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01 遭遇
しおりを挟むもともと噂はあった。
我が社に産業スパイが潜入していること。
でなければここ一年間の業績悪化や他社にうちの新商品を先回りして売られるなんてこと、起きるはずもない。
(ただ『彼』でなければ良かったのに……)
こういう時ほど嫌な予感は当たる。
灯りの消えた社にそっと戻ると『彼』はいた。
経理マネージャーの添塚清臣。
三つ年上の会社の先輩。
何事にもきっちりと取り組む姿勢から、ついたあだ名は『歩く精密機械』。
細フレームに三つ揃いのスーツをかっちりと着こなした姿からも、それが窺える。
その『彼』が今、誰もいないオフィスで書類とにらみ合っていた。
足音を殺して近づき、背後から声をかけた。
「何してんですか。先輩」
はっと我に返った清臣が振り返る。
細フレームの眼鏡がのった顔は、相も変わらず美しい。
男にこんな表現を使うのもどうかと思うが、入社初日に俺の指導役になってくれてからずっとこの人はきれいだ。
「大上……? お前もやり残した仕事があったのか」
そっと先輩が見ていた書類をデスクにしまおうとするが、その手を掴んだ。
(やっぱり……!)
書類には今年発売予定の新商品の出荷スケジュールが記載されていた。
決して社外に持ち出してはならない極秘情報。
それをひとけのいないこの時間に見ている先輩。
さらにもう一つ。
最近の彼はマネージャーの年俸にしては明らかに高い瀟洒なスーツを着ている。
営業で身だしなみに気をつけているから分かる。
先輩の体格に添って作られたダークスーツは、明らかにオーダーメイドだ。
「あんたがスパイだったんですね……」
低い声で脅すように言えば、先輩が驚愕で目をみはる。
それすらも演技に見えた。
「違う! 私じゃない。これは私も調べようと思って――!?」
デスクに押し倒す。
その衝撃で先輩の眼鏡が外れて、床に落ちた。
めったに見ることがない先輩の素顔。
きれいな二重まぶたに、ぴんと立った鼻筋、きっちりと後ろになでつけられた黒髪が押し倒した時に崩れていた。
ほつれた前髪が彼の額にかかっている。
(うわ。色っぽい……)
掴んだ手を離そうと先輩の手が俺の手に添えられる。
男にしては細くてきれいな指先。爪はよく手入れされて、ピンク色に光っている。
必死に押し返そうと息を荒くする姿が『あれ』と直結する。
(そういや、今月まだ一回もヌいてねーや)
目の前には入社してからずっとオカズとして使っていた先輩が、興奮した面持ちでこちらを睨んでいる。
「っ! 手を離せ、大上!」
仕事中、いつもポーカーフェイスの先輩が、いま俺の前で激昂している。
その事実に情欲のたまった体が一気に切り替わる。
産業スパイとして問いつめるよりも、この人のこういう顔をもっと見たい。
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