2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ

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16話

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━━━「ふぅ…」

パソコン画面から目を離し、椅子の背もたれに全体重をかけて背伸びをする。一日の半分を資料作りに当て、最終チェックを行う。

「お疲れ、蓮見」

頬に温かい物が当てられ肩がビクリとする。声のする方を向けば、伊崎が缶コーヒーを渡す。

「ん、ありがとう」素直に受け取ると、冷え切った体を温める為にコーヒーを空け、喉を潤す。

「もう、資料作り終わったのか?」伊崎がパソコン画面を見ながらそう尋ねてきた。

「うん、何とか。」

「そっか。…この後は直帰?」

俺は、壁に掛けてある時計をチラリと見る。時刻は5時半を回っていた。

「うーん。直帰…かなぁ?」曖昧な返事をする。本当ならケーキを買って帰りたい所だけど、夜にかけて冷え込みが激しくなると言っていたので、明日でいいやという考えが頭の中を支配する。

「んじゃ、気を付けて帰れよ!」笑顔で俺の髪をクシャクシャにしながら何処かへと行ってしまった伊崎。俺は、髪を整えながら帰る準備を始める。






━━━━「ハァ…」

会社を出ると、口から出た白い息が空気中に消える。早く帰ろうと足早に歩く。




ガチャッ

玄関のドアを開け、秀次が帰ってくる時の為に鍵を掛けないでおく。靴を脱ぎ、寝室から寝間着を取り脱衣所へ向かう。服を脱ぐと直ぐにお風呂へ入る。シャワーで冷えた身体を温かくする。髪、身体、顔を洗い終えると脱衣所へと上がる。

寝間着に着替えると、リビングへ行きテレビを付けてソファへもたれ掛かる。

テレビを付けるとお笑い番組やCMが次々と流れてくる。テレビ画面をボーッと眺める。

「……」

明日の記念日は何を作ろうかな…とテレビを見ながら考え込む。明日はケーキだけを買ってきて、料理は手作りをしようと会社で資料を作っている途中に思いついた。

秀次の好きなグラタンでも作ってみようかな。

そう思い立つと、俺は明日の買い物に必要なメモを準備し材料を書き記していく。
















━━━━━次の日。

午前中に掃除等の家事を終わらせ、昼過ぎに買い物にスーパーへ出掛けた。

「チーズ……、チー……あった。」昨日書き記したメモを見ながら、グラタンに必要な材料を取っていく。作り方は以前テレビで放送されていたのを録画して取っていたので、見ながら作ろうと考えた。

レジの会計を終え、袋詰めを行った後店を出る。外へ出ると肌寒さが強く一瞬で鳥肌が立った。

「早く帰ろう…」1人ぼそりと呟くと足早へ家へと向かう。

ガチャッ

家へ帰ると、肌寒さから少しだけ解放された。コートを脱いでハンガーへかける。そして、エプロンに着替える。必要な材料を確認しながら袋から出していく。

「よし、作ろう…」そう意気込み、テレビの録画を見ながら作っていく。



ピーピー

オーブンの音が鳴り、蓋を開けて中身を確認する。慣れない作業に苦労しながらやっと最終段階までこれた。今日1番功績を挙げたのはオーブンではないかと思う程、使った気がする。

「美味しそう…」オーブンから取り出すと、白い湯気がふわっと上がり、表面のチーズは程よく焼き色がついている。思わずゴクリと喉を鳴らす。


「冷ましてる間に片付けようかな」散らかった食器や食材を順に片付け直しながら秀次の帰りを待つ。時刻は6時を回っている。秀次の会社は6時半に終わると以前言っていたのを思い出す。


だが、半を過ぎても帰ってこない。机にグラタンを並べて大人しく待つ。時間だけが刻一刻と過ぎていく。

「遅いなぁ…」今回も帰ってこないのかな…。


携帯を開き、ダメ元で秀次に電話をかける。

プルルルル、プルルルル、プルル━ ッ

「あ、もしも━━━」繋がったと思い、返事をする。

「~…」誰かと話し込んでるのが微かに聞こえてくる。

秀次と……………若い女の人。

楽しげに話し込んでいる様子で、俺は罪悪感を抱きながら会話を盗み聞きする。

「秀次、さっきの電話恋人からじゃないの?」女の人が秀次の名前を呼んでいる。

「違うよ」秀次の声がする。

「秀次は恋人とかいるの?」

「…んー、」柔らかい声音で微笑みながら返事をする秀次。

「じゃぁ、一人暮らしなの?」

「今の所はね…ブツッ

ツー    ツー

電話を力無く切る。……………ッ!

視界が滲む。呼吸が落ち着かない。崖から突き落とされた様な感覚がする。頭が殴られたみたいにフラフラする。

目の前に置かれている冷めたグラタンをボーッと見つめ、暫くの間涙を流し続ける。
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