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第9章 狩って吊して皮剥いで ~冬休み合宿編・上~
第71話 朝の作業
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あの後。当然俺は色々興奮してなかなか眠れなかった。悶々としているうちに窓の外の空が白みかけてきたのを憶えている。それでもいつの間にか寝てしまったようで……
「ミタキ、朝よ!」
ミド・リーの声が聞こえた。まぶたの向こう側が明るい。寝足りないが仕方ない。無理矢理目を開ける。
昨日暗い中で見たのとは同じ部屋とは思えない朝の雰囲気。でもあれは夢じゃなかったよな、きっと。そんな事を考えながら身を起こす。
「悪い、ミド・リー」
「時々ミタキは寝起きが悪いよね」
衝撃的な事があると朝が遅くなるんだ、なんて説明は勿論できない。
ベーコンを焼いた匂いがしている。朝食の匂いという感じだ。
「おはようございます」
そう行って大部屋に顔を出す。
既にテーブルの上には朝食が並んでいた。焼いたベーコン、プレーンオムレツ、サラダにスープ、パンという感じ。
「全員揃いましたし、朝食にしましょう」
アキナ先輩の台詞で全員が席に着く。
朝食を食べながら本日やることを相談。
「今日は討伐と、あと町での食事の仕入れだな」
「あとは昨日の猿魔獣の皮剥ぎもだよ」
そうだな。
「ミタキ君は何かやりたい事はあるでしょうか?」
「討伐の合間でいいけれど、町で魔法銅を仕入れておきたい。魔法銀程ではないけれど魔法用具の素材として有用だし」
俺はここに来る前に考えていた予定を答える。
「昨日狩った猿魔獣の魔法石は分析しないの?」
「魔法銅なんかの材料を手に入れたら概念図を描いてみるよ。製作は例によってシモンさんにお願いすることになるけれど」
「その辺は任せておいて。あの魔法杖も持ってきたし、材料と概念図があれば何でも作るよ」
シモンさんは相変わらず頼もしい。
「それにしても今日のオムレツ、美味しいよな。見事なふわとろ具合で」
割るとふわっと広がるあのタイプだ。俺はこういうテクニカルな料理は得意ではないので素直に感心する。
「今日の朝食はフールイさんよ」
「定番ものしか作れない」
「でもオムレツもベーコンもいい感じだよね。サラダも綺麗だし」
確かにそうだ。フールイ先輩、料理も上手だよな。そんな事を思ったら昨日の白い裸身を思い出す。
いかんいかん。アレは部屋を間違えただけ。でも最後のはキスだよな、多分。
それともあの部分、いや昨夜の出来事は全て夢だったのだろうか。
「それじゃ今日はまず猿魔獣の皮剥をやって、それから昼前まで討伐という感じでいいか? 食料はまだあるんだよな」
「昼食分だけは」
「なら大丈夫だね。食べ終わったら外へ出る支度をして、まずは皮剥だ」
「俺もやり方を憶えたいんだよな。だからわかりやすくやってくれると嬉しい」
「善処する」
朝食を終えたら、俺の場合は顔を洗って着替えて、そして皮剥ぎだ。
全員で船着き場に降りて、水漬けしてある猿魔獣を引っ張り上げる。腹側を上にして船着き場の石畳の上に置いて皮剥き開始だ。
フールイ先輩がナイフ2本を手に解説を始める。
「皮剥きには良く切れるナイフと皮剥き用の切っ先が鋭くないナイフを使う。まずは切れるナイフで足首をこう、くるりと切れ込みを入れる。骨に当てて引くように切ればだいたい皮だけ綺麗に切れる。こんな感じ。
切ったらこの辺にナイフを入れて、股まで一気に皮を切る。内側の皮の薄い部分にしっかり刃を当てて、ナイフを引きながら滑らせれば力はいらない。こんな感じ」
フールイ先輩はそう言って右後足、右前足、左前足を同じように切るとナイフをシンハ君に渡す。
「こんな感じ。やってみて」
シンハ君はナイフを受け取ると、おっかなびっくりという感じで猿魔獣の左後足の足首部分に刃を当てる。
「そう。そこでナイフを引きながらくるりと回す……」
3半時間位で猿魔獣の皮は完全に剥がされた。
「やっぱり先輩は早くて上手いな。俺のやった場所と全然違う」
どっちも一見綺麗に剥いであるように見えるが、よく見るとシンハ君が剥いだ左後脚部分は白い脂肪が不規則に残っていて、剥いだ面が所々段差になっている。
「でも皮は傷ついてない。初めてでこれなら充分」
「このナイフのおかげだと思うぜ。皮部分が切れないからさ」
「それもある。作ったシモンさんがこの作業をよく知っている証拠」
そう言ってフールイ先輩は剥がされた皮全体を見る。
「駆除等で皮を剥いで業者に渡す時はこの状態でいい。自分用に使う時はこの後、皮剥き用のナイフで内側の脂肪をこそげ落とし、草木灰と食塩を入れた水に半日浸して更に余分な脂肪を取る。最後に伸ばしながら乾かして、半乾きの時点で蜜蝋を溶かしながら内側に薄く塗って、更に乾かせば完成」
なるほど。
「この肉部分は?」
「猿魔獣の肉は食用ではない。でも一緒に持っていけば処分してくれる筈」
「この町だと砦の受付で受け取るそうだ」
「なら荷車に載せていこうか。ボートに乗せたままだし」
「そうだね。取ってくるよ」
そんな感じで最初の解体作業は無事終了。次はいよいよ本格的な魔獣討伐だ。
「ミタキ、朝よ!」
ミド・リーの声が聞こえた。まぶたの向こう側が明るい。寝足りないが仕方ない。無理矢理目を開ける。
昨日暗い中で見たのとは同じ部屋とは思えない朝の雰囲気。でもあれは夢じゃなかったよな、きっと。そんな事を考えながら身を起こす。
「悪い、ミド・リー」
「時々ミタキは寝起きが悪いよね」
衝撃的な事があると朝が遅くなるんだ、なんて説明は勿論できない。
ベーコンを焼いた匂いがしている。朝食の匂いという感じだ。
「おはようございます」
そう行って大部屋に顔を出す。
既にテーブルの上には朝食が並んでいた。焼いたベーコン、プレーンオムレツ、サラダにスープ、パンという感じ。
「全員揃いましたし、朝食にしましょう」
アキナ先輩の台詞で全員が席に着く。
朝食を食べながら本日やることを相談。
「今日は討伐と、あと町での食事の仕入れだな」
「あとは昨日の猿魔獣の皮剥ぎもだよ」
そうだな。
「ミタキ君は何かやりたい事はあるでしょうか?」
「討伐の合間でいいけれど、町で魔法銅を仕入れておきたい。魔法銀程ではないけれど魔法用具の素材として有用だし」
俺はここに来る前に考えていた予定を答える。
「昨日狩った猿魔獣の魔法石は分析しないの?」
「魔法銅なんかの材料を手に入れたら概念図を描いてみるよ。製作は例によってシモンさんにお願いすることになるけれど」
「その辺は任せておいて。あの魔法杖も持ってきたし、材料と概念図があれば何でも作るよ」
シモンさんは相変わらず頼もしい。
「それにしても今日のオムレツ、美味しいよな。見事なふわとろ具合で」
割るとふわっと広がるあのタイプだ。俺はこういうテクニカルな料理は得意ではないので素直に感心する。
「今日の朝食はフールイさんよ」
「定番ものしか作れない」
「でもオムレツもベーコンもいい感じだよね。サラダも綺麗だし」
確かにそうだ。フールイ先輩、料理も上手だよな。そんな事を思ったら昨日の白い裸身を思い出す。
いかんいかん。アレは部屋を間違えただけ。でも最後のはキスだよな、多分。
それともあの部分、いや昨夜の出来事は全て夢だったのだろうか。
「それじゃ今日はまず猿魔獣の皮剥をやって、それから昼前まで討伐という感じでいいか? 食料はまだあるんだよな」
「昼食分だけは」
「なら大丈夫だね。食べ終わったら外へ出る支度をして、まずは皮剥だ」
「俺もやり方を憶えたいんだよな。だからわかりやすくやってくれると嬉しい」
「善処する」
朝食を終えたら、俺の場合は顔を洗って着替えて、そして皮剥ぎだ。
全員で船着き場に降りて、水漬けしてある猿魔獣を引っ張り上げる。腹側を上にして船着き場の石畳の上に置いて皮剥き開始だ。
フールイ先輩がナイフ2本を手に解説を始める。
「皮剥きには良く切れるナイフと皮剥き用の切っ先が鋭くないナイフを使う。まずは切れるナイフで足首をこう、くるりと切れ込みを入れる。骨に当てて引くように切ればだいたい皮だけ綺麗に切れる。こんな感じ。
切ったらこの辺にナイフを入れて、股まで一気に皮を切る。内側の皮の薄い部分にしっかり刃を当てて、ナイフを引きながら滑らせれば力はいらない。こんな感じ」
フールイ先輩はそう言って右後足、右前足、左前足を同じように切るとナイフをシンハ君に渡す。
「こんな感じ。やってみて」
シンハ君はナイフを受け取ると、おっかなびっくりという感じで猿魔獣の左後足の足首部分に刃を当てる。
「そう。そこでナイフを引きながらくるりと回す……」
3半時間位で猿魔獣の皮は完全に剥がされた。
「やっぱり先輩は早くて上手いな。俺のやった場所と全然違う」
どっちも一見綺麗に剥いであるように見えるが、よく見るとシンハ君が剥いだ左後脚部分は白い脂肪が不規則に残っていて、剥いだ面が所々段差になっている。
「でも皮は傷ついてない。初めてでこれなら充分」
「このナイフのおかげだと思うぜ。皮部分が切れないからさ」
「それもある。作ったシモンさんがこの作業をよく知っている証拠」
そう言ってフールイ先輩は剥がされた皮全体を見る。
「駆除等で皮を剥いで業者に渡す時はこの状態でいい。自分用に使う時はこの後、皮剥き用のナイフで内側の脂肪をこそげ落とし、草木灰と食塩を入れた水に半日浸して更に余分な脂肪を取る。最後に伸ばしながら乾かして、半乾きの時点で蜜蝋を溶かしながら内側に薄く塗って、更に乾かせば完成」
なるほど。
「この肉部分は?」
「猿魔獣の肉は食用ではない。でも一緒に持っていけば処分してくれる筈」
「この町だと砦の受付で受け取るそうだ」
「なら荷車に載せていこうか。ボートに乗せたままだし」
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そんな感じで最初の解体作業は無事終了。次はいよいよ本格的な魔獣討伐だ。
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