月が出ない空の下で ～異世界移住準備施設・寮暮らし～

第８章 選択肢

52 学習出来る科目

　夕食を食べて自室に戻った後。
　私は学習を進めるのを今日は諦め、掲示板に載っていた情報を確認することにした。
　ニナに聞いた件の方が重要だという気がしたから、仕方ない。

　まずは『一斉到達度試験実施時に行う希望学習課程の調査と各課程の内容について』を見てみよう。
　掲示板に入って、リンクをタップ。

　ふむふむ、今度３月２日に行われる一斉到達度試験の際、今後自分が希望する学習課程について調査をする様だ。
　一斉到達度試験は言語、魔法、数学、地理歴史、自然科学の５科目で、魔法以外は50分、魔法は30分。
　更にその後、学習課程についての説明と希望調査を実施すると。

　この学習課程は施設について調べた時と同じものらしい。
　ただし選べるのは長期課程だけで、短期課程は選べない。
　そして更にこの先、それぞれの課程についてのより詳しい説明が記載されている様だ。
　という事で、まずは長期課程（Ⅰ）から確認してみる。　

『長期課程（Ⅰ）は自主的な学習と１ヶ月に一度の一斉到達度試験が中心です。実施場所は第二施設で、現在第一施設にいる生徒は第二施設へ移動することとなります。
　ただし学習進捗状況と毎月の一斉到達度試験の成績により、長期課程（Ⅱ）または長期課程（Ⅲ）に移動することがあります。概ね週に12単位時間以上の学習が必要不可欠です』

　週に12単位時間コマの学習が必要か。
　なら１日わずか２単位時間コマ。
　これくらいなら余裕だ。

　私は特別科目がない日は、１日６単位時間コマ以上は確実に進めている。
　ニナも１日５単位時間コマ以上は進めている筈だ。
　だから今のところは、特に問題はない。　
　なお説明は、更に続いている。

『長期課程（Ⅰ）で履修可能な学習課目のうち、必須科目は以下の通りです。
　○　言語（ⅠからⅧまで。Ⅳまでが必須。各１単位）　
　○　魔法（ⅠからⅧまで。Ⅳまでが必須。各１単位）
　○　数学（ⅠからⅥまで。Ⅲまでが必須。各１単位）
　○　自然科学（ⅠからⅤまで。Ⅲまでが必須。各１単位）
　○　地理歴史（ⅠからⅤまで。Ⅲまでが必須。各１単位）
　○　運動（ⅠからⅢまで。必須。各１単位）』

　必須と受けられる数に随分差がある。
　受けられる数全部受けるとすると、これだけで全部で35単位ある。
　35単位でそれぞれ24単位時間なら、合計で……

『840単位時間となります。２月から９月までの日数237日で割ると、１日あたり3.54時間程です』

　１日に２単位時間なんて甘い話は消えた。
　週に１日休むとすると、これだけで１日４単位時間では足りない。
　しかし必須とそれ以上、たとえば言語Ⅶと言語Ⅷはどれくらい違うのだろう。

『義務教育学校は各国共に進度別クラス編成です。そしてクラス毎の成績差や進度差は許容されています。言語Ⅳ終了は義務教育学校９年終了時点では10段階中４程度。言語Ⅶで９程度、Ⅷで各国義務教育学校の最上位クラス程度となっています』

　同じ長期課程（Ⅰ）でも生徒によってレベルは様々。しかし最上位クラスに入るためにはこれ全部、36単位を取っておかないとまずいという事か。
　なおこの後には、特別科目の説明が続いている。
　
『また特別科目として、以下の科目が履修可能となっています。
　○　ペルリア共和国・生活実習※（１／３単位※）
　○　ペルリア自然観察実習※（１／３単位）
　○　ペルリア社会見学実習※（１／３単位）
　○　ヒラリア共和国・見学（６日間で１単位）
　○　ナルニーアレ連邦・見学（６日間で１単位）
　○　独自魔法作成（ⅠからⅥまで　合計２単位）
　○　医療基礎（ⅠからⅢまで、合計１単位）
　○　表計算（１／３単位）
　○　恐竜狩り（１単位）
　○　運搬人（１単位）
　○　農業実習（１単位）
　○　畜産業実習（１単位）
　○　絵画・造形（ⅠからⅡまで　合計２単位）
　○　音楽（ⅠからⅡまで　合計２単位）
　
　※がつく科目は履修完了した段階で自由な外出が許可されます。また外出許可を出す為、同じ内容で同じ名称の科目が複数回開催されます。
　ただし履修して単位取得可能なのは、同じ名称の科目は１回だけです
　また各科目の履修状況により奨学金が支給されます』

　これで特別科目がひととおり判明した訳だ。
　中には職業人実習的な科目もあるけれど。
　たとえば『恐竜狩り』とかは転入条件として必要なのだろうか。

『特別科目は、いずれも転入に際して必須条件ではありません。
　ペルリア共和国とナルニーアレ連邦には有害動物駆除を専門としているハンターという職業があります。『恐竜狩り』は義務教育学校を卒業後、こういった職業に就くことを希望している生徒向けに設定されている科目です。
『恐竜狩り』、『運搬人』、『農業実習』、『畜産業実習』は、専門職に就きたい者以外は特に選ぶ必要はありません。また『音楽』や『絵画・造形』は取っても取らなくても、余程の事が無い限り進路に影響しません。
　ただし『独自魔法作成』と『表計算』は事務系や管理職系の職業では使用機会が多いので、履修しておくことをおすすめします。また『医療基礎』は医者用ではなく開拓地等での初期対応用で、Ａ評価で履修完了することにより、ナルニーアレ連邦では準医療魔法士の資格を取得出来ます』

　留学っぽいのも気になる。
　ヒラリアとかナルニーアレの見学、６日という事は現地に行けるという事なのだろうか。

『その通りです。特殊魔法で現地へと移動し対象国を回ります。ただし移動に片道１日ほど要するので、現地で活動できる時間は３泊４日程度です』

　これは是非受けてみたい。履修条件はきっと厳しいと思うけれど。
　さて、これで長期課程（Ⅰ）についてはひととおり見てみた。
　これが今の課程で、私もこの課程のまま進めるつもりだ。
　１日６科目＋αくらい学習を進めれば、最上位クラスまで何とか対応できそうだし。

　ただ一応他の課程、長期課程（Ⅱ）と長期課程（Ⅲ）も見ておこう。
　私はタブレットをタップして、表示を切り替える。