてるだけだし、僕がすきなのは、セゥスさまだから!」
燃える頬で叫ぶ僕に、透夜の切れ長の瞳が、まるくなる。
「伴侶(予定)契約、破棄されたんじゃなかったのか?」
しょぼんと僕は、肩を落とす。
「……されちゃったの……」
「二度と結べないよな?」
「……結べないの……」
「どうするんだ?」
「……のーぷらんなの……」
「なるほど?」
首をかしげる透夜が、不思議そうだ。
「自分のことを捨てた男を、まだすきなの? 演歌?」
透夜にも言われた!
最初に言った海も、うむうむしてる。
ぽんとアーシェが手を打った。
「あー、なんか歌があったよね。おじいちゃんが歌ってた!」
「おじいちゃんなの!?」
呼び名に、泣いちゃう!
「なんで、すきなの?」
首をかしげる透夜に、熱い頬で、ぽそぽそ告げる。
「……セゥスさま、おとうさまが王配なんだけど、陛下が愛してるのは、のーすちゃんの、おとうさまで……セゥスさまはずっと、おとうさまの恥辱をそそぐために頑張ってきて……貴族やおとうさまの圧力で、より治癒魔法の才能のあるアーシェくんと伴侶(予定)にってお話になって、それで僕との契約を破棄したの」
「僕、セゥスさまと伴侶(予定)契約、結んでないからね。丁重にお断りしたから」
アーシェの言葉に、ぽかんと透夜は口を開けた。
「主人公なのに? 王太子を振った!?」
「ほんとに主人公なのか、あやしいよ。皆、ユィリくんのことが、めちゃくちゃすきなんだけど。セゥスさまも、ユィリくんしか見てないし。そんな人の伴侶になるとか、ぜったい無理!」
ぶうぶうふくれるアーシェが、かわいい。
「アーシェくんは、主人公だと思うよ」
僕の言葉に、透夜もうなずく。
「ぴんくで、かわいー。間違いないと思う」
ほめられたアーシェが、赤くなってる。かわいい。
にこにこした僕は、口をひらく。
「僕、伴侶(予定)契約を破棄された衝撃で、前世の記憶がよみがえったんだよ。それまで立派な、いやーな悪役令息だったの。心を入れ替えて、がんばってるの!
そしたら皆が仲よくしてくれるようになった、みたい?」
「いや最初から、なかよしでしょ」
アーシェくんに、つっこまれました。
「セゥスさまがね、もう、おとうさまの人形を辞めるって。王太子を辞退するって。……僕のこと……す、すきって言ってくれたの。
僕も、セゥスさま、だいすきなの」
もじもじしながら、言ってしまいました!
恋バナ、はずかしい……!
「あー、なんか胸やけしてきた」
透夜の目が遠い。
「聞いたのは透夜くんでしょ! ひどくない!?」
もっちもっちの熱い頬で、涙目になってしまう僕に、透夜が笑う。
「しあわせ?」
心の奥まで見通すような、透きとおる瞳に、微笑んだ。
「とっても」
こっくりうなずく僕の頭を、ぽんぽんした透夜が海を振りかえる。
「だって」
しずかに海が、目を閉じる。
「……わかった」
僕の、アーシェの、海の目をのぞきこんだ透夜が、微笑んだ。
「皆の気もちは、わかった。カイと海がいれば、大抵のことは何とかなるだろ。何ともならなくなったら、呼べばいい。バギォ王国の『よい子の隠密団』はいつでもお仕事、募集中だから。転生者とその血縁同盟割引にしてあげる」
片目をつぶってくれる透夜が、かっこいー!
透夜の肩がきらめいて
パキィイイン──!
防音の結界が、解かれてく。
「ユィリ──! 何もされなかった!? だいじょうぶ!?」
駆け寄って抱きしめてくれるセゥスが、涙目だ。
「のろけを聞かされただけだよ」
透夜が笑った瞬間、音もさせずに常葉が透夜の後ろに立っていた。
「海は、だいじょうぶだ、カイ。心配ない。
もし何かあったら呼べばいい」
わしゃわしゃカイの頭をなでなでした透夜が、手をあげる。
「じゃあな。元気で」
微笑みが残像のようにかすんで、消えた。常葉といっしょに。
「ありがとうございました、師匠! 常葉も!」
「感謝する!」
「ありがとう!」
「元気でね!」
「またねー!」
カイとセゥス、ノゥス、僕とアーシェの声に、手をふる海に、透夜と常葉が手を振りかえしてくれる笑顔が、見えた気がした。
「それで、ゆりちゃん、どういうお話になって、ゆりちゃんをさらった男と仲よくしてるのか、教えてくれるかな……?」
ロドお兄ちゃんと家族の皆と、のーすちゃんの背中から、闇が噴いてる!
きゃ──!
────────────────
ずっと読んでくださって、ありがとうございます!
すぐ減っちゃうかもですが(笑)今は! だいふくユィリのお話が、私のお話のなかで、いちばん! お気に入りをいただいているお話になりました……!
きがるに読んでいただけたらいいなと思って、とてもきがるにはじめたお話だったのですが、もう文字数も22万字に! 途中で骨も折れましたね(笑)
10万字あったら『おお、いっぱい書いた!』と思う人なので、快挙なのです!(笑)
ここまで続けてこられたのは、ぜんぶ、今までずっと読んでくださったあなたさま、お気に入りに入れてくださった方、いいねやエール、ご感想で応援してくださった皆さまのおかげです。
ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます!
読んでくださる方がいらっしゃるなら、だいふくユィリのお話、これからもぽちぽち続けてゆけたらと思います。
楽しんでくださったら、ユィリとセゥスと皆といっしょに、とてもとても、うれしいです!
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