【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ

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舞踏会編だよ!

きっと

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「もしかして、ドディア帝国の次期筆頭侯爵、ジゼ・ディオ・ジェディスさまですか? 攻略対象の?」

 透夜の問いに、答えがない。

 当たり前だけど、しかばねじゃなくて、警戒されてるんだと思うな。

 闇龍の傍に突然やってきて、攻撃されないだけでもありがたいよ。

 バギォ帝国、評判、わるいからね。
 暗殺人形を使って、暗殺を繰りかえしてきたもんなあ。

 いくら小国が生き残るためとはいえ、やったらいけないことをやってきた。
 その報いを受けるのは、仕方ない。

「……俺、悪役っぽいのかな」

 元暗殺人形だったからね。
 あるじが、悪役令息のロロァさまだからね。
 仕方ないね。

 しょんぼり落ちる透夜の肩を、ロロァのちっちゃな手が、ぽふぽふしてくれる。

「とーや、すごく、すごく、かっこいーよ!」


 ……あなたがそう言ってくれたら

 どんなことだってできる気がするんだ。


 ふわふわ熱くなる胸で、笑う。


「ロロァさま、だいすきです」

 ぎゅうぎゅう抱っこしたら

「僕も、とーや、だいすき!」

 真っ赤なほっぺで、笑ってくれる。

 感情さえも消された暗殺人形だったのに、求められ、思ってもらえる。
 至高のしあわせを与えてくれるのが、唯一のあるじだなんて。

 とろける頬で、ちいさなあるじを、抱きしめた。



 ふわふわもふもふ獣人と、ジゼさまに警戒されちゃったのは残念だけど、仕方ない。

 悪気が微塵もなくても、伝わらないことってあるよね。

 帰ってしまいそうな龍に乗ったふたりを見送ろうとしたら、ちっちゃな獣人が声をあげた。

「内緒、で、ドディア帝国、から、遊び、きましあ! よかたら、バギォ帝国、案内、おねがぃ、しましあ!」

 警戒は解かないぞ、な感じで、ふあふあのしっぽが、ぴんと立ってる!


「か──わ──い──い──♡♡♡」

 もだもだする透夜に、とろけていたロロァの目が一気に胡乱になった。

「……とーや……?」

 幼い声が、大地を這ってる!


「ふあふあは正義です!」

 拳を握った透夜は、精霊さんと一緒に飛びあがる。


「喜んで! バギォ帝国、案内するよー!
 さっきも言ったけど、俺は透夜、こちらは俺のあるじのロロァさま。あなたがたのお名前は?」

 ほんとの名前じゃなくても、呼び名くらいは教えてほしいな。

 聞いた透夜に、ちっちゃな獣人が手を挙げる。

「リトでし」

「……ジゼだ」

 おぉ! たぶんほんとの名前を教えてくれました!

 やっぱり攻略対象のジゼさまだ!

 しかも、もふもふ獣人のリトと、超絶いちゃいちゃしてる。

 この歳だと、まだBLゲームは始まってない、よな?

 ……バグ?

 それを言うと、悪役令息なロロァさまと、愛を育んでいる透夜も、バグかもしれない。


 この世界は、BLゲームの世界にとてもよく似ているけれど。
 BLゲームには微塵も出てこなかった透夜やリトのような人たちが、たくさん生きていて。だからきっと、BLゲームと違う展開になってゆくのかもしれない。


 ロロァを悪役令息になんて、絶対させない。

 決意して、ロロァを愛した透夜のように。


 このちっちゃな獣人も、攻略対象のジゼさまを愛して、BLゲームを変えてゆくのかもしれない。


 なら、きっと、仲間だ。





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