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第20章 是正基準
109 表計算の課題提出
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課題が出来ても提出しなければ、終了にはならない。
なので翌日の4月13日第6曜日、朝食を受け取った後、そのまま2階の相談室へ向かう。
第6曜日だし、今回もやっぱり……
そう思いつつ行ってみたら、やはりエノフ指導員だった。
「おはよう。今回は相談かい、提出かい?」
「今日は表計算の課題の提出に参りました」
「わかった。それでは座って、課題の解答と、解答に使用した表を出してくれ」
言われた通り収納から取り出して、解答を上に、あとは使用した順に並べて提出する。
「それじゃ確認するから、ちょっと待ってくれ」
そう言ってエノフ指導員は解答を左に、他の図表を右に置いて、図表の方をめくりながら見ていって……
そして、うなずいた。
「問題なし。全問正解だ。表計算を評価Aで履修終了したことを認めよう。しかし数学Ⅲを終わらせる前に、表計算を終わらせてしまうとは思わなかったな。一応やり方は書いてはあるけれどさ。かなり難しかっただろう。それとも先に終わらせた男子2人のように、既に向こうの世界でこういった方法を履修済みだったのかい?」
2人ということは、アキト以外にもう1人、私より先に表計算を終わらせた生徒がいるということか。
男子ということは、カタリナではないということだけれど。
というのはともかくとして、エノフ指導員の質問にはこう答えさせて貰う。
「一応理論だけは、前の世界で教わっています。ですが実際にこの数の情報を処理して結論を出すというのは、初めてです。ですので5単位時間目からは大変でした」
エノフ指導員は、苦笑に見える形へと表情を崩した。
「やっぱりそうか。この表計算という科目は、割と最近というか、10年くらい前に追加した科目だ。最初はせいぜい表形式にして、四則演算やら合計やら平均やら、せいぜい並び替えや簡単なグラフの描画くらいまでの内容だったのだけれどね。今の表計算でいうと3単位時間くらいの内容だ」
それって、かなり易しい気がする。
でも考えて見れば、日本の学校の授業で習った表計算は、その程度の内容だった。
「ただここ数年。各国からの要望で、内容が高度化した。データベース的な機能とか、仮説検定とかさ。この機関も移民を受け入れてくれる各国の要望は無視できない。それで表計算だけでなく、自然科学や地理歴史にⅤなんて科目が出来たり、数学のカリキュラムを変更してⅥまでにしたりなんて。
そもそも長期課程が出来たのだって、こうやって学習すべき内容が増えたからだしさ。十年くらい前までは、3ヶ月くらい向こうの世界で事前学習してくるか、今でいうところの短期課程が主流だった。こちらの社会の一部が急激に変化してさ。結果、そういった短期間での学習では、移民の質を確保することが難しくなったわけだ」
この施設も今の課程も、そうやって出来たという訳か。
でも日本でも、似たような話は聞いたことがある。
パソコンが普及する前は、会計やその他の事務なんかでは、表を手で書いて電卓で計算していたと。
だから某長寿アニメの仕事風景は、机の上が紙と筆記用具と電話だけで、書類作成は手書きと手計算。
ただそうやって電卓で計算する場合、当然ミスが多くなるから、何度も検算する必要があって、効率は現代の3分の1以下だったという話も。
つまり地球での変化が、遅れてこの世界にも波及したということなのだろう。
なら、こちらの方が地球より進んでいるという面はないのだろうか。
後で時間があったら、調べてみてもいいかもしれない。
「だから来年は、表計算はⅠとⅡにわけて、難しい内容はⅡに固めておこうと計画している。表計算魔法は3単位時間目までの簡単な内容でも、それなりに有用だから。
さて、それでは話は変わるけれど、第一施設で生徒是正化措置をやったという話を、チアキさんはもう耳にしているかい?」
エノフ指導員、いきなり予想外かつ内容違いの、とんでもないことを聞いてきた。
ただここは正直に答えておこう。
「ええ。第一施設から戻ってきた生徒から、友人経由で聞きました」
「なら質問だ。是正化措置のような魔法が使えるのなら、なぜ最初から、収容した生徒全員に対して行わないのだろうと考えたことはなかったかい? 考えたことがあるのなら、なぜそうしなかったのか、理由を考えなかったかい?」
ここは無難な意見で様子を見るべきだろう。
「手間と時間がかかるから、生徒全員に対して行うほどコストをかけられない。私はそう考えたのですけれど、どうでしょうか」
「間違ってはいないよ。確かにコストは判断材料のひとつだ。ただし理由の全てではない。他の最たる理由はさ、是正化措置の副作用のせいだ」
副作用については、知識魔法で調べて出ていることがある。
「書き換え方法次第では、後に自殺者が出るというものでしょうか」
「ということは、人格書き換えについてある程度は調べたということだね。でも残念ながら、その副作用は大した問題ではない。元の人格を抹消しなければならないような移民なんて、それほどの価値はない。まあナルニーアレあたりには高く売れるけれどさ。どんなにきつい条件でも、絶対的に従ってくれるし逃げないって。10%が自殺するといっても、それ以外が逃げなければ、普通の奴よりは残ってくれる。そういう意味で損はないから」
