病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第10章 便利道具と魔獣狩り ~冬休み合宿編・中~

第80話 魔石使用装置・再実験

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 休憩で回復した皆さんの食欲は思った以上だった。それなりにたっぷり用意したロースト鹿魔獣チデジカは見事完食。
 予想外だったのは麦飯にモツ煮込みをかけるという食べ方が好評だった事だ。そんな食べ方、少なくともウージナでは一般的ではないのだけれど。

「朝はもういいと思ったのに、また食べたくなるのは不思議だよな」

「また捕まえたら焼き肉やりたいね」

「刺身もおいしかったです」

「次は鹿魔獣チデジカのモツだな」

 この人たちの食欲は大丈夫なのだろうかと思う。あと胃袋はどうなっているのだろうか。毎回疑問と不安に襲われるのだ。

 さて、それはそれとして肉も野菜類もたっぷりあるので買い出しに行く必要はない。だから午後は魔石使用機械のテストその2を実施。

 ヨーコ先輩の魔法杖は魔法銅オリハルコンで新たに作り直し、試験用には別の杖を作った。構造そのものはヨーコ先輩の魔法杖とほぼ同じ。ただ魔石が入る場所があり、三脚の固定がアンカー仕様で、操作が遠隔スイッチなのが主な違いだ。
 なお前回の反省を踏まえ、片方の導線のうち半分は魔法の抵抗がありそうな錫、残りの一部は木炭を圧縮して固めた炭素棒にしてある。これが電気抵抗ならぬ魔法抵抗になって出力を抑えられるかなと思ったのだ。


 なお錫や木炭はシンハ君に買い出しに言って貰った。買い出し先は昨日魔法銅を購入した組合の店。

「金属関係はひととおり揃っていると思うぞ。あと木炭も金属加工に使うから扱っている筈だ」


 そうヨーコ先輩に教わったkら。


 他にもスイッチを改良。バネを使って接点がくっつくのは一瞬だけになるようにした。これで少しでも実用に近づいてくれるといいのだけれど。


 前回と同様、実験前に武装を全部並べておく。更に今回はミド・リーが付近の魔獣の状況を確認。


「今すぐ来そうな魔獣はいないけれどね。昨日と大分状態が変わっている。あの大きな猪魔獣《オツコト》を倒したせいで色々変化が出ているみたい」

「今日明日で襲ってきそうな魔獣はいないですよね」

「それは多分大丈夫」

「なら実験開始だ」

 また皆さん堰堤の陰に隠れる。何せ昨日の事故があった後だから慎重だ。
 そして俺はスイッチを押した。
 フォン。一瞬だけ風が出たような気がする。装置にも山の方にも特に影響は無さそうだ。

「大丈夫そうだな」

「もう一度確認します」

 スイッチを押し込むときにやはり接点が一瞬接触する。
 フォン。やはり一瞬だけ風が出た。

「これくらいなら連続で出しても大丈夫だと思うぞ」

「やってみます」

 バネスイッチでなく元々の押し込みスイッチを押してみる。
 フォーフォフォフォフォフォオー。風が出ているようだ。

「大丈夫だ。やや強い程度の普通の風だな」

 ヨーコ先輩は風魔法で空気の動きを見ることが出来る。その先輩が言うのだから大丈夫だろう。

「第一段階突破だね」

「ああ、これで実用化に近づいた」

 次は錫や炭素棒で作っている魔力抵抗を小型化して可変化する作業だ。その辺は後でシモンさんと相談だな。原理や大雑把な図面は頭の中で考慮済み。特に政策上の問題は無いだろう。

「これはどう使えるんだ?」

 シンハ君が聞いてきた。

「今はまだ実験装置で、暑い日に風を送るくらいだな。しかし実用化すれば用途は多いぞ。例えば船に積めば魔石で風を起こして動く船が出来る。風車を回せば蒸気機関と同じで機械の動力に使う事も出来るな」

「魔石を狙って魔獣の乱獲が起こるかもね」

 確かにその可能性もある。ただ自然環境保護は俺の範囲外だ。実用化しそうになったら偉い人に考えて貰おう。

「他の魔獣の魔石も使えるでしょうか」

 勿論それも考えている。

「鹿魔獣《チデジカ》の電撃魔法は発電機代わりになるかもしれない。猪魔獣《オツコト》の土魔法は魔法がどう出るか確認してみないとわからないな。いずれにせよここにいる内にある程度実験を済ませておきたい。研究室内だと危なそうだしさ」

 鹿魔獣《チデジカ》用は電圧計とか電流計、それに抵抗代わりの何かをつなげて試してみよう。その辺はこの後シモンさんと相談しながらの事になる。
 でもまずは猿魔獣《ヒバゴン》の魔石を完全に使いこなせる機械を作るのが先だろう。
 猿魔獣《ヒバゴン》は個体数が多いし比較的よく出てくるらしい。だから入手しやすいだろうし多少狩りまくっても問題は無いだろう。多分、きっと。

「とりあえず今日の実験はここまでで大丈夫です。後はまた装置を作ってからでいいかなと思います」

「なら討伐をやっておくか?」

 ヨーコ先輩の台詞にミド・リーが首を横に振った。

「今日は止めた方がいいわ。山の魔獣の動きが不安定に見える。一旦落ち着くのを待った方がいいと思うの。下手に刺激して暴走が起きたら危ないし」

「なら片付けて部屋に戻りましょうか」

 これはアキナ先輩だ。

「今日くらいはのんびりしても大丈夫でしょう。それに個人的にそろそろ甘い食べ物なんて食べたいなと思いまして。昨日色々仕入れましたけれどあの材料で何か出来るでしょうか」
「なら今日は私が作ります。焼き林檎なんてどうでしょう。バターたっぷりの」

「いいな、それは」

 そんな事を話しながら広げた魔法杖や武器をそれぞれ片付ける。
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