82 / 266
第9章 狩って吊して皮剥いで ~冬休み合宿編・上~
第76話 思わぬ結果と後始末
しおりを挟む
実験用の改造魔法アンテナを昨日魔獣討伐をした場所に設置した。念の為、他の魔法アンテナや武器類も同様に設置してある。
なお実験は全員が堰堤に隠れて行う事にした。魔石を設置した改造魔法アンテナにセットし、這わせた導線を確認しつつ俺は皆がいる堰堤裏まで走る。
「それでは実施します。5、4、3、2、1、発射」
ドン! ガシャーン! 衝撃波のような音と何かが壊れたような音。そして遠方にたつ砂埃。
「何だ何だ」
すぐわかるのは改造魔法アンテナが無くなっている事。見ると設置した位置の後ろ、堰堤の石壁に叩き付けられて曲がっている。設置場所から吹っ飛んで叩き付けられたようだ。
「爆発か?」
そんな声の中俺は状況を確認。吹っ飛んだ改造魔法アンテナの魔石部分を見る。
収納箱そのものはそこまで壊れていないのに中の魔石が無くなっていた。そういうことか。
「実験は成功です。成功しすぎて失敗というべきかもしれない」
「どういう事?」
「恐らく魔石に込められた風魔法の力を全力で前方に放ったんです。その結果強力な風魔法が前方に向かって飛ぶとともに、反動でこの魔法杖が後ろに飛ばされてこうなった。そんな感じで……」
「まずいわ! 今のに魔獣が反応した。大型が数頭こっちに向かってる!」
ミド・リーの台詞で一気に空気が緊迫する。
「接敵どれくらいだ」
「あと100数える位よ! 方向は前方川の上流右側! 全部で5頭!」
「戦闘準備ですわね」
それぞれが自分の武器なり魔法杖の場所につく。
「急いでヨーコ先輩の杖を直すよ!」
シモンさんは折れ曲がった元魔法杖のところへ。
「頼む」
まさか試験で魔獣をおびき寄せてしまうとは。今日は魔獣討伐はしない予定だったのに。そう思いながら俺も銃を構える。
「ヨーコ先輩とりあえずこれで使えます」
「ありがたい」
シモンさんによる杖の応急修理が終わったようだ。横目で見ると所々曲がったりしているがアンテナ部分はきっちりなおっている。
「魔獣は5頭とも猪魔獣よ! かなり大きい!」
「先頭の1頭は私が確実に仕留めます。他はよろしく」
「右側2番目のは私がやろう」
「右側残りは私がなんとかする」
しかし万が一外したらまずい。だから俺はミド・リーに尋ねる。
「ミド・リー、全体に強制睡眠魔法は出来ないか?」
「この大きさじゃ全部には効かない!」
駄目か。
「一番左は俺の投げ槍で狙う」
「いざとなったら足下に炸裂魔法を連射する」
「残ったら僕も弓で足止めするよ」
そんな声が飛び交う間にも時間は刻々と経っていく。
「もう出てくるわよ。8、7、6、5、4、3、2、1!」
猪魔獣《オツコト》の集団が猛烈な勢いでやってきた。うち中央の1頭が次の瞬間倒れる。
「次!」
俺も銃で狙いをつける。左側の奴に三点連射! 三脚を立てているのに感じる強烈な反動。
やったか! 突進する勢いはそのままだが横に倒れた。よし次!
前方を確認すると既に討伐は終わりかけていた。5頭ともそれぞれ倒れ、今はアキナ先輩がとどめをさしている状態だ。
先頭の猪はアキナ先輩が倒したのだろう。
右側に倒れているのは両目の間に穴が開いている。これは風魔法の風槍、ヨーコ先輩の魔法だ。
更に右のには一見外傷も何も見えない。これはきっとミド・リーの仕業だな。
左側の1頭は俺の銃。もう1頭はシンハ君の投げ槍が両目の間少し上部分に突き刺さっていた。
「接近した場合に備えて地表爆裂魔法を仕掛けていた。でも必要なかった」
「強いよね皆。僕の弓が出る幕は無かったな」
「これを使わなくて良かったです」
シモンさんとナカさんがそれぞれの武器を下ろす。
「とりあえずこれで終わりよ。あとはやってきそうな魔獣はいないみたい」
ミド・リーが状況終了を宣言。
「それにしても大きいな。これを運ぶのかよ」
「1頭につき1回ずつだね」
どう見ても1頭あたり50重以上はありそうだ。ならここで解体した方が楽だけれど……
「下の船着き場が使いやすいし解体に無難」
「堰堤のこっちは浄水だから汚せないぞ」
という事は結論として……
「仕方ない、運ぶか」
シンハ君の台詞が正解だ。仕方ない。
「こっちは血抜きをしながら体温を冷やして待っているわ。血が水に流れないようにすれば血抜きしてもいいよね」
「冷やすのならお任せ下さいな」
そんな訳で作業開始。まずは手近な1頭を荷車へ。
しかし重くてそのまま荷車へ持ち上げる事が出来ない。ローブで足を結わえてほぼ全員で引っ張ってなんとか載せる。
「一緒に行く。下で内臓を抜く処理をする」
「なら僕は上で出来るところまでやっておくよ」
「清拭魔法で水を汚さないようなんとかします」
そんな訳で搬送要員はシンハ君、ヨーコ先輩、俺の3人となった。最初はフールイ先輩も一緒だ。
荷物が重いので体力のあるシンハ君とヨーコ先輩は荷車の前。坂道で速度を抑えながらの搬送になる。
「重いぜ。強化魔法を使っても重いぜ」
「同意だな。私も強化魔法を使っているのだが足が滑りそうだ」
「頼むから滑らさないで下さい。洒落になりません!」
