病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第9章 狩って吊して皮剥いで ~冬休み合宿編・上~

第70話 夜の出来事

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 倒した猿魔獣ヒバゴンは船着き場まで降ろして石畳の上で解体。内臓や魔石を取った後船着き場の空いている場所で水漬けにする。こう処理する事で匂いも消えるし毛皮も痛みにくく剥ぎやすくなるそうだ。
 なお猿魔獣ヒバゴンは食用にならないので魔石と毛皮だけを利用。毛皮は熊や熊魔獣アナログマよりキメが細かく柔軟性があって価値が高いらしい。

 また猪魔獣オツコト熊魔獣アナログマは肉が食用になる。そして倒した後の処理手順は今回の猿魔獣ヒバゴンと同じでいいそうだ。

 これらの処理はヨーコ先輩とフールイ先輩、シモンさんが知っていた。貴族の家系で狩りも教養のうちというヨーコ先輩や、工作材料を求めた結果魔獣狩り経験もあるシモンさんは予想の範囲内。
 しかしフールイ先輩がこういった処理に慣れているとは予想外だった。聞けば幼い頃は父親に連れられて狩りに良く出かけていたという。


 結局フールイ先輩、ナイフ1本で腹を割き内臓や魔石を取り出す作業をほぼ1人でやってしまった。シモンさんさえ手出し出来ないほど鮮やかな手つきで。

「俺も本当は憶えないといけないんだろうな。ただウージナとかうちの領地とかじゃ魔獣も出ないし。今回教えて貰うしかないか。軍で魔獣討伐をやるときは必須だし」

 シンハ君がしみじみという感じで言う。

「久しぶりだが手が憶えていた。水もあるし下が平らで楽」

 そう言うフールイ先輩は一見無表情、でも今の俺には笑顔だとわかる。今は髪型も目が見える状態だし。

 夕方結構時間を使ってしまったので夕食は簡単に。毎度おなじみ手巻きサンドイッチだ。
 具を用意するのは料理をきちんとつくるよりずっと楽だ。野菜を切ったり卵とマヨネーズを混ぜたり、魚の身を外してやはりマヨと混ぜたり。何せ人数がいるし加熱は魔法で思いのまま。だから10分少々で準備完了。


「定番だけれど簡単な割には美味しいよな、これ」


「そうですね。ところで明日は何時起床にしましょうか?」


「水に浸けているヒバゴンの解体があるし、討伐もするだろう。食材の買い出しも必要だし、朝6時でいいんじゃないか」


「そうですね」


 早いがまあいいだろう。そんな訳で食事後はさっさと就寝態勢。自分の部屋へ入って用意したシーツを敷き布団と掛け布団の間に入れ、横になる。
 明日からは本格的な討伐活動が始まる。手に入れた魔石の性質も色々調べてみたい。何か面白い物が出来るだろうか。
 そんな事を考えるとなかなか眠れない。もういい加減寝ないとと思った頃だった。

 部屋のドアが突如開いた。何だと思ってそっちを見る。暗い中だがシルエットで誰かわかった。フールイ先輩だ。
 先輩は俺が寝ているベッドの真横まで来ると、いきなり服を脱ぎだした。おいちょっと待て何だこのサービスシーンは!
 そう思いつつも気配を殺しつつ、ついじっくりと見てしまう。

 暗いのと気配を殺すため動けないのとではっきりとは見えない。でも暗い中白い肌が逆シルエットになってなんとなく見える。小柄だけれどやっぱり胸が大きい。
 これはロリ巨乳というのだろうか。顔もそういえばロリ系と言えないことも無い。先輩だけれど。ああ何を考えているのだ俺は。
 そして先輩は何をしているのか。夜這いか、夜這いなのか!

 先輩は長いTシャツというか寝間着のワンピースを脱いで、さらに足を上げて最後の下着を脱ぐ。暗くて肝心な部分が色々見えない。いや見えたらまずいだろうけれど。
 そして服をたたんでベッド横の台に置き、布団に手をかける。手探りで掛け布団とシーツを確認したところで。

「ん?」

 疑問形の吐息が先輩の口から漏れた。何か変だなと思いつつ俺は身体を動かさず気配を殺して様子をうかがい続ける。
 先輩は少し考えるかのように動きを止めた後、小さな声で呪文を唱えた。

灯火ライト

 俺はとっさに目を瞑る。いや本当はじっくり明るいところで見たいのだけれども。
 まぶたの向こう側が明るくなった後、すぐ暗くなった。

「部屋、間違えた」

 そんなつぶやきが聞こえる。そういう事か。夜這いじゃ無かったのか。
 何か台詞がわざとらしい気がしたのはきっと気のせい。残念だけれどほっと一息。

「ミタキ、起きてる?」

 勿論返事はしない。寝てます、寝ていますよ。いわゆる優しい嘘という奴だ。
 眼球すら動かさない状態で呼吸も一定に保ち寝たふりを演じる。
 このまま気づかずにいてくれ。そう思っていた時だ。

 何か顔に近づく気配。頬に何か軽いものが触れた。手とかじゃ無くてもっと軽い何か。
 そして次の瞬間唇に何かが触れた。暖かく柔らかい何かだ。びくっとしそうになるのを何とか堪える。

 何だ、何が起きているんだ。確かめたいけれど寝たふりをしているから動けない。
 唇に触れた柔らかい感触は少し続いた後、ふっと離れていった。頬に触れていた軽い何かもそれと一緒に離れる。

 ベッドの横で先輩が少し動いている気配。これはきっと脱いだ服を着ているのだろう。気配の感じからきっとそう。今は目をあけられないけれど。

「おやすみ、ミタキ」

 小さな声とともに先輩の気配はベッド横を離れていく。扉が開き、そして閉まったかすかな音がした。
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