18 / 67
第1章 とりあえず最初の釣りをするまで
第16話 住む家の決定
しおりを挟む
ミーニャさんが似たような条件の物件を幾つか出してくれた。
その中から家賃や間取り、場所を考慮して絞っていく。
5分程度考えて三カ所に絞った。
いずれも海沿いなのは俺にとっての必須条件だから。
海と川両方に近いのはクリスタさんから資料を貰った物件。
しかし海岸の状態がどんな状態かは今までの地図ではわからない。
あと家の様子も実際に見ないとわからない。
「それではこの3件を実際に見て決めましょう」
という事で、ミーニャさんと部屋の下見だ。
商業ギルドから出て10歩位のところでミーニャさんは大きく両手を上げて伸びる。
「ふにゃあ。外へ出るとほっとするにゃ。商業ギルドは疲れるにゃ」
ミーニャさん、先程までと口調が変わった。
「どうかしたんですか?」
「商業ギルドニャと言葉遣いまで注意されるニャ。ニャのでギルド内にいる時は疲れる発音して丁寧に喋っているのニャ。でも猫獣人の舌はああいう丁寧語を喋りにくいのニャ」
なるほど、獣人と普通人とはそういった違いもあるのか。今聞いて初めて知った。
前世でそういう話を聞けるような獣人の友人がいなかったから。
「なら大変ですね、仕事中は」
「元々ミーニャは冒険者ギルドの職員ニャ。そして冒険者ギルドニャらそんな煩い事は言われないニャ。
ニャけど講習で6ヶ月、商業ギルドの方に来ているのにゃ。ニャのでこの5ヶ月、毎日ニャれない発音でニャれない言葉使いを強要されているのニャ。
だからこうやって仕事で外に出るとほっとするニャ」
なるほど。
「ミーニャさんは元々冒険者ギルドの方なんですね」
「そうニャ。一応これでもC級冒険者ニャ」
なるほど。でもそうだとすると。
「その年齢でC級冒険者ならかなり優秀なんですね」
俺より年上だろうとは言えせいぜい18歳位、20歳までは行っていないだろう。
そしてドーソンにはC級以上の現役冒険者は7名しかいない筈。
なら相当優秀だと思っていい筈だ。
「討伐メインの冒険者ニャんて疲れるし儲からないのニャ。去年は特に魔物が出ニャくて家賃が払えなくニャりそうだったので、諦めて冒険者ギルドに就職したのニャ。
冒険者ギルドはC級以上の冒険者ニャと簡単に職員採用してくれるのニャ。でもまさか、商業ギルドで研修があるとは思わなかったニャ」
なるほど。
「でもC級なら討伐以外にも護衛とか輸送とか、結構依頼があるのでは?」
「猫獣人は瞬発力が命で、持久力は全く無いのニャ。だからゆっくり一日中動くなんて感じの護衛や長距離移動が必要な輸送ニャんてのは無理ニャ。
結局討伐と迷宮探査以外の依頼は向いてないと諦めたのニャ。そして迷宮がある町は柄が悪いのが多くて好きにニャれニャかったのニャ」
なるほど。
なんて話をしながら歩いて、そして目的地のひとつである物件の前へ。
この物件は3つの物件の中で一番東にある。
川から最も遠いけれど、そのハンデを覆せる存在かどうか。
「まずはこの物件、書類で言うと7番からニャ」
ミーニャさんはそう言って、門扉の鍵を開ける。
◇◇◇
「それでどうニャ。どれがいいか決まったかニャ」
「難しいですね」
3件目の家で俺は考え込む。
「家そのものはこの家が一番いいです。部屋数が多くて広いですから。
ただ2件目は町の中心や冒険者ギルドに近いですし、1件目は家賃が安いです」
あと1件目の近くには港がある。桟橋の先端あたりは潮通しがいいだろうし、狙える魚種も多そうだ。
整理しよう。
1件目は港が近く、家賃が41,000円/月と安い。ただし家が若干古くて狭い。
2件目は町の中心に近く冒険者ギルドまで1km程度。家も3件目ほどではないけれど不自由しない程度には広い。
ただし家賃は一番高く49,000円/月。
3件目は川と海双方に近くて広い。家賃は46,000円/月とまあまあ。ただし街の中心からは一番遠く、冒険者ギルドまで2kmくらいある。
「余計なお節介かもしれないけれど、もし決まらないニャら。
