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獲物は闇に飲み込まれる1
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俺の鼻を喜ばせる花で覆い尽くされた花畑の上で横になっているような感覚。俺の全身は柔らかさに包まれ、安らぎを感じている。そして見えてくるのは、お母さんとお父さん。天国で幸せに暮らしているのだろうか。
ふとそんなことを考えていると、目が覚めた。
「ん……」
「はら……ハルト様、目が覚めましたか?」
「ここは?」
「私の部屋です」
俺の脳を舐め回すような声が耳の中に遠慮なく入った。なので、目を擦ってみる。
すると、
目の前には巨大な二つの塊があった。それと同時に俺の頭と首の後ろから伝わる極上の心地よさ。
窓から差し込んでくる陽を頼りに目を動かしてみる。すると、ベージュ色の柔らかい生地に身を包んだアニエスさんに俺が膝枕されていることに気がついた。そしてここは俺が以前3人を助けた部屋で、今俺はベッドで横になっている。
「す、すみません。すぐ起き……」
「ハルト様、いいですよ」
「っ!」
「私はハルト様が心から安らぎと開放感を味わうことを願っていますから」
またアニエスさんの生々しい声が俺を刺激する。
「俺、ずっと寝ていたんですか?」
「はい。ハルト様は、私の屋敷でずっと眠っておりましたわよ」
「せっかくのパーティーが……」
「気にしなくてもいいんですよ。それよりハルト様」
「?」
「食事の際、私が話したこと、覚えておりますか?」
「権利……」
「はい。権利の話をしました。そして恩返しの件も……」
「そ、そうでしたね」
恩返し。この3人に悪意はない。ただ単に純粋な意味を孕んでいる言葉だ。なのに、俺は……
頭を悩ませていると、アニエスさんが座ったまま腰をかがめて顔を見せた。エメラルド色の瞳は優しく俺を捉えており、切ない表情。そして糸を引いている唇。
まるで宙に浮いているような心地よさを感じている俺にアニエスさんは話し始める。
「私の夫はとても優しくて、私とアリスとカロルのために尽くしてくれました。仕事にも熱心でしたが、私たちに何かあればすぐに駆けつけてくれて……」
夫の話か。確かにアニエスさんの夫は屋敷に侵入してきた謎の集団からこの美人母娘を守るために尊い命を……
「息子を産まない私を責めることもなく、ありのままの私を受け入れてくれました……」
「とてもいい旦那さんですね」
「はい……でも……私の愛する彼は……私たちを守るために……私たちを……守る……っ」
「……カロルから聞いております。あの話を聞いた時は、俺の胸も痛くなりました……」
アニエスさんは辛い過去のことを思い出したらしく、唇を噛み締めて、体をブルブルと振るわせる。
「とても悲しかったです。心の穴がぽっかり空いたような……けれど、夫の血をついでいる目に入れても痛くない私の娘たちは、私にとって希望でした。だから私は、女としての喜びを忘れ、娘たちだけを見て歩んできました。いつか、幸せな日がやってくると信じて……夫を失った悲しみに耐えながら……」
おそらく俺のお母さんも似たようなことを思ったのではないだろうか。
「アニエスさんは、とても辛い人生を送りましたね……」
「はい……でも、それはおそらく、ハルト様も一緒ですよね」
「っ!!!!」
体が跳ね上がった。だけど、全ての衝撃をアニエスさんの太ももが吸収してくれる。
「あなたの素顔を初めて見た瞬間から薄々気づいていました。私と同じく、心の闇を抱えている人だと……そしてあなたを抱きしめたとき確信しました。この人は、私と……私たちと同じ悲しみを抱えている人だと」
「……」
「だから、言ってほしいです。ハルト様の心の闇を……あなたの、歴史を」
そう言ってアニエスさんは俺の頭を優しくなでなでした。細い指からは気持ちを和らげる香りが漂っている気がする。
そして、俺の心の中にあるドス黒い何かが蠢いた。
だが、アニエスさんは女神のような慈愛深い表情で俺に微笑みをかける。不思議だ。どうして心がこんなにも落ち着くんだろう……この人の持つ全てが俺を癒そうとしているみたいた。
だとしたら、俺は……
「俺の父も軍人でした。とても優秀な人で、部下の方々はみんな父を尊敬して、上官の方々は勇気ある父の姿を褒め称えました」
「ハルト様を見ていると、なんだかその光景が目に浮かびますわね……」
「だけど、父は訓練中に、死んだ……」
「……」
「父の死をとても悲しむ母を守るために俺も軍人になりました。母に寂しい思いをさせたくなかったから……母を守りたかったから……だけど、結局、母もあの世に……」
「そんな……」
「それから色々あって、この国にやってきたわけです」
と言って俺は目を逸らした。
こんなこと、友達にも、親戚の人たちにも言ったことないのに、どうして……アニエスさんは異世界の人なのに……
