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第11章 3月を迎えて
63 掲示板の有効活用
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気になったので、つい『ペルリア社会見学実習』の2単位時間目も続けてやってしまう。
疑問を持った『1工程で多くの事をしない理由』については、ちゃんと答が載っていた。
『複雑な独自魔法は、内容を完全に理解していない限り、結果が人によって左右されがちです。それを防ぐためにも1人が使用する魔法は、単純かつ効果をイメージしやすいものに限定しています。
また1人あたりの魔法を単純化することにより、作業が属人化せず、誰でも出来る様になります。
更に単純化した魔法は理解しやすい為、少ない訓練で現場に投入可能です。また理解しやすいという事は魔力の消費も抑えられるということですので、より数多く作業をこなすことが可能となります。
ですので大規模な工場ほど、工程数が多くなっても、独自魔法は単純なものに限定するのが主流です』
更にも幾つか理由がある様だ。
他の場所を見てみると、こんな記述があった。
『幾つもの工程が実現出来る独自魔法を覚えた者は、その工場以外でもその魔法を使用出来ます。その場合、独自魔法に含まれたその工場独自のノウハウ等が、他の工場へ流れてしまう可能性が高くなります。
ですので他への技術や知識の流出を防ぐ為にも、労働者に覚えさせる魔法は最小限かつ単純なものとして、ノウハウ等の知識を流出しない様にしているのが普通です。
一方で経営者が作業員を兼ねている小規模工場等では、その作業者は製造の全行程を一気に行える魔法を開発して使用するのが一般的です。個人営業のパン店、惣菜店などでは、こういった複雑な独自魔法を運用している場合が多くみられます。ただこういった複雑な独自魔法は開発が難しい為、専門の魔法技師に委託して作成される事が多くなります』
つまり私のスイーツ作成魔法の類いと同じような魔法を、個人商店等で使用しているという事か。
専門の魔法技師に独自魔法を開発して貰ったりして。
何というか納得だ。
しかしそうなると、新たな疑問が出てくる。
そうやって『少ない訓練で覚えられる、誰でも可能な、属人化しない単純労働』というのは、給料が安くなるのではないかと。
これは知識魔法が返答してくれた。
『こういった工場での単純魔法作業員は、概ね最低賃金で雇用されています。ペルリアの場合、1時間あたり100Cで、1日あたり7時間勤務が普通です』
なら4週間、週5日働くとすると、14,000Cか。
これが安いのかどうかは、私にはわからない。
まだペルリア的な金銭感覚がわかっていないから。
最低賃金ということは、きっと安いのだろうとは思うけれど。
『北島の標準的な単身居住用物件なら、1か月あたり3,000C。で借りることが可能です。ですので週に5日間働けば、十分生活を送ることが可能となります。
ただし貧困層の場合は、週に2日程度しか働かない者も多いです。それでもアイナエア地区なら、1月1,000Cという安い物件も存在します。ですから最低限の生活は可能です』
ここペルリアはある意味、住みやすい場所なのかもしれない。
3日に1回働くだけでも、そこそこ生活は出来る様だから。
もちろん底辺の生活ではあるし、私自身がそういった生活をするつもりはないけれど。
あ、でも底辺というなら、路上生活者とかはいないのだろうか。
『路上生活者はいません。ペルリアでは労働の義務と納税の義務は強制力を持って担保されています。ですから固定された居所の届け出は必要です。また誰の扶養にも入っておらず貯金等も無い者、一定以上の借金をしているのに収入が基準以下の者については、生活費が無いと魔法的に判断された状態で強制労働施設に収容されます』
そういえばそんな施設があったなと思い出した。
それもうちの第一施設の横なんて場所に。
ならこの社会見学とは、ひょっとして『そういった単純労働なら、誰でも可能だ。だから真面目に働けば、生きていくのは困難ではない』とわからせる為のものだったりするのだろうか。
それとも『単純労働だとあまり稼げないという実態がある。だから勉強して、より高度な能力を身につけろ』という意味だろうか。
きっと私の考えすぎなのだろう。
『ペルリアではこうして工場製品を作っています』
その程度の意味に捉えるのが、きっと正解だ。
さて、今は15時10分。
数学なら夕食受け取り時までに、何とか1単位時間進められる。
数学Ⅱはまだ中学校の範囲内だから難しくない。
今日はお昼に出かけたから、少しでも学習を進めておこう。
◇◇◇
予定通りあっさり数学を終わらせて、夕食に行く準備をしながら偵察魔法で掲示板を確認。
掲示板の書き込みは更に増えているし、現に書き込んでいる人もいる。
魔法を使って遠隔ではなく、食堂の掲示板に手書きでだ。
内容のほとんどは、今度の実習に関するもの。
半分以上は今度の実習の内容についてだけれど、活発に書き込まれているのは『まだ通知が来ていません。履修条件はどれくらいなのでしょう(記:アーイハ)』という記載に連なる書き込みだ。
『言語Ⅱは10前後必要だと思います。あとは社会見学なので、地理歴史が必要だと思います(記:トラン)』
『予想では言語が毎日1単位時間進度で、地理歴史が2日で1単位時間以上程度。前の自然観察がそれくらいでした。あれは地理歴史ではなく自然科学でしたけれど(記:ナスリン)』
『学習を進めてみましたが、魔法も必要な気がします。長期Ⅰを取っている人なら問題ない程度だとは思いますけれど(記:ウアン)』
大体皆さん、妥当な事を書いている様だ。
なら私が追記する必要はないだろう。
以前に比べると、掲示板が有効に活用される様になったと思う。
食堂にゾンビが常駐していた頃が嘘の様だ。
