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第2章 甘味は何処だ ~夏休み合宿編・上~
第22話 絶好調かつハイな料理
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よし、テングサを加工して、魚を刺身にして……でも甘味、寒天と蜜だけではいまひとつだ。何か他に材料があるだろうか。
定番なら小豆を使ってあんみつだ。しかし小豆なんてものは此処にはないよな。なら何がいいだろう。
そんな事を考えながら、皆と一緒に大量の収穫を抱えて家へと到着。
「食料が届いていますわ」
アキナ先輩の言葉でそっちを見てみる。裏口に地元の人が置いていった野菜や肉を入れた箱があった。箱の一番上は緑色の枝豆が載っている。
枝豆……俺の脳裏にある料理が思い浮かんだ。
そうだ! これだ! 小豆がなければずんだだ! 麦芽糖とずんだで代用したあんみつの完成図が頭の中に浮かぶ。
完璧だ! 真の調和はここにあった!
「ミタキ大丈夫!?」
ミド・リーが咄嗟に俺の両腕を掴んで顔を覗き込む。
「大丈夫だ。これで完璧だ!」
「何か大丈夫じゃなさそうだけれど、魔法で見る限りは問題なさそうね」
そうだ、落ち着け俺。時間的に麦芽糖が出来るのは明日以降。あんみつはそれまでに間に合わせればいい。今は刺身と貝に集中すべきだろう。
でも明日の為にミド・リーに頼んでおこう。
「今日の夕食は俺が作るから、その間に水につけておいた麦、発芽させておいてくれ。芽が3指くらいになればOKだ。時間がかかるなら急がなくてもいい」
「わかった。芽が3指くらいになればいいのね」
「ああ。そうしたら乾燥させて、粉々に粉砕する」
「あの海藻はどうするんだ?」
これはシンハ君だ。
「水でよく洗って、何処かで干しておいてくれ。加工はその後」
「何を作るのか楽しみですわ」
「海藻や麦を使うのは明日の夜になると思います。夕食は取り敢えず東の国の商人に習った料理でも」
東の日出ずる国、日本だ。もちろんこの世界にそんな国は無いだろうけれど。
主食が米でなくパンなのが悔しい。あと醤油が無いのも悔しい。本当はワサビも欲しいぞ!
でもまあその辺は色々工夫して誤魔化すことにしよう。知識だけなら任せておけ!
俺はハイ状態のまま、まずは黒鯛のうろこ落としからとりかかった。
◇◇◇
ハイのまま2時間格闘した結果、ほぼ満足がいくものが出来上がった。
○ 黒鯛のポワレ マスタードソース付
○ 魚色々のカルパッチョというか刺身、皮を剥いだのとか焼き霜作りのとか色々
○ あさりのバター焼き
○ あさりと魚あら出汁の冷製スープ
○ ポテトサラダ
○ ブダイの煮こごり(カットの仕方がテリーヌ風)
煮こごりとか冷製スープとかは魔法を使えれば簡単。生活魔法レベルの俺の魔法でも充分なくらいに。
なお他に麦芽糖を作る為の小麦粉ノリとかも用意してある。これに麦芽を入れて保温しておけば酵素がデンプンを糖にしてくれるはずだ。
更に枝豆は鞘を外しておいたので、糖さえ出来ればいつでもずんだが作れる。
あと村人が多分メインのつもりで入れてくれた鶏肉は茹でて鳥ハム状態にして冷蔵庫保管。明日は無理だがここに居る間には出来上がっているだろう。
さて、料理が揃ったところで召喚呪文を唱えるとしよう。
「出来たぞー、運ぶの手伝い頼む!」
「待っていたぞ!」
凝ったのでちょっとばかり時間がかかった。だから皆さん待ちくたびれていた模様だ。
欠食児童な皆様のおかげであっという間に食卓に料理が並ぶ。
「それではいただきましょう」
夕食、開始だ。
まずは素性が確かそうに見える焼き物煮物系統に皆さん手が伸びる。
だから俺は遠慮なく黒鯛の刺身へ。
おお! 旨い! 新鮮だからか歯ごたえがこりこりだ。
俺の中の元日本人の魂が生魚万歳と叫んでいる。刺身はワサビ醤油で食べたいが塩レモンも悪くはない。うん、いいぞこれは。
「この生魚はそうやって塩レモンで食べるのでしょうか?」
アキナ先輩が尋ねてきた。俺が旨そうに食べてたからだろうか。
「この塩レモンでもいいですし、こちらのドレッシングでもどうぞ」
醤油やワサビが無いからその辺りは妥協している。ただしドレッシングも塩レモンも悪くないのは確認済み。
「どれどれ……あ、これは面白いかも」
「生でこうやって食べるのははじめてです。美味しいですね」
「やっぱり料理が上手いな、ミタキは。魚を生で食べるとは思わなかったが、これはいい」
「新鮮でないと無理ですけれどね」
俺も満足の出来だ。
「生魚だけじゃなくて、微妙に見た事が無い料理が多いよね。一体こんな料理、何処で教わったの?」
「うちの商会に以前よく来ていた東の国の商人が教えてくれたもの。新鮮な魚がないと出来ないから作ったのは初めてだけれど」
ミド・リーにはそう返答。東の国とは勿論東の日出ずる国以降省略。
「だから皆さんが新鮮な魚を捕ってくれたおかげですね」
「普通は魚料理なんて焼くか塩で煮るくらいだけれどな」
「でも昼に食べたアクアパッツァ美味しかったですよ。だからアレに負けていられないなと言う事で」
「でもこの魚料理、ポワレ以外は初めてのメニューです。私も料理は得意なつもりでしたけれど」
「俺の持ちメニューもそろそろこれで終わりですけれどね」
ところでアサリバターの汁をパンに吸わせて食べるの、癖になる美味さだ。
ポワレをレモンソースごとパンにのせるのも悪くない。
「そう言えば麦とか海藻とかはどんな料理になるんだ?」
「甘いおやつの予定です。ただ明日夜までかかる予定ですね」
「それって石鹸みたいに向こうで量産出来るの?」
「材料さえ持ち込めば簡単です」
「まあ食べてのお楽しみだな」
それにしてもここの魚は美味しい。家があるウージナも海沿いの街なのだけれど。商業都市で漁港はちょっと離れているから仕方ないかな。
普通はこんな風に獲ってすぐ料理なんて出来ないし。
定番なら小豆を使ってあんみつだ。しかし小豆なんてものは此処にはないよな。なら何がいいだろう。
そんな事を考えながら、皆と一緒に大量の収穫を抱えて家へと到着。
「食料が届いていますわ」
アキナ先輩の言葉でそっちを見てみる。裏口に地元の人が置いていった野菜や肉を入れた箱があった。箱の一番上は緑色の枝豆が載っている。
枝豆……俺の脳裏にある料理が思い浮かんだ。
そうだ! これだ! 小豆がなければずんだだ! 麦芽糖とずんだで代用したあんみつの完成図が頭の中に浮かぶ。
完璧だ! 真の調和はここにあった!
「ミタキ大丈夫!?」
ミド・リーが咄嗟に俺の両腕を掴んで顔を覗き込む。
「大丈夫だ。これで完璧だ!」
「何か大丈夫じゃなさそうだけれど、魔法で見る限りは問題なさそうね」
そうだ、落ち着け俺。時間的に麦芽糖が出来るのは明日以降。あんみつはそれまでに間に合わせればいい。今は刺身と貝に集中すべきだろう。
でも明日の為にミド・リーに頼んでおこう。
「今日の夕食は俺が作るから、その間に水につけておいた麦、発芽させておいてくれ。芽が3指くらいになればOKだ。時間がかかるなら急がなくてもいい」
「わかった。芽が3指くらいになればいいのね」
「ああ。そうしたら乾燥させて、粉々に粉砕する」
「あの海藻はどうするんだ?」
これはシンハ君だ。
「水でよく洗って、何処かで干しておいてくれ。加工はその後」
「何を作るのか楽しみですわ」
「海藻や麦を使うのは明日の夜になると思います。夕食は取り敢えず東の国の商人に習った料理でも」
東の日出ずる国、日本だ。もちろんこの世界にそんな国は無いだろうけれど。
主食が米でなくパンなのが悔しい。あと醤油が無いのも悔しい。本当はワサビも欲しいぞ!
でもまあその辺は色々工夫して誤魔化すことにしよう。知識だけなら任せておけ!
俺はハイ状態のまま、まずは黒鯛のうろこ落としからとりかかった。
◇◇◇
ハイのまま2時間格闘した結果、ほぼ満足がいくものが出来上がった。
○ 黒鯛のポワレ マスタードソース付
○ 魚色々のカルパッチョというか刺身、皮を剥いだのとか焼き霜作りのとか色々
○ あさりのバター焼き
○ あさりと魚あら出汁の冷製スープ
○ ポテトサラダ
○ ブダイの煮こごり(カットの仕方がテリーヌ風)
煮こごりとか冷製スープとかは魔法を使えれば簡単。生活魔法レベルの俺の魔法でも充分なくらいに。
なお他に麦芽糖を作る為の小麦粉ノリとかも用意してある。これに麦芽を入れて保温しておけば酵素がデンプンを糖にしてくれるはずだ。
更に枝豆は鞘を外しておいたので、糖さえ出来ればいつでもずんだが作れる。
あと村人が多分メインのつもりで入れてくれた鶏肉は茹でて鳥ハム状態にして冷蔵庫保管。明日は無理だがここに居る間には出来上がっているだろう。
さて、料理が揃ったところで召喚呪文を唱えるとしよう。
「出来たぞー、運ぶの手伝い頼む!」
「待っていたぞ!」
凝ったのでちょっとばかり時間がかかった。だから皆さん待ちくたびれていた模様だ。
欠食児童な皆様のおかげであっという間に食卓に料理が並ぶ。
「それではいただきましょう」
夕食、開始だ。
まずは素性が確かそうに見える焼き物煮物系統に皆さん手が伸びる。
だから俺は遠慮なく黒鯛の刺身へ。
おお! 旨い! 新鮮だからか歯ごたえがこりこりだ。
俺の中の元日本人の魂が生魚万歳と叫んでいる。刺身はワサビ醤油で食べたいが塩レモンも悪くはない。うん、いいぞこれは。
「この生魚はそうやって塩レモンで食べるのでしょうか?」
アキナ先輩が尋ねてきた。俺が旨そうに食べてたからだろうか。
「この塩レモンでもいいですし、こちらのドレッシングでもどうぞ」
醤油やワサビが無いからその辺りは妥協している。ただしドレッシングも塩レモンも悪くないのは確認済み。
「どれどれ……あ、これは面白いかも」
「生でこうやって食べるのははじめてです。美味しいですね」
「やっぱり料理が上手いな、ミタキは。魚を生で食べるとは思わなかったが、これはいい」
「新鮮でないと無理ですけれどね」
俺も満足の出来だ。
「生魚だけじゃなくて、微妙に見た事が無い料理が多いよね。一体こんな料理、何処で教わったの?」
「うちの商会に以前よく来ていた東の国の商人が教えてくれたもの。新鮮な魚がないと出来ないから作ったのは初めてだけれど」
ミド・リーにはそう返答。東の国とは勿論東の日出ずる国以降省略。
「だから皆さんが新鮮な魚を捕ってくれたおかげですね」
「普通は魚料理なんて焼くか塩で煮るくらいだけれどな」
「でも昼に食べたアクアパッツァ美味しかったですよ。だからアレに負けていられないなと言う事で」
「でもこの魚料理、ポワレ以外は初めてのメニューです。私も料理は得意なつもりでしたけれど」
「俺の持ちメニューもそろそろこれで終わりですけれどね」
ところでアサリバターの汁をパンに吸わせて食べるの、癖になる美味さだ。
ポワレをレモンソースごとパンにのせるのも悪くない。
「そう言えば麦とか海藻とかはどんな料理になるんだ?」
「甘いおやつの予定です。ただ明日夜までかかる予定ですね」
「それって石鹸みたいに向こうで量産出来るの?」
「材料さえ持ち込めば簡単です」
「まあ食べてのお楽しみだな」
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