唇を噛み締めて悔しがる俺。
だが、俺を見たアニエスさんは……
「今は、ハルト様を抱きしめてあげたい……私の温もりを分けてあげたい」
そう言って、俺の上半身を少し起こして、その巨大なマシュマロで俺を優しく包み込んでくれた。
ふとそんなことを考えていると、目が覚めた。
「ん……」
「はら……ハルト様、目が覚めましたか?」
「ここは?」
「私の部屋です」
俺の脳を舐め回すような声が耳の中に遠慮なく入った。なので、目を擦ってみる。
すると、
目の前には巨大な二つの塊があった。それと同時に俺の頭と首の後ろから伝わる極上の心地よさ。
窓から差し込んでくる陽を頼りに目を動かしてみる。すると、ベージュ色の柔らかい生地に身を包んだアニエスさんに俺が膝枕されていることに気がついた。そしてここは俺が以前3人を助けた部屋で、今俺はベッドで横になっている。
「す、すみません。すぐ起き……」
「ハルト様、いいですよ」
「っ!」
「私はハルト様が心から安らぎと開放感を味わうことを願っていますから」
またアニエスさんの生々しい声が俺を刺激する。
「俺、ずっと寝ていたんですか?」
「はい。ハルト様は、私の屋敷でずっと眠っておりましたわよ」
「せっかくのパーティーが……」
「気にしなくてもいいんですよ。それよりハルト様」
「?」
「食事の際、私が話したこと、覚えておりますか?」
「権利……」
「はい。権利の話をしました。そして恩返しの件も……」
「そ、そうでしたね」
恩返し。この3人に悪意はない。ただ単に純粋な意味を孕んでいる言葉だ。なのに、俺は……
頭を悩ませていると、アニエスさんが座ったまま腰をかがめて顔を見せた。エメラルド色の瞳は優しく俺を捉えており、切ない表情。そして糸を引いている唇。
まるで宙に浮いているような心地よさを感じている俺にアニエスさんは話し始める。
「私の夫はとても優しくて、私とアリスとカロルのために尽くしてくれました。仕事にも熱心でしたが、私たちに何かあればすぐに駆けつけてくれて……」
夫の話か。確かにアニエスさんの夫は屋敷に侵入してきた謎の集団からこの美人母娘を守るために尊い命を……
「息子を産まない私を責めることもなく、ありのままの私を受け入れてくれました……」
「とてもいい旦那さんですね」
「はい……でも……私の愛する彼は……私たちを守るために……私たちを……守る……っ」
「……カロルから聞いております。あの話を聞いた時は、俺の胸も痛くなりました……」
アニエスさんは辛い過去のことを思い出したらしく、唇を噛み締めて、体をブルブルと振るわせる。
「とても悲しかったです。心の穴がぽっかり空いたような……けれど、夫の血をついでいる目に入れても痛くない私の娘たちは、私にとって希望でした。だから私は、女としての喜びを忘れ、娘たちだけを見て歩んできました。いつか、幸せな日がやってくると信じて……夫を失った悲しみに耐えながら……」
おそらく俺のお母さんも似たようなことを思ったのではないだろうか。
「アニエスさんは、とても辛い人生を送りましたね……」
「はい……でも、それはおそらく、ハルト様も一緒ですよね」
「っ!!!!」
体が跳ね上がった。だけど、全ての衝撃をアニエスさんの太ももが吸収してくれる。
「あなたの素顔を初めて見た瞬間から薄々気づいていました。私と同じく、心の闇を抱えている人だと……そしてあなたを抱きしめたとき確信しました。この人は、私と……私たちと同じ悲しみを抱えている人だと」
「……」
「だから、言ってほしいです。ハルト様の心の闇を……あなたの、歴史を」
そう言ってアニエスさんは俺の頭を優しくなでなでした。細い指からは気持ちを和らげる香りが漂っている気がする。
そして、俺の心の中にあるドス黒い何かが蠢いた。
だが、アニエスさんは女神のような慈愛深い表情で俺に微笑みをかける。不思議だ。どうして心がこんなにも落ち着くんだろう……この人の持つ全てが俺を癒そうとしているみたいた。
だとしたら、俺は……
「俺の父も軍人でした。とても優秀な人で、部下の方々はみんな父を尊敬して、上官の方々は勇気ある父の姿を褒め称えました」
「ハルト様を見ていると、なんだかその光景が目に浮かびますわね……」
「だけど、父は訓練中に、死んだ……」
「……」
「父の死をとても悲しむ母を守るために俺も軍人になりました。母に寂しい思いをさせたくなかったから……母を守りたかったから……だけど、結局、母もあの世に……」
「そんな……」
「それから色々あって、この国にやってきたわけです」
と言って俺は目を逸らした。
こんなこと、友達にも、親戚の人たちにも言ったことないのに、どうして……アニエスさんは異世界の人なのに……
唇を噛み締めて悔しがる俺。
だが、俺を見たアニエスさんは……
「今は、ハルト様を抱きしめてあげたい……私の温もりを分けてあげたい」
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