病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

文字の大きさ
100 / 266
第11章 冬合宿・おかわり ~冬休み合宿編・下~

第92話 これさえ無ければ美味しい夕食

しおりを挟む
 逆転器もつけ動作も確認した。速度調整も停止も逆転も出来るし、模型としてはほぼ完成。
 あとは複式機関にするかどうかだが、自動車用なら単式がいいだろう。若干効率は劣るがコンパクトな方がいい。
 強いて言えばピストンの排気でタービンを回し発電機を繋げるべきだろう。電気が使えれば色々便利なはずだ。

 そんな事をシモンさんと相談しているところで。
「夕ご飯ですよ」
 今回はナカさんが呼びに来た。

 行ってみるとこれまたこの世界で見た事が無い料理が並んでいた。多分小麦粉等の生地で出来た何かだとは想像出来るけれど。
 一番雰囲気が近いのは肉まんや蒸かしまんじゅうだろうか。

「昔いた場所の郷土料理。作ったのは久しぶり」

「私達も手伝ったんだよ」

 ミド・リーに手伝わせるとは危険な真似をしたものだ。過去の経験からそう思ってしまうけれど、もちろん口には出さない。

「これをこの汁につけてたべる。汁は酸っぱ辛いから少しだけで試して欲しい」

「中に何か入っているのか」

「それはお楽しみですわ」

 どうやら上にいた皆で作ったようだ。
 なお他には卵スープと野菜炒めがあるだけ。つまりメインはこの白い塊という訳だ。

 中に何が入っているのかはわからないのが非常に不安だ。何せミド・リーも手伝っていると聞いているし。
 しかしだからと言ってどれを誰が作ったかなんて聞けない。見かけもほとんど同じ感じだし。
 とりあえずひとつとって、皆が食べているのと同じように褐色のタレをつけて食べてみる。
 
 食べた瞬間理解した。
 これはおやきだ。しかも野沢菜の。
 勿論世界が違うから野沢菜のおやきと全く同じ訳では無い。表面は軽く焼いてあって中の皮部分は割とふかふか。そして具にチーズなんてのも入っているし菜っ葉も軽く肉といためてある。
 でも全体的な雰囲気は間違いなく野沢菜のおやきだ。菜っ葉の味までそっくりな気がする。

「美味いな、これは」

 俺としたことが夢中で1個食べてしまった。

「良かった」

 フールイ先輩は先輩だけれども微笑むと可愛い系。それなりに整った顔立ちで美人でもあるけれどそれ以上に可愛いという感じが強い。

「以前住んでいた北西部の鉱山町でよく作られていた料理。片手で食べられてお腹がふくれる」

「美味しいよね、これ」

「確かに」

 皆さん美味しそうな食べている。

 俺も2個目に挑戦。今度は大分違う味だったが、何処か微妙に懐かしい味。
 そう、これは餃子だ。肉の他タマネギやニラのような野菜がいい感じで入っている。じんわり肉汁が出る感じがなんとも言えず美味しい。

「これも美味しいな。中身だけじゃない。外側ももちもちとパリッがいい具合だ」

「蓋をして焼きながら蒸して、最後蓋を取って表面を焼いてパリッとさせる」

 だからもちもちとパリッが両立している訳か。ただ巨大な餃子だときっと途中で飽きるのだが、この皮のおかげで気分良く食べきれるのだ。
 優しい鶏出汁味の卵スープで口をリセット。胃袋の残容量と相談して、悩んだ末に3個目に挑戦。

 今度も味が違った。ピザ風というか、チーズと塩漬け肉とトマトの味。無論美味しくない訳はない。

「これは何種類の味があるんだ?」

「基本は2種類。辛菜塩漬の野菜炒めと挽肉の香味野菜和え。今回はそれに各自のオリジナルが入っている」

 つまり今食べたピザ風は誰かのオリジナルか。

「基本のもすごく美味しかったけれど、今食べているのも美味しいぞ。チーズと塩漬け肉とトマトの奴」

「あ、それ私が作った奴」

 えっ、ミド・リーが! 途端に不安になる。何か落ちがありそうで。
 何せ今までの実績がある。この中では僕の他に知っているのはシンハ君だけだろうと思うけれど。だから油断出来ない。

「ヌクシナでミタキが平たいパンに色々乗っけた料理を作っていたよね。あれをイメージしたの」

 それなら大丈夫か。そう思いつつ最後の一口分をかじって……うっ!!!
 口の中が炎爆発ファイアーした。慌ててスープで口の中をリセットするがまだ駄目だ! 水を、水をくれ!

 コップの水をがぶ飲みし、更に日常魔法で水を出して飲んで……

「ミド・リー、何を入れたんだ!」

「何ってこの前の料理と同じよ。チーズと塩漬け肉、輪切りトマトにちょっとあの辛い調味料を入れただけで」

 水では辛さが落ちない。それでもコップ5杯ほど飲んでやっと少し脳みそがまわる。
 そうだ、カプサイシンは脂溶性だ! 水では溶けない。かと言って脂を飲むなんてのは無理だ。なら……牛乳か!
 キッチンへダッシュで駆け込み食品ストックを漁る。あった、牛乳が。コップに入れて口の中へ。やっと落ち着いた。

「どうしたの、ミタキ?」

 張本人が俺にそう尋ねる。

「辛いのが端に偏っていたぞ! 大量に!」

「スプーン1杯分しか入れなかったけれど」

 タバスコをスプーン1杯分か。しかも今回入手した唐辛子の種類のせいかかなり辛めの、豆板醤みたいな辛さに仕上がった奴を。

「充分すぎる!」

「そうかなあ」

 やはりミド・リーの料理は信用できない。俺はそう再認識してしまったのだった。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

処理中です...