ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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拾遺録1 カイル君の冒険者な日々

俺達の決意⒅ 対リントヴルム戦

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 アディ十卒長さんが操縦するファリニシュは魔物をガンガンに倒しながら前進している。
 倒した魔物は回収せずそのまま。
 これはリントヴルムに気づかれるのを遅くする為だ。

 出来るだけ迷宮ダンジョンの奥でリントヴルムと対決するというのが既定方針。
 これはリントヴルムを倒せなかった場合、出口までの距離が少しでも長い方が誘導工作等を行いやすいからだ。

 ただ途中の魔物は倒しておかないとリントヴルムを誘導したり戦闘したりする際の邪魔になる。
 故にリントヴルム以外の魔物は倒すが、後は燃やしたりする事無くそのままという事になった。

 冒険者の俺としては正直もったいないと感じてしまう。
 何せ先程から討伐報告が来ている魔物、最低でもアークコボルト、基本的にはトロルかその進化種。
 1匹あたりの褒賞金は最低でも小銀貨5枚5,000円以上だ。
 それが既に20匹以上、倒したまま放置されている。

 勿論俺達のゴーレムで回収するなんて事はしない。
 本当はしたいところだけれども。
 小銀貨5枚5,000円が20匹なら小金貨1枚10万円
 うちの実家くらいの農家なら1ヶ月暮らせる。 

「ファリニシュ、7離半15km地点に到達。未だリントヴルムの反応なし」

 おっと、まもなく俺達も前進開始だ。
 操縦しているビッグの方は問題無い。
 ポーチにコボルトキングの槍と投槍5本が入っているのも確認済みだ。

 更にビッグを通して監視魔法も起動中。
 偵察魔法ほどではないけれど、これでも直線方向は相当遠くまで見ることが出来る。
 
「それでは冒険者の皆さんと第二偵察分隊のゴーレムは前進準備をお願いします」

「了解」
「了解」

 俺達の分は代表して俺が、あとは偵察魔法隊の机から女性の十卒長補さんが返答。

 サリアが操縦する両肩が白く塗られた人型ゴーレム、マグナスを先頭に歩き始める。

 サリアのマグナスが先頭なのは、
  ① 偵察魔法で先の様子を把握可能で
  ② 全員に適宜高速移動魔法を使用して先行するファリニシュとの距離を調整する
役目の為だ。

 なお偵察魔法隊の亀形ゴーレムはサリアとはまた別の高速移動魔法で動いている。

 ビッグを通しての知覚では敵を感じられない。
 先行するファリニシュが全て討伐済みだ。
 所々にある魔物の死骸を見れば、サリアやヒューマ、フミノ先生が使う空即斬で切断したとわかる。

 回収したい気持ちをこらえて前へ。
 時々高速移動魔法を使っているのでかなり速いペースで進んでいく。
 そして、ついに。

「リントヴルムの挙動に変化。起き上がり、洞窟出口方向に首を向けています」

「ファリニシュ、14離600腕29.2km地点で待機」

「リントヴルム、羽根を広げました。飛行を開始すると思われます」

「第二段階へ移行準備をお願いします」

「了解」

 俺達のゴーレムはそれぞれ配置につく。
 サリアが操縦する子犬型ゴーレム2頭のうちインゲボルグが前進して50腕100m先の左右洞窟連絡通路へ。
 もう1頭、ユースタシアは逆に後退して250腕500m出口側の連絡通路へ。

 マグナス、コンボイ、ライオ、セイバーは横一列に並び、連弩を取り出して並べる。
 そしてサリアがマグナス経由の地属性魔法で連弩の三脚部分を固定。
 これでハンドルを回す右手と狙いを定める左手だけで連弩を操作出来るようになった。

 一方、俺のビッグとレウスのロディマスは自在袋ポーチから投槍を取り出して構える。
 時間的に投槍は1投しか出来ないだろう。
 だから次に取り出す得物はコボルトキングの槍だ。
 最速で自在袋ポーチから出す手順を頭の中で再確認。

「リントヴルム、飛行を開始。洞窟出口方向。飛行しながら冷凍波コールドブレスを発射」

「ファリニシュ、出口方向へ誘導開始。リントヴルムとの距離400腕800mを維持します」

 ついに動き始めた。
 勿論俺の監視魔法ではビッグの前方3離6km先は知覚できない。
 それでも聞こえてくる報告からリントヴルムの位置はわかる。

「リントヴルムは洞窟中央、最上部から半腕1m程度下部分を飛行中。迎撃地点まであと2離400腕4.8km

「ファリニシュ、熱波魔法を連射しながら誘導中」

 着実に、確実に近づいてきている。
 俺はビッグの右腕を少し動かし、投槍の調子を確認。
 大丈夫、狙える。

 そしてついにリントヴルムがビッグ経由の監視魔法の視界に入った。
 思ったより大きい。
 広げた翼の幅は1腕半3m近くありそうだ。

 もうすぐこの先の曲線右側から顔を出す。
 槍の速度を考えると、狙うのはビッグの前方50腕100m地点。
 ビッグの右腕をゆっくり後ろに引いて、左足を前にやって。
 タイミングを推し量り、そして投擲! 
 同時に強風魔法と熱波魔法を起動する。
 まだ直接視認出来ない敵に投槍と連弩の鉄矢が飛んでいく。

 ついに右側にカーブした洞窟上部にリントヴルムが姿を現した。
 こちらに向けて冷凍波コールドブレスを放つ。
 俺はコボルトキングの槍を取り出しつつ、強風魔法と熱波魔法の出力を目一杯上げる。

 何本かの鉄矢は冷凍波コールドブレスで方向を逸らされた。
 しかしかなりの本数が勢いそのままにリントヴルムに襲いかかる。

「連弩打ち終わり」

「了解」

 俺達の投槍や鉄矢が命中したかどうかを確認する余裕は無い。
 飛んでくるリントヴルムまでもう5腕10mも無いから。
 
 ビッグは前方にダッシュしつつ、自在袋ポーチからコボルトキングの槍を取り出す。
 更に冷凍波コールドブレスに耐える為、熱波魔法でゴーレム全体を包み込んだ。
 
 リントヴルムは正面から突っ込んでくる。
 この速さで確実に狙うなら小さい頭ではなくその後ろの太い胴体。
 俺はダッシュ2歩目でビッグを横方向、天井方向へジャンプさせる。
 そのまま洞窟の壁、天井を蹴って槍を下方向へ全力で突き出した。

 槍がリントヴルムの胴体中央深くへ食い込む。
 そのまま手放してしまいそうな強烈な手応え。

 ビッグは反動で洞窟奥方向へ投げ出されそうになる。
 リントヴルムの胴体に突き刺したままの槍を両手で強く握り、腕力でビッグの頭が上になるよう姿勢を立て直す。  

 リントヴルムはビッグとともに床面へ落下。
 飛んできた勢いで身体を引きずって滑走する。
 ズズズズズと大きな音と振動。
 固定した弩弓に頭を突っ込むような形で停止。

 追撃だ、そう思って突き刺さった槍を引き抜こうとした俺は、リントヴルムの頭部が完全に床面に落ちたまま動かない事に気づいた。

「死んでる」

 俺の横でレウスの呟くような声。

 ビッグとリントヴルムを挟んで反対側から、レウス操るロディマスが立ち上がった。
 両手でリントヴルムの胴体に突き立てた槍を引き抜く。

 どうやら俺のビッグとは逆に下方向から胴体を攻撃したようだ。
 その後落下したリントヴルムとともに地面を滑走した模様。
 半身がひっかき傷だらけになっている。

 リントヴルムから魔力が消えつつある。
 改めて見ると羽根も胴体もボロボロ。
 俺達の槍の一撃以外にも、連弩と投槍で全身に多数の傷を負っている。

 そういえばリントヴルムは、魔法も冷凍波コールドブレスも使わずにこっちに突っ込んできた。
 今思うとあの時リントヴルムは既に死亡直前。
 突っ込んできたというより飛んでいた勢いのまま落ちてきたというのが正しいのだろう。

「リントヴルム、死亡を確認しました」

 俺達では無く魔法偵察隊の方から報告が入った。
 ゴーレム経由の偵察魔法で確認したようだ。

「ありがとうございます。これでリントヴルムの脅威は無くなりました。ヘルウェティア国に大被害を与えた伝説の魔物を、たったこれだけの人数で倒せたのは……」

 アルベルト氏のそんな言葉を、焦ったような早口の報告が引き裂く。

「洞窟奥、巨大な魔力反応! リントヴルムより更に強力な魔物の可能性があります!」

 何だって!
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