なので翌日の4月13日第6曜日、朝食を受け取った後、そのまま2階の相談室へ向かう。
第6曜日だし、今回もやっぱり……
そう思いつつ行ってみたら、やはりエノフ指導員だった。
「おはよう。今回は相談かい、提出かい?」
「今日は表計算の課題の提出に参りました」
「わかった。それでは座って、課題の解答と、解答に使用した表を出してくれ」
言われた通り収納から取り出して、解答を上に、あとは使用した順に並べて提出する。
「それじゃ確認するから、ちょっと待ってくれ」
そう言ってエノフ指導員は解答を左に、他の図表を右に置いて、図表の方をめくりながら見ていって……
そして、うなずいた。
「問題なし。全問正解だ。表計算を評価Aで履修終了したことを認めよう。しかし数学Ⅲを終わらせる前に、表計算を終わらせてしまうとは思わなかったな。一応やり方は書いてはあるけれどさ。かなり難しかっただろう。それとも先に終わらせた男子2人のように、既に向こうの世界でこういった方法を履修済みだったのかい?」
2人ということは、アキト以外にもう1人、私より先に表計算を終わらせた生徒がいるということか。
男子ということは、カタリナではないということだけれど。
というのはともかくとして、エノフ指導員の質問にはこう答えさせて貰う。
「一応理論だけは、前の世界で教わっています。ですが実際にこの数の情報を処理して結論を出すというのは、初めてです。ですので5単位時間目からは大変でした」
エノフ指導員は、苦笑に見える形へと表情を崩した。
「やっぱりそうか。この表計算という科目は、割と最近というか、10年くらい前に追加した科目だ。最初はせいぜい表形式にして、四則演算やら合計やら平均やら、せいぜい並び替えや簡単なグラフの描画くらいまでの内容だったのだけれどね。今の表計算でいうと3単位時間くらいの内容だ」
それって、かなり易しい気がする。
でも考えて見れば、日本の学校の授業で習った表計算は、その程度の内容だった。
「ただここ数年。各国からの要望で、内容が高度化した。データベース的な機能とか、仮説検定とかさ。この機関も移民を受け入れてくれる各国の要望は無視できない。それで表計算だけでなく、自然科学や地理歴史にⅤなんて科目が出来たり、数学のカリキュラムを変更してⅥまでにしたりなんて。
そもそも長期課程が出来たのだって、こうやって学習すべき内容が増えたからだしさ。十年くらい前までは、3ヶ月くらい向こうの世界で事前学習してくるか、今でいうところの短期課程が主流だった。こちらの社会の一部が急激に変化してさ。結果、そういった短期間での学習では、移民の質を確保することが難しくなったわけだ」
この施設も今の課程も、そうやって出来たという訳か。
でも日本でも、似たような話は聞いたことがある。
パソコンが普及する前は、会計やその他の事務なんかでは、表を手で書いて電卓で計算していたと。
だから某長寿アニメの仕事風景は、机の上が紙と筆記用具と電話だけで、書類作成は手書きと手計算。
ただそうやって電卓で計算する場合、当然ミスが多くなるから、何度も検算する必要があって、効率は現代の3分の1以下だったという話も。
つまり地球での変化が、遅れてこの世界にも波及したということなのだろう。
なら、こちらの方が地球より進んでいるという面はないのだろうか。
後で時間があったら、調べてみてもいいかもしれない。
「だから来年は、表計算はⅠとⅡにわけて、難しい内容はⅡに固めておこうと計画している。表計算魔法は3単位時間目までの簡単な内容でも、それなりに有用だから。
さて、それでは話は変わるけれど、第一施設で生徒是正化措置をやったという話を、チアキさんはもう耳にしているかい?」
エノフ指導員、いきなり予想外かつ内容違いの、とんでもないことを聞いてきた。
ただここは正直に答えておこう。
「ええ。第一施設から戻ってきた生徒から、友人経由で聞きました」
「なら質問だ。是正化措置のような魔法が使えるのなら、なぜ最初から、収容した生徒全員に対して行わないのだろうと考えたことはなかったかい? 考えたことがあるのなら、なぜそうしなかったのか、理由を考えなかったかい?」
ここは無難な意見で様子を見るべきだろう。
「手間と時間がかかるから、生徒全員に対して行うほどコストをかけられない。私はそう考えたのですけれど、どうでしょうか」
「間違ってはいないよ。確かにコストは判断材料のひとつだ。ただし理由の全てではない。他の最たる理由はさ、是正化措置の副作用のせいだ」
副作用については、知識魔法で調べて出ていることがある。
「書き換え方法次第では、後に自殺者が出るというものでしょうか」
「ということは、人格書き換えについてある程度は調べたということだね。でも残念ながら、その副作用は大した問題ではない。元の人格を抹消しなければならないような移民なんて、それほどの価値はない。まあナルニーアレあたりには高く売れるけれどさ。どんなにきつい条件でも、絶対的に従ってくれるし逃げないって。10%が自殺するといっても、それ以外が逃げなければ、普通の奴よりは残ってくれる。そういう意味で損はないから」
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