最初に行った物件はこの中ではあまりお勧めしないのにゃ。港に近い分、どうしても周囲の雰囲気が荒っぽいのニャ。
あとは冒険者ギルドまでの距離が気にならないニャら此処。広さと家賃が気にならないニャら2件目なのニャ」
ミーニャさんの言葉になるほどと思う。
一気に頭の中が整理された。
ならば俺が選ぶべきは……決まった。
「わかりました。なら此処にします」
家が広い、川にも近い。家賃が安い。
港や冒険者ギルドからはやや離れるが、それでも歩いて5分程度しか変わらない。
「わかったのニャ。それでは一度商業ギルドに戻って手続きニャ。
あとついでだから少し街も案内するニャ。私もこっち側は詳しいのニャ。だから冒険者ギルドで配っている案内よりは詳しく案内出来るニャ」
それは結構助かる。
「ありがとうございます」
「真っ直ぐ戻るよりその方が時間を稼げるニャ」
サボりかよと思ったけれど、お互いWin-Winだから問題無い。
借りることが決まった家を出て、そして俺達は歩き出す。
「この辺は女性冒険者にもお勧めのエリアニャ。治安が悪くニャく、家が広くて装備の手入れもしやすい。簡単な鍛錬ニャら庭で出来るし砂浜や土手でも訓練出来るニャ。街から遠いのが欠点ニャけれど、その分家賃が安いので悪くないのニャ」
なるほど。
「ミーニャさんもこの辺にお住まいなんですか?」
「今は秘密ニャ」
まあプライバシーだから本人が言わないなら聞かない方がいい。
今は、というところに微妙に疑問を感じるけれど。
その中から家賃や間取り、場所を考慮して絞っていく。
5分程度考えて三カ所に絞った。
いずれも海沿いなのは俺にとっての必須条件だから。
海と川両方に近いのはクリスタさんから資料を貰った物件。
しかし海岸の状態がどんな状態かは今までの地図ではわからない。
あと家の様子も実際に見ないとわからない。
「それではこの3件を実際に見て決めましょう」
という事で、ミーニャさんと部屋の下見だ。
商業ギルドから出て10歩位のところでミーニャさんは大きく両手を上げて伸びる。
「ふにゃあ。外へ出るとほっとするにゃ。商業ギルドは疲れるにゃ」
ミーニャさん、先程までと口調が変わった。
「どうかしたんですか?」
「商業ギルドニャと言葉遣いまで注意されるニャ。ニャのでギルド内にいる時は疲れる発音して丁寧に喋っているのニャ。でも猫獣人の舌はああいう丁寧語を喋りにくいのニャ」
なるほど、獣人と普通人とはそういった違いもあるのか。今聞いて初めて知った。
前世でそういう話を聞けるような獣人の友人がいなかったから。
「なら大変ですね、仕事中は」
「元々ミーニャは冒険者ギルドの職員ニャ。そして冒険者ギルドニャらそんな煩い事は言われないニャ。
ニャけど講習で6ヶ月、商業ギルドの方に来ているのにゃ。ニャのでこの5ヶ月、毎日ニャれない発音でニャれない言葉使いを強要されているのニャ。
だからこうやって仕事で外に出るとほっとするニャ」
なるほど。
「ミーニャさんは元々冒険者ギルドの方なんですね」
「そうニャ。一応これでもC級冒険者ニャ」
なるほど。でもそうだとすると。
「その年齢でC級冒険者ならかなり優秀なんですね」
俺より年上だろうとは言えせいぜい18歳位、20歳までは行っていないだろう。
そしてドーソンにはC級以上の現役冒険者は7名しかいない筈。
なら相当優秀だと思っていい筈だ。
「討伐メインの冒険者ニャんて疲れるし儲からないのニャ。去年は特に魔物が出ニャくて家賃が払えなくニャりそうだったので、諦めて冒険者ギルドに就職したのニャ。
冒険者ギルドはC級以上の冒険者ニャと簡単に職員採用してくれるのニャ。でもまさか、商業ギルドで研修があるとは思わなかったニャ」
なるほど。
「でもC級なら討伐以外にも護衛とか輸送とか、結構依頼があるのでは?」
「猫獣人は瞬発力が命で、持久力は全く無いのニャ。だからゆっくり一日中動くなんて感じの護衛や長距離移動が必要な輸送ニャんてのは無理ニャ。
