【完結】きみの騎士

  *  ゆるゆ

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真の試験

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 魔撃試験に一応合格させて貰ったリイは、ザインに光騎士殿の奥に呼ばれた。

 光騎士団長席の奥、レイサリア光国の旗の奥に隠されたレイサリア光国の紋章にザインの指が触れると、銀の光が舞いあがる。

 夏の光も鳥の歌も遠くなり、レイサリアの紋章だけが白銀の光芒を振りまいた。

 気づいた瞬間には、宇宙のなかに浮かんでた。
 あわあわする暇さえなかった。
 深い蒼の闇のなかに、数多の星がきらめいている。

 世界から切り離された星の宮に、ザインとリイだけが佇んだ。
 天と地に輝くのはレイサリアの紋章、建国の祖レイサリアの魔紋だ。

「至光騎士戦で優勝し、魔撃試験に合格した者だけが、光騎士となれる。
 光騎士とは、魔撃を行い、光剣を扱うことのできる騎士のことだ。
 これよりリイの身体のなかに光剣を封じる。
 この秘儀は光騎士にのみ許されたもの。
 決して他言するな」

 射るような鋼の瞳に頷いた。

「そなたの身体が鞘となり、そなたの気魄が剣となる」

 ザインがリイを指す。
 リイの手のなかの光剣が、銀の光を振りまきながら空中へと舞いあがる。

「汝リイ、レイサリアの光騎士となれ」

 ザインの身体から溢れる光が、リイの額に吸い込まれて消えた。

「レゼリア・ディファルト」

 銀の光が爆発する。

 あふれる魔力のなか、リイの光剣が銀の光の粒となり、リイの身体に吸い込まれて消えてゆく。

 燃えるような熱い衝撃が、リイの身体を貫いた。

「──っ!」

 目のなかを、光剣のきらめきが駆け抜けてゆく。

 くずおれそうな身体を懸命に支えたリイに、ザインは唇の端をあげた。

「よかったな、選ばれて。
 光剣に選ばれなければ、死ぬところだ」

「………………は!?」

 仰け反るリイに、ザインは笑った。

「根性の腐った輩は、死ぬ。
 これが真の光騎士試験だな」

 喉を鳴らして笑うザインに、真っ白になる。

「『こいつ死ぬかもしれん』とちらっとでも思ったら警告するが、『大丈夫だろ』と思うのには警告しない。
 コルタには一応警告したぞ」

 楽し気なザインに、リイの目が遠くなる。

 ……うん。
 コルタ、自分大すきだからね。
 たぶん、きっと、主より自分を護るからね!

 コルタが死ななくてよかった!
 自分も!

 ばくばく変な音をたてる鼓動が、耳元でうなる。


「これでリイは、真の光騎士だ。
 主を護り、よく仕えるように」

 唖然とザインを見あげたリイは、身体のなかの熱い力に震えながら膝を折る。


 ──……これでほんとうに、レイサリア光国の光騎士に。

 胸を張って、ルフィスの傍に。







 千年光国に、召集の鐘が鳴る。

 王侯貴族最高位の前で行われる、年に一度の光騎士選だ。


 ゆく夏を惜しむ朝、王宮に低く響きわたる鐘の音を聞きながら、お飾りの気楽さで、リイは議会殿へと足を踏み入れた。

 普段は入場を許されない白亜の光国議会殿で、正装した全光騎士が敬礼する。

 その圧巻の姿を見ようと、ひめさまたちもこっそり押しかける。


 栄えある光騎士選に来賓を許されるのは、光国貴族として王に認められた証、舞踏会と並ぶ名誉なことだ。

 光国議会殿は中央に玉座、その傍に議長席があり、それを取り囲むように十層にも貴族席が連なる。
 広大な月光石の御殿は擂鉢状、闘技場のような造りだ。

 天を覆う硝子には白銀の星がきらめき、陽のひかりを玉座へと集める。
 席次は固定で、上になるほど身分が低く、玉座に近い者ほど身分が高い。

 病床に伏しておられるため今は空席の玉座の後ろには、天井の星へと翔る光芒をきらめかせる白銀の星の彫像が、居並ぶ光騎士を照らしだした。


 議長が木槌を振り下ろす音が、熱い沈黙の張りつめる議会殿を震わせる。

「定刻により、千年光国レイサリア王直属光騎士選を開始する。
 新人光騎士リイ、前へ!」

「は!」

 白い編上靴が鳴る。
 膝を折り敬礼するリイに、議長は重々しく手をあげた。


「リイを所望する諸侯の御名を読みあげる」

 はいはい、誰もいませんですね、恥ずかしいから早く終わってください。

 吐息したリイの向こうで、議長は巻紙を開いた。






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