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ぎこちなさは、むしろ獲物を引き寄せる1
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X X X
「よし!あとはお金を入れる箱をこっちに……」
汚れてもいい作業服を着た俺はいつもの場所に屋台を出し、タコ焼きを売るための準備に取り掛かる。
前回の経験を生かして幾つかの工夫をしてみた。まずは決済システム。
ここは日本みたいに券売機やなんちゃらペイが存在しないので、メソという貨幣による支払いしかできない。なので、小さな箱を置いたわけだが……
「治安のいい日本ならすりとかあまりないと思うんだが、ここはな……」
厳つい冒険者が屯したり謎の集団が貴族の屋敷を襲撃するなど、この国の治安はそんなによくなさそうだ。
改めて平和な日本がどれほどいい国だったのか思い知った瞬間である。
あと、他にもいろんな微調整を加えたので、前回と比べたら、効率良くタコ焼きが作れる気がした。
「始めようか」
そう呟いてから俺は熱くなったタコ焼き器に生地を流し込む。
すると、遠くから地味なドレスを身にまとい、ハット帽子を被った女の子がこちらにやってくる。
早速お客様の到来ってわけか。
俺が口角を微かに吊り上げ、タコ焼きピックを動かしていると、その少女は俺の目の前で止まる。
帽子のせいで顔は見えないが柔らかそうな長いピンク色の髪と隠しきれない巨大な胸と細い腰。
おそらく平民の中でもすごく上品な女子の部類に入る人だろう。
と、
うん?
この甘い香りと雰囲気……
まさか
「そ、そのタコあきというものを、お一つ、お願いしてもいいかしら?」
そう言って、その少女は頭を上げて俺を見つめる。
陶器のように綺麗な肌と美しい目鼻立ち。そして海より深い丸っこい青い瞳。
「ど、どうして?」
俺の前に現れたのは、平民っぽい服装をしたアリスだった。
「あなたにまた会いたかったから……」
乙女のように恥じらうアリスの瞳は揺れ動いているが、俺を必死に捉えようとしている。
戸惑っている俺は、なんてこちゃと口を半開きにして周りを見渡した。すると、カロルを護衛していたメイドたちが今度は平民の服装をして、遠いところから俺たちにキラキラとした視線を送りながら見守っていた。俺たちをまるで娘息子とでも思っているのか、とても温かくて優しくて切ない表情を向けているのだ。
「そ、そうか……でもここは危ない。アリスは公爵家の長女だろ?もっと安全な場所に……」
ん……今日は臨時休養にしといた方がいいかな。せっかく準備したのに……と、俺が苦笑いを浮かべていると、アリスが目をはたと見開いて返事をする。
「いいえ。ごしゅっ……ハルト様に迷惑をかけるわけにはいかないわ。だから……私は……」
言いあぐねるアリスに俺が固唾を飲んで続きを視線で促すと、彼女は何かを決心したのか、その美しい目を俺に向けて
「あなたを助ける!」
「た、助ける!?」
X X X
「おお!にいさんよ!ずっと待ってたぜ!あの時からこのタコ焼きの味が忘れられなくてよ!毎日やってくれればいいのに」
「お口に合って何よりです。今はテスト期間みたいなものでして、今のところは週に2~3回ほどになると思います」
「そっか……アツアツ!ん……王都に店を出したら大繁盛間違いなしだと思うよ。こんな美味しいところはあまり知られたくないんだけどね」
「そんなに評価してくれるなんて……本当にありがとうございます」
「代金は、この美しいねえさんに払えばいいよね?」
「はい。そうでございます」
