【完結】きみの騎士

  *  ゆるゆ

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きみの傍

ざまぁじゃないよ! ……たぶん

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 謀反を起こしたラトゥナは、負傷した兵士の手厚い保障、損害を受けた王宮の補修、セリスを育ててくれた里親への心尽くしと併せ、七年の謹慎となり、キールも五年の謹慎を言い渡された。

 千年光国レイサリア王太子に反逆した罪としては、破格に軽い。

 レミリアさまの御力で死者はひとりも出なかったことで、罪が大幅に軽減されたという。


「不穏な噂を聞きました。
 お母さまが、わたくしを光王にと画策なさったとか。
 …………本当ですの?」

 眉をひそめるロエナに、ラトゥナは笑った。

「真です」

「まあ──……!
 それで巻き込まれてキールは怪我をしたのね。かわいそうに。
 お母さまは時々わたくしに内緒で、吃驚することをなさるのよ。
 謀反だなんて今回は本当に仰け反りました。
 ちっとも知らなくてごめんなさい、キール」

「い、いえ──! あの……ロエナさまは王位をお望みではないのですか……?」

 ロエナは微笑んだ。

「わたくしはお母さまの娘に生まれて大満足です。
 レイサリアの血を引かず、王位から解放される。
 あの血は大変ですのよ。魔力の塊ですもの。
 それにレイティアルト兄さまを見たでしょう。息つく間もない激務です。
 そのうえゲルク王女にまで言い寄られますのよ!?
 そんなこと、わたくしが望むと思う?」

 真っ白になるキールに、ラトゥナが笑う。

「ロエナの無欲が、レミリアとレイティアルトをあざむく砦となってくれたのですよ。
 キールにロエナの思いを伝えなかったのは、いじわるだったかもしれませんね」

 花のように微笑むラトゥナに、愕然としたキールは、目を拭った。

「キール、どうしたの? おかし食べる?」

 菓子を半分わけてあげるセリスに、キールが泣いている。

 ロエナは、ほんのり朱い頬で微笑んだ。

「はやくみなの謹慎が解けるといいですね。
 リイさまの月華のお姿が見られないなど、拷問のようです。
 わたくしまで謹慎になってしまったのですから、お母さまは反省なさってください」

 ガチリと硬直したリイは、ますます出られなくなった。

 ふくれるロエナに、セリスを抱きしめたラトゥナが笑う。

「セリスをこの手で抱けるなら、幾度でも命を懸けます」

「まあ、わたくしのためには?」

「幾度でも」

 母の両腕に抱かれた弟と姉が笑う。

 キールは真っ白な顔で、ロエナを見つめた。

「…………ろ、ロエナさまは、その……あの……り、リイのことが……」

 目をふせたロエナが、紅い頬で、はにかむ。

「キールには気さくに話しかけられるのに、リイさまには恥ずかしくてお話もできないのです。
 キールから聞くリイさまのお話が、どれほどわたくしを満たしてくれたか。
 女君であられると伺っても、わたくしの思いは変わりません。
 それどころか、いや増すようで…………ああ、お姉さま──……!」

「ロエナのほうが年上ですよ」

「突っ込まないでください、お母さま」

 こぼれる笑い声と、崩れ落ちるキールを背に、リイはラトゥナの庭園から逃げ出した。


 全力でキールにごめんなさい!

 俺は何も聞きませんでした!






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