月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~

於田縫紀

文字の大きさ
119 / 125
第22章 外出予定が続く週

119 冷静になって気付くことと、そう驚きはない通知と

しおりを挟む
 何というか、セール会場というのは客に買わせてしまう魔力があるような気がする。
 もちろんそんな魔力なり魔法なりが本当に使用されていたら、間違いなく違法だ。

『そのような魔法の作成は理論上可能です。しかし行使すれば捜査当局が知識魔法で確実に把握し、取り締まりを実施します』

 知識魔法もこう言っているし。

 何が言いたいのかと言うと、私を含めて6人とも水着を買ってしまったということだ。
 私はどちらかというと、今日は様子見のつもりだったのに。

 私以外の皆さんが買ったのは、
 ○ ニナが見ていたのと同じ、黒のバンドゥビキニ
 ○ カタリナが上が肩紐も背紐も太めで、下はそこそこしっかりした上下幅のある短パン形というセパレート形で、色は白に水色のライン入り。
 ○ フインが濃いピンク色のフレア付きビキニで、よく見ると何気に露出多め。
 ○ ヒナリは水色に小さい花柄が入ったビキニで、ショーツはフレア入り、布地大きめの可愛い系
 ○ ケイトは白色フレアビキニで、フインのものより更にカバー面積が少なく、ニナとほぼ互角の露出多め。
といった感じだ。
 
 そして今。
 寮に帰って、念の為買った水着に着替えてみて、冷静になって鏡で見てみたら……
 この水着、かなり露出が多めな気がする。

 どんな水着かを説明する前に、言い訳をさせて欲しい。
 これでも色々見て、何なら知識魔法で私が着用した場合の想定画像なんてのも作って、確かめてみたのだ。

 レースっぽい装飾がついた赤い水着は、なかなか可愛いとは思った。
 でも私が着ると、大人の下着を着た子供にしか見えなくなる。

 フレア付きも可愛い柄も、着る人が可愛げない系女子だと似合わない。
 ヒナリだと可愛い系女子という感じで似合うのに。

 ヒナリが迷っている横で何着も想定画像を作って、私は再確認したのだ。
 私には、無地でシンプルなのしか似合わないことを。

 さらに言うと、華やかな色も似合わない。
 そして胸部分、特にカップ部が大きめだと貧乳が目立つ。
 そしてワンピース型は、少なくともここでは一般的ではない。
 
 ということで結論というか、購入したのは上はフィットネス用水着を胸の下でばっさり切ったような、肩紐も背中への紐もしっかりあるタイプ。
 しかし今見ると割と上側に短くて、ニナのバンドゥビキニとそう大差ない露出という気がする。

 下は短パンタイプ。だけれどこれも冷静になって見てみると、かなり短めな気がする。
 少なくともカタリナが買ったものよりずっと、上下方向が短い。
 というか下手に腰上部まで引っ張らない分、露出部分が多めな気が……

 一応アンダーがあるので、短パン形でも隙間からまずい部分が見えるということはない。
 しかしアンダーショーツの形はハイレグより数段危険というか、布面積少なめ。
 アンダーだけでなく上をはいてみても、腰だのお腹だの丸出しスタイル。

 なお色は黒だ。
 あれこれあわせたけれど、私には白か黒が似合うというか、他が似合わないというか……
 一応上に羽織るパーカー風のラッシュガードも買ってはいる。
 こっちは白というか生成りっぽい色で、ヒナリの評価はこんな感じだ。

「下の水着が黒で、ちょうどあっている感じです」

 アキトと会うときは、ラッシュガードを着て、前をしっかり閉じておこう。
 というか泳ぐとき以外は、ラッシュガードを極力着る方針で。
 まだ1ヶ月近く先のことだけれど、そう思ってしまった。
 
