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第20章 是正基準
108 えげつない課題
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女子会の翌日である4月10日、14時過ぎ。
表計算が、結構辛い。
アキトが言っていたように、5単位時間目から内容が変化した。
組み合わせを示すベン図、オイラー図とか、その図で抽出条件を指定して、ペルリア全国民のデータから対象のデータを、知識魔法で取得するとか。
書いてあるとおりにやれば、例題や演習問題はクリア出来る。
それに一応は、高校時代に習った内容だ。
ただやっていることの意味と結果を、頭の中ですぐにイメージするのが難しい。
条件設定でこんがらがりそうになるし、少しでも条件付けをまちがったらとんでもない件数が出てくるし。
表計算の5単位時間目は、本来の所要時間が50分のところを、まるまる1時間かけて何とかクリア。
今までの科目や学習内容は、1単位時間の指定が50分であっても、実質は40分以下で終わらせていた。
確認試験や魔力測定なんてのがあると、その分余分に時間が必要になるけれど。
単に学習だけで50分を超えたのは、多分初めてだ。
そして翌日の4月11日に挑戦した表計算の6単位時間目は、もっと辛かった。
取得した数値情報の平均を出したり、出した平均とひとつひとつの数値情報の差を二乗したり……
5単位時間目でやった情報の習得方法は、もう当然のものとして使った上でだ。
一応は分散も標準偏差も、日本時代に習ってはいるから、出来ないことはない。
ただ実際のデータを、最低でも千件単位で扱って処理するのには、やはり感覚がついていかないのだ。
ただ今週の第6曜日までに表計算を終わらせることが出来れば、奨学金が200C増える。
これから毎週かかる予定の、演劇分を気にしなくて済む。
だから出来るだけさっさと取っておきたい。
だから4月12日第5曜日の午後も、やっぱり表計算の7単位時間目に挑戦して、仮説検定の初歩といいつつ十分難しい計算をやって。
夕食を食べてからダンスまでの間に、8単位時間目の課題をやる。
ちなみに今回の課題は、なかなか嫌らしいというか……
具体的には……
『ペルリア所在の移住準備施設で長期課程の生徒がいるのは、トリエノク、クレイト、レパルト、ポアノンの4箇所です。これらの施設はそれぞれ同じカリキュラムで生徒の移民準備を支援しています。教材も、毎月の一斉試験の内容も同じです。
それを踏まえた上で、表計算を使用し、次の設問に答えて下さい。なお表計算に使用した紙は、全てとっておいて、課題の回答とともに提出してください。
1.最も最近に受けた一斉試験の合計点数について、以下の質問に答えて下さい。
① 各科目及び全科目合計について、受験した総人数と、あなたの順位を求めなさい。
② あなたのいる施設の、貴方の取っている課程について、各科目の平均点と標準偏差を出して下さい……』
こんな感じで、
1.自分及び自分のいる施設、及び課程が、移住準備施設全体からみてどのくらいの位置にあるかを求める
2.昨年卒業して各国特Aコース、及びAコースに進んだ卒業生の9月の一斉試験の点数を取得し、国別、コースごとに平均点、標準偏差、度数分布のグラフを作成する。
3.2で取得したデータを使用し、ヒラリアAコース、ペルリアAコース、ナルニーアレAコースに進んだ集団について、9月の一斉試験の点数に有意差があるかどうかを調べる
という内容だ。
ひょっとして、そう思って知識魔法で確認してみる。
『本移住支援施設のうち、ペルリア所在で、長期課程がある施設は4市8箇所にあり、定員は2,000名です。ただし現時点での生徒数は合計で1,690名、ポアノンの第一施設で343名、ポアノンの第二施設で68名となっています』
今までこういった情報は、知識魔法でも知る事が出来なかった。
おそらくは表計算のこの課題をやる段階で、情報を見る許可なり権限なりが加わったのだろう。
そして知識魔法で情報を取る事が出来て、7単位時間までの内容が理解出来ていれば、この課題はそう難しくない。
しかしこれは『自分が目指している進路にふさわしい成績を取っているか』を気付かせるなんて内容だ。
かなり恣意的というか、何というか……
ただ、確かにこの方法を使えば、自分の順位がわかる。
有用なのは間違いない。
だからとりあえず、はじめるとしよう。
まずは表計算に読み込ませる情報の設定から……
◇◇◇
課題を片付ける途中、ふと思いついておまけの表を5人分作成し、紙に魔法で転写。
そして18時50分過ぎ、ダンスの為に室内運動場に移動。
現場でまずはニナとフインに、おまけの表を渡す。
「この前の試験の、ポアノンの施設内及びペルリア全国での順位一覧表。表計算の課題の副産物だし、必要かどうかわからないけれど」
点数ごとに、ポアノンの第一施設、第二施設あわせた中での順位と、ペルリア全国の施設における順位が書かれた表だ。
試験の結果を見たとき、順位が知りたいと感じたことを思い出して作ってみたのだけれど、どういう反応だろう。
「これがあれば、自分がどのくらいの位置にいるかわかりますね」
フインはそんな反応。
「確かに参考になります。ただある程度上位は、まだまだバラけていない感じです。もう少し学習が進めば、もっと差が出てくると思います」
ニナの言うとおり、最上位近くは生徒が団子状態だ。
9割以上の点数を取った生徒は、ポアノンの施設だけでも411人中33人。
全国の施設をあわせると、1,690人中201人
このあたりの生徒は、試験の範囲内はほぼ全部理解していて、ケアレスミスによる失点だけなのだろう。
ただやっぱりニナの言うとおり、この先はもっとバラけていくはずだ。
私は念の為に複写しておいた課題の表と白紙を出して、ささっと複写魔法で表を複写して2人に渡す。
「参考までに、これが昨年の生徒の、9月の一斉到達度試験の成績の度数分布表。私達も9月になれば、このくらいバラけると思う」
こちらの表では合計で9割以上の生徒は、ポアノンの施設では417人中13人、全国の施設では1,732人中52人。
「学習内容が増えて、そこまで完全に出来る人が減ったということですね」
「だと思う」
そのとおりだろうと私も思う。
つまりこの後の学習で、それだけの差が出るのだろうと。
「ところで、これはどうやって手に入れたのですか?」
このフインの質問は、素直に答えていいだろう。
「特別科目の表計算をある程度進めれば、出来るようになるよ。表計算の最後の課題が、知識魔法と表計算を使用して、去年や今年の一斉到達度試験の成績を分析するという内容だし。この表はその時に出したデータを少し変形しただけ」
「一斉到達度試験で順位が出ないのは、自分でこうやって出せという意味なのかもしれませんね」
ニナの言うとおりだろう。
私もそう思ったし。
「多分そうだよね」
「この表は他にも誰かに渡すつもりですか?」
そのとおりなので、ニナの言葉にうなずく。
「この前の女子会のメンバーには渡そうと思って。課題を進めれば出る内容だから、とくに秘密というわけでもないし」
カタリナとヒナリは前でダンスをやっているから、終わった時に渡せる。
ケイトにはヒナリから渡してもらえばいいだろう。
表計算が、結構辛い。
アキトが言っていたように、5単位時間目から内容が変化した。
組み合わせを示すベン図、オイラー図とか、その図で抽出条件を指定して、ペルリア全国民のデータから対象のデータを、知識魔法で取得するとか。
書いてあるとおりにやれば、例題や演習問題はクリア出来る。
それに一応は、高校時代に習った内容だ。
ただやっていることの意味と結果を、頭の中ですぐにイメージするのが難しい。
条件設定でこんがらがりそうになるし、少しでも条件付けをまちがったらとんでもない件数が出てくるし。
表計算の5単位時間目は、本来の所要時間が50分のところを、まるまる1時間かけて何とかクリア。
今までの科目や学習内容は、1単位時間の指定が50分であっても、実質は40分以下で終わらせていた。
確認試験や魔力測定なんてのがあると、その分余分に時間が必要になるけれど。
単に学習だけで50分を超えたのは、多分初めてだ。
そして翌日の4月11日に挑戦した表計算の6単位時間目は、もっと辛かった。
取得した数値情報の平均を出したり、出した平均とひとつひとつの数値情報の差を二乗したり……
5単位時間目でやった情報の習得方法は、もう当然のものとして使った上でだ。
一応は分散も標準偏差も、日本時代に習ってはいるから、出来ないことはない。
ただ実際のデータを、最低でも千件単位で扱って処理するのには、やはり感覚がついていかないのだ。
ただ今週の第6曜日までに表計算を終わらせることが出来れば、奨学金が200C増える。
これから毎週かかる予定の、演劇分を気にしなくて済む。
だから出来るだけさっさと取っておきたい。
だから4月12日第5曜日の午後も、やっぱり表計算の7単位時間目に挑戦して、仮説検定の初歩といいつつ十分難しい計算をやって。
夕食を食べてからダンスまでの間に、8単位時間目の課題をやる。
ちなみに今回の課題は、なかなか嫌らしいというか……
具体的には……
『ペルリア所在の移住準備施設で長期課程の生徒がいるのは、トリエノク、クレイト、レパルト、ポアノンの4箇所です。これらの施設はそれぞれ同じカリキュラムで生徒の移民準備を支援しています。教材も、毎月の一斉試験の内容も同じです。