結局討伐と迷宮探査以外の依頼は向いてないと諦めたのニャ。そして迷宮がある町は柄が悪いのが多くて好きにニャれニャかったのニャ」
なるほど。
なんて話をしながら歩いて、そして目的地のひとつである物件の前へ。
この物件は3つの物件の中で一番東にある。
川から最も遠いけれど、そのハンデを覆せる存在かどうか。
「まずはこの物件、書類で言うと7番からニャ」
ミーニャさんはそう言って、門扉の鍵を開ける。
◇◇◇
「それでどうニャ。どれがいいか決まったかニャ」
「難しいですね」
3件目の家で俺は考え込む。
「家そのものはこの家が一番いいです。部屋数が多くて広いですから。
ただ2件目は町の中心や冒険者ギルドに近いですし、1件目は家賃が安いです」
あと1件目の近くには港がある。桟橋の先端あたりは潮通しがいいだろうし、狙える魚種も多そうだ。
整理しよう。
1件目は港が近く、家賃が41,000円/月と安い。ただし家が若干古くて狭い。
2件目は町の中心に近く冒険者ギルドまで1km程度。家も3件目ほどではないけれど不自由しない程度には広い。
ただし家賃は一番高く49,000円/月。
3件目は川と海双方に近くて広い。家賃は46,000円/月とまあまあ。ただし街の中心からは一番遠く、冒険者ギルドまで2kmくらいある。
「余計なお節介かもしれないけれど、もし決まらないニャら。
最初に行った物件はこの中ではあまりお勧めしないのにゃ。港に近い分、どうしても周囲の雰囲気が荒っぽいのニャ。
あとは冒険者ギルドまでの距離が気にならないニャら此処。広さと家賃が気にならないニャら2件目なのニャ」
ミーニャさんの言葉になるほどと思う。
一気に頭の中が整理された。
ならば俺が選ぶべきは……決まった。
「わかりました。なら此処にします」
家が広い、川にも近い。家賃が安い。
港や冒険者ギルドからはやや離れるが、それでも歩いて5分程度しか変わらない。
「わかったのニャ。それでは一度商業ギルドに戻って手続きニャ。
あとついでだから少し街も案内するニャ。私もこっち側は詳しいのニャ。だから冒険者ギルドで配っている案内よりは詳しく案内出来るニャ」
それは結構助かる。
「ありがとうございます」
「真っ直ぐ戻るよりその方が時間を稼げるニャ」
サボりかよと思ったけれど、お互いWin-Winだから問題無い。
借りることが決まった家を出て、そして俺達は歩き出す。
「この辺は女性冒険者にもお勧めのエリアニャ。治安が悪くニャく、家が広くて装備の手入れもしやすい。簡単な鍛錬ニャら庭で出来るし砂浜や土手でも訓練出来るニャ。街から遠いのが欠点ニャけれど、その分家賃が安いので悪くないのニャ」
なるほど。
「ミーニャさんもこの辺にお住まいなんですか?」
「今は秘密ニャ」
まあプライバシーだから本人が言わないなら聞かない方がいい。
今は、というところに微妙に疑問を感じるけれど。
62
あなたにおすすめの小説
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~
雪野湯
ファンタジー
王立錬金研究所の研究員であった元貴族ケントは政治家に転向するも、政争に敗れ左遷された。
左遷先は領民のいない呪われた大地を抱く廃城。
この瓦礫に埋もれた城に、世界で唯一無二の不思議な銀眼を持つ男は夢も希望も埋めて、その謎と共に朽ち果てるつもりでいた。
しかし、運命のいたずらか、彼のもとに素晴らしき仲間が集う。
彼らの力を借り、様々な種族と交流し、呪われた大地の原因である未踏遺跡の攻略を目指す。
その過程で遺跡に眠っていた世界の秘密を知った。
遺跡の力は世界を滅亡へと導くが、彼は銀眼と仲間たちの力を借りて立ち向かう。
様々な苦難を乗り越え、左遷王と揶揄された若き青年は世界に新たな道を示し、本物の王となる。
見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる
盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる