ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀

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拾遺録2 イリアちゃんの寄り道

その15 集合

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 手紙を受け取って2週間後の夕食前。
 やたら強力な魔力反応が5つ近づいてくるのを俺の偵察魔法が察知した。
 間違いなく、俺がよく知っている反応だ。

「あれ、これって?」

 料理中のイリアが顔を上げる。気付いたようだ。

「ああ、間違いない。だが……」

 俺が手紙を出したのはアギラとヒューマ。しかし何故かパーティ全員でこっちに向かっている。
 つまりサリアとレウス、更には食堂経営をしている筈のレズンまで一緒という訳だ。

「どうしたの?」

 絵本を読んでいたシモーヌが顔を上げる。

「私やカイルさんの友達がこっちに向かっているの。夕食はまだだろうから用意しないとね」

「それって、前に言っていた迷宮消去者ダンジョン・イレーサーの人?」

 その名前は俺にとっては鬼門だ。
 しかしエミリオにそう言っても仕方ない。

「ああ。それも俺以外全員だ」

「本当!?」

 エミリオが身を乗り出した。

「ああ」

 何故全員いるのだろう。
 嬉しいのは確かだが、それ以上に嫌な予感がする。

 でもまあ拒否するわけにもいかない。
 というか門を閉めて閂をかけても余裕で入って来れる奴らだ。
 だからまあ門を開いて玄関扉も開けて歓迎態勢。

 見覚えのあるゴーレム馬グラニーとでっかいゴーレム車が門の前に停まった。
 半年くらい前に別れた連中が降りてくる。
 一見した限り別れた頃と全く変わりない。

「よお、何でまた全員でこっちへ来たんだ?」

「それぞれ事情がありましてね。それにしても広いですね、この家。予想以上です」

「ああ。元々この辺に家が無かった頃からある宿らしいからな」

「ならちょうどいい・・・・・・ですね」

 何だヒューマ、そのちょうどいいというのは。

「まあ何だし、中へどうぞ」

 取り敢えず中、元は食堂だった場所へ皆を通す。
 エミリオとシモーヌ、ベアトリスを含む10人全員で囲めるようにセットしたテーブルへ。
 なおシモーヌとベアトリスは俺とイリアで挟む形。エミリオは俺の隣だ。

「それじゃまず自己紹介しましょうか。僕達は半年前までカイルと同じパーティを組んでいたメンバーです。僕がヒューマで」

「レズンなんだな」

「アギラだ」

「サリアです」

「レウスだ」

「以上です。カイルから、此処の家で恒久的に子供を保護できるように体制を整えたい、という手紙が来たので、やってきました」

 エミリオの奴がキラキラした目で連中を見ている。 
 いや、そんな目で見ない方がいい。
 きっと全員で来たのは今言ったような格好いい理由じゃない。絶対何か裏がある筈だ。

「これで迷宮消去者ダンジョン・イレーサーが全員揃ったって事なんですか?」

 あ、ヒューマが苦笑いをした。というかサリア以外のパーティ全員だな。

「その名前は自分達では使わないんですけれどね。目立ちすぎますし。でも一般にそう呼ばれているメンバーは、この5人とカイルで全員ですね」

「凄い、本物だ!」

 エミリオは喜んでいる様だ。
 しかし俺としては素直に再会を喜べない。今のヒューマの笑顔の裏には絶対何かある筈だ。
 まずは追及しやすい奴から聞いていこう。

「ところでレズンはネイプルのあの食堂、どうしたんだ?」

「面倒な事になったから売ったんだな」

 売った? 面倒な事?

「細かい話は夕食を食べながらにしようよ。一応全員分作ってあるから」

「イリアの食事は久しぶりです」

 そうか、サリアはイリアと同じ先生の家の出身だったんだよな。レウスもだけど。
 今のサリアの言葉でそんな事を思い出す。

「レズンさんには及ばないけれどね」

 イリアが並べた料理はオーク肉主体。
 ブロックの甘辛煮、ステーキ風、茹でもも肉入りのサラダ、骨と野菜と豆のスープ。
 パンは俺がレズンから貰ったものを参考に作った、軽くてやや塩味が効いたものだ。

「懐かしい感じなんだな。パン以外は先生がたまに教室で作った豪華版の時と似たメニューなんだな」

 オーク肉がメインになっている理由は簡単だ。
 つい3日前、久しぶりにイリアが魔物討伐に出た。
 その際に力余って、はぐれオークを大斧で縦横ぶつ切りにしてしまったのだ。

 これでも討伐報酬は手に入る。
 でもぶつ切りではオークの死骸を肉や素材として売る事は出来ない。
 結果、肉や皮をうちで使う事になった訳だ。

「でもこのパンは初めて見ますね」

「カイルさんがレズンさんに作って貰ったパンを参考にしてみたんだけれどね。脂がいっぱいあるからパイっぽく生地を層にしてみたらこうなったの。
 これはこれで美味しいから定番にしたって感じかな」

 脂がいっぱいあるのは勿論イリアのおかげだ。
 つまりオークや魔猪を……以下略。

 何も魔法を使えるのだから、そっちで倒せばいいと思うのだ。
 しかしイリア的には魔法だけでは『手応えがないし、狩ったという実感がない』らしい。
 ついでに言うと『この辺の魔物は弱すぎるから、少しでもこうやって訓練しないと』だそうだ。

 俺は言いたい。この辺の魔物が弱いんじゃなくて、イリアが強すぎるんだと。
 言えないけれど。

「レズンの食堂ですけれどね。貴族だの大金持ちだの面倒な客が来るようになったんですよ。変わった美味しい料理が食べられるという評判が広がって。それがレズン的には不本意だったようですね」

 ヒューマの説明で状況が大体わかった。
 更にレズン本人が続ける。

「僕は普通の人がたくさん来て、目一杯食べられる食堂を作ったつもりだったんだな。偉いののせいで普通の人が入れないような食堂はやりたくないんだな」

 なるほど、理解した。
 でも念のため少しだけ確認しておこう。

「ならその食堂はどうしたんだ?」

「元何処かの料理長という人にレシピごと売ったんだな。商業ギルド経由で売買代金を分割払いして貰っているんだな」

 なるほど、それなら問題ないだろう。

「そしてこの場所、なかなかいい感じなんだな。食堂スペースもあるし、この辺なら面倒な客もそう来ないと思うんだな」

 おいレズン、此処でそのまま食堂を開業する気かよ。
 でもまあ、それなら多少孤児が増えても問題無いかもしれない。
 ある程度年長の子には手伝いとかもさせられるし。
 だからまあ、その辺は不問としよう。
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