病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

文字の大きさ
25 / 266
第2章 甘味は何処だ ~夏休み合宿編・上~

第22話 絶好調かつハイな料理

しおりを挟む
 よし、テングサを加工して、魚を刺身にして……でも甘味、寒天と蜜だけではいまひとつだ。何か他に材料があるだろうか。

 定番なら小豆を使ってあんみつだ。しかし小豆なんてものは此処にはないよな。なら何がいいだろう。

 そんな事を考えながら、皆と一緒に大量の収穫を抱えて家へと到着。

「食料が届いていますわ」

 アキナ先輩の言葉でそっちを見てみる。裏口に地元の人が置いていった野菜や肉を入れた箱があった。箱の一番上は緑色の枝豆が載っている。

 枝豆……俺の脳裏にある料理が思い浮かんだ。
 そうだ! これだ! 小豆がなければずんだだ! 麦芽糖とずんだで代用したあんみつの完成図が頭の中に浮かぶ。
 完璧だ! 真の調和はここにあった!

「ミタキ大丈夫!?」

 ミド・リーが咄嗟に俺の両腕を掴んで顔を覗き込む。

「大丈夫だ。これで完璧だ!」

「何か大丈夫じゃなさそうだけれど、魔法で見る限りは問題なさそうね」

 そうだ、落ち着け俺。時間的に麦芽糖が出来るのは明日以降。あんみつはそれまでに間に合わせればいい。今は刺身と貝に集中すべきだろう。

 でも明日の為にミド・リーに頼んでおこう。

「今日の夕食は俺が作るから、その間に水につけておいた麦、発芽させておいてくれ。芽が3指cmくらいになればOKだ。時間がかかるなら急がなくてもいい」

「わかった。芽が3指cmくらいになればいいのね」

「ああ。そうしたら乾燥させて、粉々に粉砕する」

「あの海藻はどうするんだ?」

 これはシンハ君だ。

「水でよく洗って、何処かで干しておいてくれ。加工はその後」

「何を作るのか楽しみですわ」

「海藻や麦を使うのは明日の夜になると思います。夕食は取り敢えず東の国の商人に習った料理でも」

 東の日出ずる国、日本だ。もちろんこの世界にそんな国は無いだろうけれど。

 主食が米でなくパンなのが悔しい。あと醤油が無いのも悔しい。本当はワサビも欲しいぞ!
 でもまあその辺は色々工夫して誤魔化すことにしよう。知識だけなら任せておけ!

 俺はハイ状態のまま、まずは黒鯛のうろこ落としからとりかかった。

 ◇◇◇

 ハイのまま2時間格闘した結果、ほぼ満足がいくものが出来上がった。

  ○ 黒鯛のポワレ マスタードソース付
  ○ 魚色々のカルパッチョというか刺身、皮を剥いだのとか焼き霜作りのとか色々
  ○ あさりのバター焼き
  ○ あさりと魚あら出汁の冷製スープ
  ○ ポテトサラダ
  ○ ブダイの煮こごり(カットの仕方がテリーヌ風)

 煮こごりとか冷製スープとかは魔法を使えれば簡単。生活魔法レベルの俺の魔法でも充分なくらいに。

 なお他に麦芽糖を作る為の小麦粉ノリとかも用意してある。これに麦芽を入れて保温しておけば酵素がデンプンを糖にしてくれるはずだ。
 更に枝豆は鞘を外しておいたので、糖さえ出来ればいつでもずんだが作れる。

 あと村人が多分メインのつもりで入れてくれた鶏肉は茹でて鳥ハム状態にして冷蔵庫保管。明日は無理だがここに居る間には出来上がっているだろう。
 さて、料理が揃ったところで召喚呪文を唱えるとしよう。

「出来たぞー、運ぶの手伝い頼む!」

「待っていたぞ!」

 凝ったのでちょっとばかり時間がかかった。だから皆さん待ちくたびれていた模様だ。
 欠食児童な皆様のおかげであっという間に食卓に料理が並ぶ。

「それではいただきましょう」

 夕食、開始だ。

 まずは素性が確かそうに見える焼き物煮物系統に皆さん手が伸びる。
 だから俺は遠慮なく黒鯛の刺身へ。

 おお! 旨い! 新鮮だからか歯ごたえがこりこりだ。
 俺の中の元日本人の魂が生魚万歳と叫んでいる。刺身はワサビ醤油で食べたいが塩レモンも悪くはない。うん、いいぞこれは。

「この生魚はそうやって塩レモンで食べるのでしょうか?」

 アキナ先輩が尋ねてきた。俺が旨そうに食べてたからだろうか。

「この塩レモンでもいいですし、こちらのドレッシングでもどうぞ」

 醤油やワサビが無いからその辺りは妥協している。ただしドレッシングも塩レモンも悪くないのは確認済み。

「どれどれ……あ、これは面白いかも」

「生でこうやって食べるのははじめてです。美味しいですね」

「やっぱり料理が上手いな、ミタキは。魚を生で食べるとは思わなかったが、これはいい」

「新鮮でないと無理ですけれどね」

 俺も満足の出来だ。

「生魚だけじゃなくて、微妙に見た事が無い料理が多いよね。一体こんな料理、何処で教わったの?」

「うちの商会に以前よく来ていた東の国の商人が教えてくれたもの。新鮮な魚がないと出来ないから作ったのは初めてだけれど」

 ミド・リーにはそう返答。東の国とは勿論東の日出ずる国以降省略。

「だから皆さんが新鮮な魚を捕ってくれたおかげですね」

「普通は魚料理なんて焼くか塩で煮るくらいだけれどな」

「でも昼に食べたアクアパッツァ美味しかったですよ。だからアレに負けていられないなと言う事で」

「でもこの魚料理、ポワレ以外は初めてのメニューです。私も料理は得意なつもりでしたけれど」

「俺の持ちメニューもそろそろこれで終わりですけれどね」

 ところでアサリバターの汁をパンに吸わせて食べるの、癖になる美味さだ。
 ポワレをレモンソースごとパンにのせるのも悪くない。

「そう言えば麦とか海藻とかはどんな料理になるんだ?」

「甘いおやつの予定です。ただ明日夜までかかる予定ですね」

「それって石鹸みたいに向こうで量産出来るの?」

「材料さえ持ち込めば簡単です」

「まあ食べてのお楽しみだな」

 それにしてもここの魚は美味しい。家があるウージナも海沿いの街なのだけれど。商業都市で漁港はちょっと離れているから仕方ないかな。
 普通はこんな風に獲ってすぐ料理なんて出来ないし。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...