月が出ない空の下で ~異世界移住準備施設・寮暮らし~

於田縫紀

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第23章 試験そのものは特に何もないけれど……

125 試験後の相談内容

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 試験当日は、特に書き残すようなことはない。
 なお今回は、第一教室が40人、第二教室が28人。
 私の知り合いは、ニナだけが第二教室で、カタリナ、フイン、ケイト、ヒナリ、アキトは第一教室。

 あと知り合いと言いたくはないが、エトも第一教室だった。
 ただ今のエトは昔と違って、かなり無害。
 話しかけてこないので、無視して問題はない。

 そしてニナについては、ケイトの言うとおりだろうと思う。

「ニナはまあ、気にしないでいいんじゃね。計画通りに学習しているだけだし」

 本人に焦っている様子はなく、きっとその通りなのだろう。
 そして試験終了後に移動したのは、男子2人と女子1人の計3人で、いずれも私の知らない人たち。

 その後は夕食、そして試験実施日でも第5曜日なので、ダンスが実施される。
 そのダンスの前に、ニナから連絡が回ってきた。

「明日の朝、今月の行事について少し話したいと思いますけれど、チアキは時間大丈夫でしょうか?」

 今月の予定というと、水浴場開きだろうか。
 あれは14日だからまだ先だが。
 それとも試験後というと、前回もやった例の女子会だろうか。

「予定はないから大丈夫だけど、また女子会をやる?」

「今月は水浴場開きがあるから、女子会はいいかなって思っていますけれど、それも含めて話し合おうかなと思っています」

 なるほど。
 なお来週の第二曜日の午前中は、例の行事がある。
 しかしこれは他とかち合わないだろうから問題はない、多分。

「わかった。朝食を朝一でくればいいんだよね」

「ええ」

 そこで前のダンスの組が終わったので、私たちはそちらへ向かった。

 ◇◇◇

 第6曜日、朝一番の朝食と昼食配給は、けっこう混んでいた。
 ぺルリアでは、第六曜日は全般的に休日。
 あちこちでイベントがあったり、それに伴う露店が出ていたりするらしい。

 だからだろうか。
 私は騒がしいのが嫌いなので、逆に第六曜日は外出しないようにしている。

 テーブルもそこそこ混んでいて、普段は朝一でも半分程度しか使われていないが、この日は8割方埋まっている。
 それでも何とか6人でまとまって席を取り──

「さて、試験は皆さんどうでした。少しずつ難しくなってきていると思いますけれど」

 私個人としては、特に難しくなったとは感じなかった。
 数学は一次方程式までだし、地理歴史や自然科学は範囲が広がったものの、学習時にきちんと覚えておけば問題はない。
魔法はまだ余裕。
 しいて言えば、言語が本格的な長文読解が出始めた程度。
 とはいえ悩むほどではなく、日本なら小学校4~5年生程度だと思う。

 もちろんそんなことは言わない。
 日本時代にやらかした結果、少しは用心深くなったのだ。

「今回は前回よりセーフです。確認試験の基準が上がったりしませんでしたから」

「ヒナリはまだ甘いんだけど~。でも点数上がったし、まぁ今回は頑張ったんじゃない~?」

「ケイトはまあ、論外ですから。今回も5問でしたっけ、間違ったのは」

「知識魔法あるから、暗記しなくて済むの楽すぎ~。でも油断して計算ミスとかスペル間違いとかやっちゃうのよね~。でもヒナリ以外みんなそんなもんじゃん~?」

 ケイトの言っていることはよくわかる。
 ここは知識魔法があるので、単なる暗記は必要ない。

「わかる。スペルミスと計算ミスは鬼門」

 カタリナがうなずいた。行動パターンはケイトとかなり違うが、試験に関しては同意見のようだ。
 ならここは少し偽善者として、それとなく聞いてみる。

「でも、知識とか計算だけでは解けない問題も半分くらいあるよね。そういう問題って、皆どうしているの?」

「似たような例題は学習してるはずだから、流用すればそんなに難しくないっしょ~。言語の読解だけは、授業より気に入った本読みまくる方が実力付くけど~。でもチアキはどうせ、思考問題よりケアレスミスに悩むタイプじゃん?  参考に今回、何問間違えた~?」

 ケイトは容赦ない。
 しかし仕方がないので正直に答える。

「今回も2問。スペルミスが1問と、計算ミスが1問」

 フインが、ふうっとため息をついた。

「これですから」

「わかってくれるのは、フインだけみたいです」

 なぜかフインとヒナリがしっかり握手したところで──

「それでは本題です。今月は14日に水浴場開場イベントがあります。なので毎月恒例の女子会をやるかどうか、そして水浴場開場イベントまでにどう準備するかです」

 どう準備するのだろう?
 水着も夏服も買ったし、他に必要なものがあるのだろうか。

「準備するって、何をですか?」

「4月19日、第一施設の女子と第二施設の男子とで、合コンがあったみたいです」

 あっ。
 そういえばアキトにそんな話を聞いた記憶がある。
 ダンスの衝撃と一斉試験で忘れていたが。

「そうなんですか」

「誰と? 結果は?」

 フインとヒナリが身を乗り出した。

「残念ながら、誰とどうなったとかは聞いていません。ただ義務教育学校9年の夏は一度きりなんです。厳密には私たちは義務教育学生ではないですけれど、後悔のないようにした方がいいと思います」

 何かニナ、やけにキャラに合わないことを言っている気がする。
 でもそういえば水着を選んでいた時も、似たようなことを言っていたような……

『この言葉でしょうか。「地味なのばかり選んでいると、後悔というか、あの時思い切っておけばよかったと思うことがあるんです。思い切ったものって、時期を逃すと二度と着られなくなりますから。せっかく若返ったんだから、今度は少し思い切ってみようと思って」』

 知識魔法、まさに私が思っていた言葉を拾ってきた。
 なかなか便利でよろしい。
 それにしてもニナ、失われた青春への後悔とか、そんな思いがあるのだろうか。
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感想 7

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みんなの感想(7件)

まりっか
2025.10.08 まりっか
ネタバレ含む
2025.10.08 於田縫紀

>あの科目やっとけば今頃楽チンだったかも
 確かにそういうのはあるかもしれません。私の場合は高校は普通科ではなく理数科だったので科目選択の幅はあまり無かったし、大学時代は割と単位がぎりぎりでそんな余裕が無かったですけれど……

>あと最近Excelは
 多機能にはなりましたけれど、微妙に融通がきかないというか、思い通りにならないことが多いんですよね。そうやって取り込んだデータを正しい形に整形するのが、結構面倒というか、腕の見せ所というか……
 フリーになってからは新しいExcelを買わなくなりましたけれど。何せお高いので。なのでマクロ等以外はフリーのLibreOfficeやGoogleスプレッドシートで何とか誤魔化しています。会計帳簿も……

 お読み&コメントいただき、本当にありがとうございました。

解除
まりっか
2025.07.08 まりっか

楽しみにしている続きが前の49話と同じでした〜
ご確認頂けるといいなぁ
このコメントは公開いただかなくてもよいです

2025.07.08 於田縫紀

ごめんなさい。ということで、正しい話を公開します。
あと、本来の29話が抜けていたので、作業終了後すぐに順番を入れ替えて公開する予定です。
報告ありがとうございました。

解除
まりっか
2025.07.05 まりっか

あぁ
バイキングや食べ放題のための魔法
なんてステキなんでしょう

2025.07.05 於田縫紀

 見た目にも倫理的にも酷い魔法ですが、確かに便利ですし、欲しくなる気持ちもわかるます。
 実際私tも、たまにこういった魔法の必要性を感じるときがありまして……いい年齢して未だにこういう魔法の必要性を感じる様なことをするのもどうかとは思うのですけれどね。最近ですと南町田のグランベリーモールに入っているKFCレストランなるところで……
 お読み&コメントいただき、本当にありがとうございました。

解除

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