時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた

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10.魔界の姫(1)

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疲れとお尻の痛みで木にもたれる。
出口らしきものが全く見つからない…。

「なぜ人間が入ってこれた?」

突然、人間の言葉をかけられたため背筋がピンとした。
声の方を向くと気の強そうな顔立ちの幼女が立っていた。
こんなところにも人間がいるのか…?それにしてもこんな小さい子が?装備も何もなしに?
彼女はゴシックな服を着ているだけで魔界にいるのはかなり不自然だと思うが…。

「すみません!穴に落ちてしまって…。」

もしこの子がなら…出口を知っているはず。
僕は愛想よく答えた。
しかし、なぜか笑顔の幼女からは殺気を感じる。

「偶然か。ならばよい。ゾーク。」
「はい、姫様。」

どこからともなく人?が湧いてきたよ!?それにって…どういうこと?
ゾークと呼ばれた人?(肌の色は落ち着いた緑っぽい)は祭司のような長い白いローブを着ており…うん、それにしてもどうやって現れた?

「この女を殺せ。」

え?

「かしこまりました。」
「この森の秘密を知ったからには生かして帰さん。」

僕は急展開の連続で腰が抜けてしまい動くことができない。
殺す?姫?秘密?何が何だか理解が追い付かない。
まさか今、かなりピンチなんでしょうか?
訳もわからないまま頼りない鞘を握る。スライムで手いっぱいだったのにこんな強者に勝てるはずがない。
かといって逃げることも、もはや不可能だ。

「どうした?私と戦うのか?」

幼女は袋のネズミ状態の僕を嘲笑し踵を返す。

「ゾーク、あとは任せた。」
「はい。」

そう言って部下は黒光りする鋭利な短刀を抜き僕の喉元に突き付けてくる。

「偶然が死を招くとはお前も災難だな。」

意味も分からず首を掻っ切られて死ぬのか?さすがに間抜けすぎるだろ。
剣の間合いじゃない…なら相手の手を…!

僕は即座に手首を掴み、部下を押し倒す。

「何っ?」

反撃を予想していなかったようで部下の体は仰け反る。
その隙に剣を抜き幼女に飛び掛かる。
自分でもびっくりするような運動神経の良さ。

「僕はまだ死ねない!!」

一本取ったと思った。
だが次の記憶のコマでは凄まじい音と背中の衝撃を感じ、気が付くと地面に倒れていたのだった。

「うっ……!」

もう立ち上がれない…。
吹き飛ばされたのか?何があったのか全然分からなかった。
と、部下の大きな手によって強い力で首を掴まれ持ち上げられる。
幼女は部下の後ろでケラケラ笑っている。人が死にそうなときに!

「初々しい者かと思えば度胸がなっているな。偶然というのは嘘か?」

息ができないのに加えて魔族特有の鋭い爪が首に食い込んで痛みが増す。

「俺も…意味、分かんないです…!偶々、落ちただけで…殺されるとか…。」
「おい女」

急に幼女の口調が冷たくなった。
それと同時に顔面から地面に叩きつけられたのだった。

「ぐへぁっ…」

馬車に踏みつぶされた蛙みたいな情けない声がでた。

「その手の紋を見せろ。」

抵抗する力もないためされるがままに手の甲を見せた。
紋ってなんのことだ…?
すると幼女は頬を痙攣させながら僕を押さえつけている部下に言う。

「ふん、面白い。ゾーク、この女は塵にしろ。腑が煮え繰り返るわ。」
「僕は、男…です。」

本日二度目の命の危機を感じています。
もう猫だましは通用しないだろうし…。

「また嘘をつくのか?」

幼女は細いヒールで僕の頭を踏みつけてくる。そういう趣味はないし、禿げるからやめてくれ。
そんな冗談言っている場合ではない。細断されるのだけは避けなくては…。

「似薬の解除…をすれば元に戻れる…。」
「容易い。」

幼女は泉の水を手コップで汲み、僕の口元に持ってくる。
素直に飲み干し少し経つと服がきつくなってきた。
部下は何の躊躇もなくズボンの中に手を突っ込む。人間の常識は通じないのだから仕方ない…よね?

「なっ!」
「姫様、こやつは…男です。」

そうです、僕は正真正銘の男性です。だから塵にするのは勘弁してください。

「何?」
「女似の男です。」
「早く言え。」

顔が女似というより、随分髪を切っていないので元に戻っても肩くらいまで長さがあるだけだ。
僕自身、顔がどんなのだったかなんて覚えていない。
しかしながら、幼女の殺気はなぜかマシになった気がする。
そして、くたばっている僕の顎を無理やりくいっとする。

「お前、魔女に会ったか?」
「あの、綺麗な…男の人、ですよね…?」
「いかにも。私は魔女のだ。」

追っかけ…?なんだそれ……魔女(男)はこんな凶暴な子に追いかけられているのか?大変すぎるだろ。

「私はあの方をお慕いしている。」

そんなに堂々と宣言されましても…。

「それが僕とどういう関係が…?」

するとまた嫌な顔をして僕の手の甲の紋をさする。
改めて見てみると、魔界に来る前はなかった蝶のような模様がくっきりと浮かび上がっている。

「その紋、魔女の加護だ。魔女は優しい男だ。お前のような貧弱者が生きていけるようにしてくれたのだ。」

魔女の加護…?また分からない言葉がでてきた…。
あの人は時間を戻すとだけ言っていたから、そんな大層な特典つけてくれているのを知らなかった。
つまりこの蝶が僕を守ってくれるってこと?いや、むしろこれのせいで今半殺しにされたんだが…。

「命拾いしたな。ゾーク、こいつを泉に連れて行け。治ったら地上に投げ飛ばしておけ。」
「はい、姫様。」

ん?って言った?
さすがに荒業…だが、生きて帰れるだけマシなのか…?
火炙りの次に細切れを無事回避し感覚が麻痺している僕がいる。
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