人たちで溢れかえるこの屋台に先日出会った厳つい冒険者の二人がまたやってきてくれた。
顔付きこそ完全にヤクザだが、根はいい人のようだ。
「それにしても、にいさん、こんなに綺麗な奥さんがいたのか?やっぱりいい男にはいい女がやってくるもんだぜ!」
「お、奥さん!?」
奥さんという言葉を聞くや否や、俺の横でお金の管理をしてくれるアリスが飛びはねるようにびっくりする。そして二人の冒険者を睨め付けてきた。
「な、なんだ……この目は……尋常じゃない」
「にいさん……ちょっと怖い奥さんだね。尻に敷かれたりしないか?」
「あ、この子は俺の妻ではありません。知り合いです」
「そ、そうだったのか?」
「ずっとにいさんに熱い視線を向けたからきっと新婚だと思ったけど……」
「何か言いましたか?」
「な、なんでもないや!俺たちまたくるからよ!」
「じゃね!」
「は、はい……」
そう言って、タコ焼きを美味しく食べながら厳つい二人の男は去っていく。
俺を助けたいと言ったアリスと押し寄せてくる人たち。なので俺は流れで会計の仕事を彼女にお願いした。すると、彼女は目をキラキラさせて頷いてくれて今に至るわけである。俺の隣にいると彼女をいつでも守れる。と言う考えが9割ほどだった。
けれど、アリスは公爵家の長女だ。こんな小汚い屋台の仕事には向いてないはず。と思ったが、ぎこちなくはあるが頑張ってくれている。だが、男たちから代金を受け取った際に見せる表情には鬼気迫るものがあった。
そんなこんなでタコ焼きを作り、売り、また作りを繰り返していくと、用意した材料はそこを尽き、完売となった。
今日もものすごい反応だった。まさかこんなにあっという間に売り切れるとは……
俺は余韻に浸かるようにため息をついていると、アリスが小銭がいっぱい入っている箱を俺に見せる。
「5万6000メソよ」
「あ、ありがとう。お疲れ様」
「……」
俺が労いの言葉をかけてあげたが、アリスの表情は暗い。俺は気になり、口を開く。
「どうした?」
「私……あなたに迷惑をかけてしまったわ……男たちを睨んだり、あまりうまくできなかったの……だから、私はあなたの役に立てなかった……来るべきでは無かった。自分のことばかり考えて……ごめんなさい」
唇を噛み締めて頭を下げるアリス。
「よし!あとはお金を入れる箱をこっちに……」
汚れてもいい作業服を着た俺はいつもの場所に屋台を出し、タコ焼きを売るための準備に取り掛かる。
前回の経験を生かして幾つかの工夫をしてみた。まずは決済システム。
ここは日本みたいに券売機やなんちゃらペイが存在しないので、メソという貨幣による支払いしかできない。なので、小さな箱を置いたわけだが……
「治安のいい日本ならすりとかあまりないと思うんだが、ここはな……」
厳つい冒険者が屯したり謎の集団が貴族の屋敷を襲撃するなど、この国の治安はそんなによくなさそうだ。
改めて平和な日本がどれほどいい国だったのか思い知った瞬間である。
あと、他にもいろんな微調整を加えたので、前回と比べたら、効率良くタコ焼きが作れる気がした。
「始めようか」
そう呟いてから俺は熱くなったタコ焼き器に生地を流し込む。
すると、遠くから地味なドレスを身にまとい、ハット帽子を被った女の子がこちらにやってくる。
早速お客様の到来ってわけか。
俺が口角を微かに吊り上げ、タコ焼きピックを動かしていると、その少女は俺の目の前で止まる。
帽子のせいで顔は見えないが柔らかそうな長いピンク色の髪と隠しきれない巨大な胸と細い腰。
おそらく平民の中でもすごく上品な女子の部類に入る人だろう。
と、
うん?