それを踏まえた上で、表計算を使用し、次の設問に答えて下さい。なお表計算に使用した紙は、全てとっておいて、課題の回答とともに提出してください。
1.最も最近に受けた一斉試験の合計点数について、以下の質問に答えて下さい。
① 各科目及び全科目合計について、受験した総人数と、あなたの順位を求めなさい。
② あなたのいる施設の、貴方の取っている課程について、各科目の平均点と標準偏差を出して下さい……』
こんな感じで、
1.自分及び自分のいる施設、及び課程が、移住準備施設全体からみてどのくらいの位置にあるかを求める
2.昨年卒業して各国特Aコース、及びAコースに進んだ卒業生の9月の一斉試験の点数を取得し、国別、コースごとに平均点、標準偏差、度数分布のグラフを作成する。
3.2で取得したデータを使用し、ヒラリアAコース、ペルリアAコース、ナルニーアレAコースに進んだ集団について、9月の一斉試験の点数に有意差があるかどうかを調べる
という内容だ。
ひょっとして、そう思って知識魔法で確認してみる。
『本移住支援施設のうち、ペルリア所在で、長期課程がある施設は4市8箇所にあり、定員は2,000名です。ただし現時点での生徒数は合計で1,690名、ポアノンの第一施設で343名、ポアノンの第二施設で68名となっています』
今までこういった情報は、知識魔法でも知る事が出来なかった。
おそらくは表計算のこの課題をやる段階で、情報を見る許可なり権限なりが加わったのだろう。
そして知識魔法で情報を取る事が出来て、7単位時間までの内容が理解出来ていれば、この課題はそう難しくない。
しかしこれは『自分が目指している進路にふさわしい成績を取っているか』を気付かせるなんて内容だ。
かなり恣意的というか、何というか……
ただ、確かにこの方法を使えば、自分の順位がわかる。
有用なのは間違いない。
だからとりあえず、はじめるとしよう。
まずは表計算に読み込ませる情報の設定から……
◇◇◇
課題を片付ける途中、ふと思いついておまけの表を5人分作成し、紙に魔法で転写。
そして18時50分過ぎ、ダンスの為に室内運動場に移動。
現場でまずはニナとフインに、おまけの表を渡す。
「この前の試験の、ポアノンの施設内及びペルリア全国での順位一覧表。表計算の課題の副産物だし、必要かどうかわからないけれど」
点数ごとに、ポアノンの第一施設、第二施設あわせた中での順位と、ペルリア全国の施設における順位が書かれた表だ。
試験の結果を見たとき、順位が知りたいと感じたことを思い出して作ってみたのだけれど、どういう反応だろう。
「これがあれば、自分がどのくらいの位置にいるかわかりますね」
フインはそんな反応。
「確かに参考になります。ただある程度上位は、まだまだバラけていない感じです。もう少し学習が進めば、もっと差が出てくると思います」
ニナの言うとおり、最上位近くは生徒が団子状態だ。
9割以上の点数を取った生徒は、ポアノンの施設だけでも411人中33人。
全国の施設をあわせると、1,690人中201人
このあたりの生徒は、試験の範囲内はほぼ全部理解していて、ケアレスミスによる失点だけなのだろう。
ただやっぱりニナの言うとおり、この先はもっとバラけていくはずだ。
私は念の為に複写しておいた課題の表と白紙を出して、ささっと複写魔法で表を複写して2人に渡す。
「参考までに、これが昨年の生徒の、9月の一斉到達度試験の成績の度数分布表。私達も9月になれば、このくらいバラけると思う」
こちらの表では合計で9割以上の生徒は、ポアノンの施設では417人中13人、全国の施設では1,732人中52人。
「学習内容が増えて、そこまで完全に出来る人が減ったということですね」
「だと思う」
そのとおりだろうと私も思う。
つまりこの後の学習で、それだけの差が出るのだろうと。
「ところで、これはどうやって手に入れたのですか?」
このフインの質問は、素直に答えていいだろう。
「特別科目の表計算をある程度進めれば、出来るようになるよ。表計算の最後の課題が、知識魔法と表計算を使用して、去年や今年の一斉到達度試験の成績を分析するという内容だし。この表はその時に出したデータを少し変形しただけ」
「一斉到達度試験で順位が出ないのは、自分でこうやって出せという意味なのかもしれませんね」
ニナの言うとおりだろう。
私もそう思ったし。
「多分そうだよね」
「この表は他にも誰かに渡すつもりですか?」
そのとおりなので、ニナの言葉にうなずく。
「この前の女子会のメンバーには渡そうと思って。課題を進めれば出る内容だから、とくに秘密というわけでもないし」
カタリナとヒナリは前でダンスをやっているから、終わった時に渡せる。
ケイトにはヒナリから渡してもらえばいいだろう。
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