 とりあえず合計1,800Cカルクフで、水浴場用の服ひととおりは購入してしまった。
 そして明日もお出かけ。
 アキトと演劇鑑賞だ。
 ならそのロス時間分、学習を進めないと。
 
 私は水着を脱いで、様式1の服に着替える。
 いつものノルマ、学習開始だ。

 ◇◇◇

 言語と魔法をやって昼食を食べたところで、通知が来た。
 たまごサンドを頬張りながら、タブレットの画面をタップして確認してみる。

『学習に使用する言語の切り替えについて』

 いよいよ来たか。
 そう思いつつ、本文を確認。

『あと10日で、本施設に来て3ヶ月経過となります。長期課程(Ⅲ)のほとんどのクラスでも、今月末までには言語Ⅱを終え、言語Ⅲに入る予定です。
 ですので5月から6月末にかけて、タブレット、及び相談における母国語サポートを順次廃止し、オーフ標準語および惑星オーフ上の各種方言のみの表示に切り替えます』

 この通知は、そろそろ来ると思っていた。
 前にアキトとも話したような記憶がある。
 なので続きをささっと読んでみる。

『具体的には、次のような日程で、標準語に切り替えます。
1 タブレット表示について
 ① メニュー表示
   5月1日から標準語に任意で切り替え可能
   (5月末日までは、任意で母国語表示に戻すことも可能)
   6月1日から、オーフ標準語のみで表示 
 ② 各科目の学習
   5月1日から標準語に任意切り替え可能
   (6月末日までは、任意で母国語表示に戻すことも可能)
   7月1日から、オーフ標準語のみで表示・対応
 ③ お知らせ、規約表示、その他検索機能
   5月1日から標準語に任意切り替え可能
   (5月末日までは、任意で母国語表示に戻すことも可能)
   6月1日から、オーフ標準語でのみ表示
2 授業について
 ① 長期課程(Ⅰ)
   現状通り(特別科目、一斉テスト集合時ともに標準語化済)
 ② 長期課程(Ⅱ)・長期課程(Ⅲ)
   授業中に展開されている範囲内同時翻訳魔法を、各クラスの言語科目の進度にあわせて解除
  ⅰ 長期課程(Ⅱ)1~2組、長期課程(Ⅲ)1組
   ・ 5月1日から同時翻訳を選択解除可能
   ・ 5月15日から同時翻訳を完全解除
  ⅱ 長期課程(Ⅱ)3組~4組、長期課程(Ⅲ)2組
   ・ 5月1日から同時翻訳を選択解除可能
   ・ 6月1日から同時翻訳を完全解除
  ⅲ 長期課程(Ⅱ)5組、長期課程(Ⅲ)3組~5組
   ・ 5月1日から授業の一部で、試行的に同時翻訳を解除
   ・ 6月15日から同時翻訳を完全解除
3 相談業務(課題の提出を含む)
  6月末まで母国語での相談可。7月1日からオーフ標準語でのみ対応
4 参考事項
  各人の知識魔法による翻訳は、本施設卒業後も使用可能です。ですので本施設でも使用期限はありません』
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します

枯井戸
ファンタジー
 ──大勇者時代。  誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。  そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。  名はユウト。  人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。  そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。 「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」  そう言った男の名は〝ユウキ〟  この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。 「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。  しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。 「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」  ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。  ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。  ──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。    この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない

miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。 断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。 家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。 いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。 「僕の心は君だけの物だ」 あれ? どうしてこうなった!? ※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。 ※ご都合主義の展開があるかもです。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒
ファンタジー
不運な事故により、23歳で亡くなってしまった会社員の八笠 美明。 目覚めると見知らぬ人達が美明を取り囲んでいて… (まさか……転生…?!) 魔法や剣が存在する異世界へと転生してしまっていた美明。 魔法が使える事にわくわくしながらも、王女としての義務もあり── 王女として生まれ変わった美明―リアラ・フィールアが、前世の知識を活かして活躍する『転生ファンタジー』──

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...