そんな事を言いながら何とか船着き場まで持っていく。
なお実験は全員が堰堤に隠れて行う事にした。魔石を設置した改造魔法アンテナにセットし、這わせた導線を確認しつつ俺は皆がいる堰堤裏まで走る。
「それでは実施します。5、4、3、2、1、発射」
ドン! ガシャーン! 衝撃波のような音と何かが壊れたような音。そして遠方にたつ砂埃。
「何だ何だ」
すぐわかるのは改造魔法アンテナが無くなっている事。見ると設置した位置の後ろ、堰堤の石壁に叩き付けられて曲がっている。設置場所から吹っ飛んで叩き付けられたようだ。
「爆発か?」
そんな声の中俺は状況を確認。吹っ飛んだ改造魔法アンテナの魔石部分を見る。
収納箱そのものはそこまで壊れていないのに中の魔石が無くなっていた。そういうことか。
「実験は成功です。成功しすぎて失敗というべきかもしれない」
「どういう事?」
「恐らく魔石に込められた風魔法の力を全力で前方に放ったんです。その結果強力な風魔法が前方に向かって飛ぶとともに、反動でこの魔法杖が後ろに飛ばされてこうなった。そんな感じで……」
「まずいわ! 今のに魔獣が反応した。大型が数頭こっちに向かってる!」
ミド・リーの台詞で一気に空気が緊迫する。
「接敵どれくらいだ」
「あと100数える位よ! 方向は前方川の上流右側! 全部で5頭!」
「戦闘準備ですわね」
それぞれが自分の武器なり魔法杖の場所につく。
「急いでヨーコ先輩の杖を直すよ!」
シモンさんは折れ曲がった元魔法杖のところへ。
「頼む」
まさか試験で魔獣をおびき寄せてしまうとは。今日は魔獣討伐はしない予定だったのに。そう思いながら俺も銃を構える。
「ヨーコ先輩とりあえずこれで使えます」
「ありがたい」
シモンさんによる杖の応急修理が終わったようだ。横目で見ると所々曲がったりしているがアンテナ部分はきっちりなおっている。
「魔獣は5頭とも猪魔獣よ! かなり大きい!」
「先頭の1頭は私が確実に仕留めます。他はよろしく」
「右側2番目のは私がやろう」
「右側残りは私がなんとかする」
しかし万が一外したらまずい。だから俺はミド・リーに尋ねる。
「ミド・リー、全体に強制睡眠魔法は出来ないか?」
「この大きさじゃ全部には効かない!」
駄目か。
「一番左は俺の投げ槍で狙う」
「いざとなったら足下に炸裂魔法を連射する」
「残ったら僕も弓で足止めするよ」
そんな声が飛び交う間にも時間は刻々と経っていく。
「もう出てくるわよ。8、7、6、5、4、3、2、1!」
猪魔獣《オツコト》の集団が猛烈な勢いでやってきた。うち中央の1頭が次の瞬間倒れる。
「次!」
俺も銃で狙いをつける。左側の奴に三点連射! 三脚を立てているのに感じる強烈な反動。
やったか! 突進する勢いはそのままだが横に倒れた。よし次!
前方を確認すると既に討伐は終わりかけていた。5頭ともそれぞれ倒れ、今はアキナ先輩がとどめをさしている状態だ。
先頭の猪はアキナ先輩が倒したのだろう。
右側に倒れているのは両目の間に穴が開いている。これは風魔法の風槍、ヨーコ先輩の魔法だ。
更に右のには一見外傷も何も見えない。これはきっとミド・リーの仕業だな。
左側の1頭は俺の銃。もう1頭はシンハ君の投げ槍が両目の間少し上部分に突き刺さっていた。
「接近した場合に備えて地表爆裂魔法を仕掛けていた。でも必要なかった」
「強いよね皆。僕の弓が出る幕は無かったな」
「これを使わなくて良かったです」
シモンさんとナカさんがそれぞれの武器を下ろす。
「とりあえずこれで終わりよ。あとはやってきそうな魔獣はいないみたい」
ミド・リーが状況終了を宣言。
「それにしても大きいな。これを運ぶのかよ」
「1頭につき1回ずつだね」
どう見ても1頭あたり50重以上はありそうだ。ならここで解体した方が楽だけれど……
「下の船着き場が使いやすいし解体に無難」
「堰堤のこっちは浄水だから汚せないぞ」
という事は結論として……
「仕方ない、運ぶか」
シンハ君の台詞が正解だ。仕方ない。
「こっちは血抜きをしながら体温を冷やして待っているわ。血が水に流れないようにすれば血抜きしてもいいよね」
「冷やすのならお任せ下さいな」
そんな訳で作業開始。まずは手近な1頭を荷車へ。
しかし重くてそのまま荷車へ持ち上げる事が出来ない。ローブで足を結わえてほぼ全員で引っ張ってなんとか載せる。
「一緒に行く。下で内臓を抜く処理をする」
「なら僕は上で出来るところまでやっておくよ」
「清拭魔法で水を汚さないようなんとかします」
そんな訳で搬送要員はシンハ君、ヨーコ先輩、俺の3人となった。最初はフールイ先輩も一緒だ。
荷物が重いので体力のあるシンハ君とヨーコ先輩は荷車の前。坂道で速度を抑えながらの搬送になる。
「重いぜ。強化魔法を使っても重いぜ」
「同意だな。私も強化魔法を使っているのだが足が滑りそうだ」
「頼むから滑らさないで下さい。洒落になりません!」
そんな事を言いながら何とか船着き場まで持っていく。
147
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる