毒殺されそうになりました

夜桜

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第23話 幸せな結婚

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 食事を終えると、マックスウェルが現れた。

「よろしいですかな、アレク様」
「どうした」
「ルーナ様の件です。確かな情報が入りました」
「本当か! 話してみろ」

 マックスウェルによれば、街の住人がたまたま静かな森の中へ逃げた猫を追いかけて、その先でルーナの遺体を見つけたという。
 木に吊るされ、酷い有様のようだった。

「――というわけです」
「そうか……」

 それを聞いてほんの少しだけ同情した。
 けれど、自業自得でもある。

「いかがなさいますか」
「もちろん、レオンハルト伯にこのことを伝え、彼女の遺体を引き渡す」
「分かりました。直ぐに手配いたします」

 ようやくこれで……。

 その後、ルーナの遺体は父のもとへ。むろん悲しむ様子もなく、淡々と葬儀が進んだ。
 わたしも不思議なくらい涙ひとつ出なかった。


 それよりもダモクレスノイドルの行方。
 彼はいったいどこにいるのだろう。


 その謎が解けることはなかった。

 けれど。



【一ヶ月後】



「イリス、結婚してくれるかい」
「喜んで」


 わたしは、ルーナやダモクレスノイドルのことをすっかり忘れ、平和な日々を過ごしていた。

 あれから不幸なことが起きる心配もなく、ただアレクとの静かな時間な流れた。

 わたしは彼の為に料理を振舞った。
 アレクは幸せな顔を向けてくれる。
 それだけで十分。


 お父様もアレクを認め、屋敷に招くようになった。二人はたまにお酒を飲み明かすようだった。


 もうなにも心配はいらない。

 辛かったこと、悲しかったこと……たくさんあった。

 でも今は幸せ。


 結婚指輪をはめてもらい、キスまでしてもらった。自然と涙が零れ、愛があふれそうになった。

 私とアレクの関係が強固だと分かると、フリードリッヒ・ノイベルンも認めてくれた。お爺様は特に、わたしの料理を褒めてくれた。
 料理が決定的となり、結婚を認めてくれたと言っても過言ではない。


 もうわたしとアレクを阻む者はいない。


 ――ある日、手紙が届いた。


【あなたとアレクの幸せを祈る。イングリッド・バーンシュタイン】


 え……イングリッドから?
 更に読み進めると最後にこう書かれていた。


【大悪党から足を洗うことにした。ダモクレスノイドルはもう現れない】


 ……そうか、イングリッドこそダモクレスノイドルだったんだ。


「どうしたんだい、イリス」
「いえ、なんでもありません」


 私は手紙を破り、風に乗せた。
 パラパラと舞っていく紙片。

 わたしの肩に手を置くアレク。

 その指には指輪が。


「さあ、城へ戻ろう」
「そうですね、アレク」


 幸せな日々が続く――。
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