この甘い香りと雰囲気……
まさか
「そ、そのタコあきというものを、お一つ、お願いしてもいいかしら?」
そう言って、その少女は頭を上げて俺を見つめる。
陶器のように綺麗な肌と美しい目鼻立ち。そして海より深い丸っこい青い瞳。
「ど、どうして?」
俺の前に現れたのは、平民っぽい服装をしたアリスだった。
「あなたにまた会いたかったから……」
乙女のように恥じらうアリスの瞳は揺れ動いているが、俺を必死に捉えようとしている。
戸惑っている俺は、なんてこちゃと口を半開きにして周りを見渡した。すると、カロルを護衛していたメイドたちが今度は平民の服装をして、遠いところから俺たちにキラキラとした視線を送りながら見守っていた。俺たちをまるで娘息子とでも思っているのか、とても温かくて優しくて切ない表情を向けているのだ。
「そ、そうか……でもここは危ない。アリスは公爵家の長女だろ?もっと安全な場所に……」
ん……今日は臨時休養にしといた方がいいかな。せっかく準備したのに……と、俺が苦笑いを浮かべていると、アリスが目をはたと見開いて返事をする。
「いいえ。ごしゅっ……ハルト様に迷惑をかけるわけにはいかないわ。だから……私は……」
言いあぐねるアリスに俺が固唾を飲んで続きを視線で促すと、彼女は何かを決心したのか、その美しい目を俺に向けて
「あなたを助ける!」
「た、助ける!?」
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「おお!にいさんよ!ずっと待ってたぜ!あの時からこのタコ焼きの味が忘れられなくてよ!毎日やってくれればいいのに」
「お口に合って何よりです。今はテスト期間みたいなものでして、今のところは週に2~3回ほどになると思います」
「そっか……アツアツ!ん……王都に店を出したら大繁盛間違いなしだと思うよ。こんな美味しいところはあまり知られたくないんだけどね」
「そんなに評価してくれるなんて……本当にありがとうございます」
「代金は、この美しいねえさんに払えばいいよね?」
「はい。そうでございます」
人たちで溢れかえるこの屋台に先日出会った厳つい冒険者の二人がまたやってきてくれた。
顔付きこそ完全にヤクザだが、根はいい人のようだ。
「それにしても、にいさん、こんなに綺麗な奥さんがいたのか?やっぱりいい男にはいい女がやってくるもんだぜ!」
「お、奥さん!?」
奥さんという言葉を聞くや否や、俺の横でお金の管理をしてくれるアリスが飛びはねるようにびっくりする。そして二人の冒険者を睨め付けてきた。
「な、なんだ……この目は……尋常じゃない」
「にいさん……ちょっと怖い奥さんだね。尻に敷かれたりしないか?」
「あ、この子は俺の妻ではありません。知り合いです」
「そ、そうだったのか?」
「ずっとにいさんに熱い視線を向けたからきっと新婚だと思ったけど……」
「何か言いましたか?」
「な、なんでもないや!俺たちまたくるからよ!」
「じゃね!」
「は、はい……」
そう言って、タコ焼きを美味しく食べながら厳つい二人の男は去っていく。
俺を助けたいと言ったアリスと押し寄せてくる人たち。なので俺は流れで会計の仕事を彼女にお願いした。すると、彼女は目をキラキラさせて頷いてくれて今に至るわけである。俺の隣にいると彼女をいつでも守れる。と言う考えが9割ほどだった。
けれど、アリスは公爵家の長女だ。こんな小汚い屋台の仕事には向いてないはず。と思ったが、ぎこちなくはあるが頑張ってくれている。だが、男たちから代金を受け取った際に見せる表情には鬼気迫るものがあった。
そんなこんなでタコ焼きを作り、売り、また作りを繰り返していくと、用意した材料はそこを尽き、完売となった。
今日もものすごい反応だった。まさかこんなにあっという間に売り切れるとは……
俺は余韻に浸かるようにため息をついていると、アリスが小銭がいっぱい入っている箱を俺に見せる。
「5万6000メソよ」
「あ、ありがとう。お疲れ様」
「……」
俺が労いの言葉をかけてあげたが、アリスの表情は暗い。俺は気になり、口を開く。
「どうした?」
「私……あなたに迷惑をかけてしまったわ……男たちを睨んだり、あまりうまくできなかったの……だから、私はあなたの役に立てなかった……来るべきでは無かった。自分のことばかり考えて……ごめんなさい」
唇を噛み締めて頭を下げるアリス。
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