さて、そろそろ食事を受け取りに行く準備をしよう。
ニナに会えるかなと思いつつ、基準2の上着を収納から取り出す。
疑問を持った『1工程で多くの事をしない理由』については、ちゃんと答が載っていた。
『複雑な独自魔法は、内容を完全に理解していない限り、結果が人によって左右されがちです。それを防ぐためにも1人が使用する魔法は、単純かつ効果をイメージしやすいものに限定しています。
また1人あたりの魔法を単純化することにより、作業が属人化せず、誰でも出来る様になります。
更に単純化した魔法は理解しやすい為、少ない訓練で現場に投入可能です。また理解しやすいという事は魔力の消費も抑えられるということですので、より数多く作業をこなすことが可能となります。
ですので大規模な工場ほど、工程数が多くなっても、独自魔法は単純なものに限定するのが主流です』
更にも幾つか理由がある様だ。
他の場所を見てみると、こんな記述があった。
『幾つもの工程が実現出来る独自魔法を覚えた者は、その工場以外でもその魔法を使用出来ます。その場合、独自魔法に含まれたその工場独自のノウハウ等が、他の工場へ流れてしまう可能性が高くなります。
ですので他への技術や知識の流出を防ぐ為にも、労働者に覚えさせる魔法は最小限かつ単純なものとして、ノウハウ等の知識を流出しない様にしているのが普通です。
一方で経営者が作業員を兼ねている小規模工場等では、その作業者は製造の全行程を一気に行える魔法を開発して使用するのが一般的です。個人営業のパン店、惣菜店などでは、こういった複雑な独自魔法を運用している場合が多くみられます。ただこういった複雑な独自魔法は開発が難しい為、専門の魔法技師に委託して作成される事が多くなります』
つまり私のスイーツ作成魔法の類いと同じような魔法を、個人商店等で使用しているという事か。
専門の魔法技師に独自魔法を開発して貰ったりして。
何というか納得だ。
しかしそうなると、新たな疑問が出てくる。
そうやって『少ない訓練で覚えられる、誰でも可能な、属人化しない単純労働』というのは、給料が安くなるのではないかと。
これは知識魔法が返答してくれた。
『こういった工場での単純魔法作業員は、概ね最低賃金で雇用されています。ペルリアの場合、1時間あたり100Cで、1日あたり7時間勤務が普通です』
なら4週間、週5日働くとすると、14,000Cか。
これが安いのかどうかは、私にはわからない。
まだペルリア的な金銭感覚がわかっていないから。
最低賃金ということは、きっと安いのだろうとは思うけれど。
『北島の標準的な単身居住用物件なら、1か月あたり3,000C。で借りることが可能です。ですので週に5日間働けば、十分生活を送ることが可能となります。
ただし貧困層の場合は、週に2日程度しか働かない者も多いです。それでもアイナエア地区なら、1月1,000Cという安い物件も存在します。ですから最低限の生活は可能です』
ここペルリアはある意味、住みやすい場所なのかもしれない。
3日に1回働くだけでも、そこそこ生活は出来る様だから。
もちろん底辺の生活ではあるし、私自身がそういった生活をするつもりはないけれど。
あ、でも底辺というなら、路上生活者とかはいないのだろうか。
『路上生活者はいません。ペルリアでは労働の義務と納税の義務は強制力を持って担保されています。ですから固定された居所の届け出は必要です。また誰の扶養にも入っておらず貯金等も無い者、一定以上の借金をしているのに収入が基準以下の者については、生活費が無いと魔法的に判断された状態で強制労働施設に収容されます』
そういえばそんな施設があったなと思い出した。
それもうちの第一施設の横なんて場所に。
ならこの社会見学とは、ひょっとして『そういった単純労働なら、誰でも可能だ。だから真面目に働けば、生きていくのは困難ではない』とわからせる為のものだったりするのだろうか。
それとも『単純労働だとあまり稼げないという実態がある。だから勉強して、より高度な能力を身につけろ』という意味だろうか。
きっと私の考えすぎなのだろう。
『ペルリアではこうして工場製品を作っています』
その程度の意味に捉えるのが、きっと正解だ。
さて、今は15時10分。
数学なら夕食受け取り時までに、何とか1単位時間進められる。
数学Ⅱはまだ中学校の範囲内だから難しくない。
今日はお昼に出かけたから、少しでも学習を進めておこう。
◇◇◇
予定通りあっさり数学を終わらせて、夕食に行く準備をしながら偵察魔法で掲示板を確認。
掲示板の書き込みは更に増えているし、現に書き込んでいる人もいる。
魔法を使って遠隔ではなく、食堂の掲示板に手書きでだ。
内容のほとんどは、今度の実習に関するもの。
半分以上は今度の実習の内容についてだけれど、活発に書き込まれているのは『まだ通知が来ていません。履修条件はどれくらいなのでしょう(記:アーイハ)』という記載に連なる書き込みだ。
『言語Ⅱは10前後必要だと思います。あとは社会見学なので、地理歴史が必要だと思います(記:トラン)』
『予想では言語が毎日1単位時間進度で、地理歴史が2日で1単位時間以上程度。前の自然観察がそれくらいでした。あれは地理歴史ではなく自然科学でしたけれど(記:ナスリン)』
『学習を進めてみましたが、魔法も必要な気がします。長期Ⅰを取っている人なら問題ない程度だとは思いますけれど(記:ウアン)』
大体皆さん、妥当な事を書いている様だ。
なら私が追記する必要はないだろう。
以前に比べると、掲示板が有効に活用される様になったと思う。
食堂にゾンビが常駐していた頃が嘘の様だ。
さて、そろそろ食事を受け取りに行く準備をしよう。
ニナに会えるかなと思いつつ、基準2の上着を収納から取り出す。
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