6 / 66
鷹取晴翔は鷹取晴翔である2
しおりを挟むX X X
複数のクエストをクリアした俺は早速ギルド会館へと赴いた。
「す、すごいです!わずか数時間で、こんなに多くのクエストをクリアできるなんて……」
巨大猪、巨大カエル、ゴーレムの討伐報酬で20万メソ、アイテムの買い取り額が10万メソ。貨幣の価値は1メソ=一円くらいだ。
ちなみに依頼主は農業協同組合の人で、上記の三つのモンスターが畑や農地などを食い荒らしているとのことで、依頼を出したという。弱いモンスターではないため、なかなか依頼を引き受ける冒険者が現れなかったけど、俺のおかげで穀物や青果物の値段が安定すると、ギルド会館の関係者と、他の冒険者たちが喜んでくれた。
何はともあれ、約一ヶ月分の給料に相当するお金が手に入ったわけだ。とりあえず宿を探そう。
と、思いながらギルド会館を出た俺は、夜の街をひたすら歩いた。すると、食欲をそそる匂いが俺の鼻口を刺激する。
「おいっしいイカ焼きっす!今日は新鮮なイカがいっぱい入ったから、食べないと損すよ!ふ~ふふん~ふふふん~」
と、軽いノリの男が鼻歌混じりに炭火でイカを焼いている。
「そういえば、ここにきてからまだ何も食べてないな」
と、一人で呟いていると、足がひとりでに動いた。
「あの、一つお願いします」
「はい!600メソっす!」
「はい」
俺は所持金のうち600メソを取り出し、キレッキレな動きでイカを焼いている男にそれを渡した。
「あざっす!すぐ用意しますんで!」
男は、笑顔のままこんがりと焼けたイカに、赤いソースといろんな香辛料をまぶしてから俺にそれを渡した。
「どうぞどうぞ!」
「ありがとうございます」
竹串に刺された赤いイカ焼きからはもくもくと湯気が立っている。俺は歩きながらぱくついた。
もぐもぐ
「うん……美味しい。これが異世界の食べ物……」
辛すぎずくどすぎず、香辛料がイカ独特の生臭さを程よく抑えてくれている。これは、悪くないかも。
この調子だと、贅沢言わなければ、そこそこ余裕のある生活が送れる。
「俺も店構えてスローライフ……目指してみようかな」
そう笑顔で呟きながら宿を探す俺。
でも、
心が締め付けるように痛い。
宿を見つけ、代金を払い、シャワーを浴びて、ベッドに潜り込んでも、この痛みは消えてはくれなかった。
両親を亡くした俺は、一人ぼっちだった。もちろん、親戚や優しい友人はいたが、ぽっかりと空いた俺の心の穴は埋まらなかった。
ずっと一人ぼっち。他のみんなは、家族も兄弟も恋人もいて、居場所があって、とても幸せそうだった。
だけど俺は、家に帰ったら、見えるのは埃の積もった誰もいない部屋。
ここにきても同じだ。
異世界に転生しても、鷹取晴翔は鷹取晴翔だ。
そんな当たり前の事実を今になって気づくなんて、俺は愚か者だ。
唇を噛み締めて目を瞑ったが、この残酷な事実は消えてくれない。
「……」
だけど、この辛い事実を吹き飛ばすような風景が頭をよぎった。
アニエスさんとアリスとカロル。
『ありがとうございます……本当に……』
俺が二人の男を始末し、アニエスさんに毛布をかけたときに、彼女に言われた言葉。
色っぽくて切ない表情と潤んだエメラルド色の瞳。
そして娘であるアリスとカロルもアニエスさんと似たような視線を向けていた。
『よかった!』
『っ!』
『っ!』
下着が見える二人に毛布をかけてから俺が放った言葉。
今でも思う。
本当によかったと。
彼女らがひどいことをされずに済んで本当によかった。
「ふふっ」
思わず頬が緩んでしまう自分を戒めようとしたが、釣り上がった口角はなかなか元には戻らない。
俺の心にのしかかっていた苦しみも、いつしか消え失せ、睡魔が差してきた。
今日は気持ちよく寝れそうだ。
けれど、あの3人の美人母娘の表情は既に脳裏にこびりついていたので、俺が眠りにつくまで離れなかった。
追記
次回は母娘が登場します!
楽しみにしていてください!
299
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる