病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第13章 リゾートモードの筈なのに

第108話 面倒な御方

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「いや、バカンス中済まないね。やっぱりあの馬無し馬車の仕組みを詳しく見てみたくて、ついお邪魔させていただいたよ」

「こういう人なんです。大変申し訳ありません」

 ターカノさんがそう言いつつこっちに頭を下げる。しかしいいのだろうかそんな事を言って。相手はこれでも王子殿下なのだが。
 なお2人を乗せてきた馬車はそのまま帰って行った。帰りはどうする気なのだろう。送って行けという奴だろうか。

「ターカノの態度でわかるとおり、今回は完全に私的な用事として来た。だからあまりかしこまらないでくれ。そんな訳でまずは馬無し馬車、あれをもう少し説明してもらっていいかな」

「わかりました」

「それじゃ早速頼むよ」

 殿下はそんな軽い感じで蒸気自動車の方へ向かう。

 ◇◇◇

 主にサスペンションやハンドルあたりの事を説明した後、殿下とともに家の中へ。
 焼肉の後で惨憺たる状態だった部屋は綺麗に片付いていた。居残り組3人は大分頑張った模様だ。

 入ってすぐアキナ先輩がテーブルの方へ案内する。すぐに冷たい紅茶とフルーツをナカさんが持って来た。
 今回のフルーツはガンヤオという更に南から入ってきた種類だ。トゲトゲのある外側をナイフで開くと中に握りこぶしより少し大きめの実が4~5個入っている。ちょっと臭いが食べるとクリームパンのような味でかなり美味しい。
 実はそのまま手でとって食べられるので剥いてしまえば楽な果実だ。

「いいね、ガンヤオか。これはこっちに来ないと食べられないんだよな」

 殿下もご存じのようだ。

「すみません、本当に朝から押しかけてしまって。これはホン・ドの我が儘ですから本当お気にされなくて結構ですから」

 そしてターカノさんが相変わらず低姿勢。

「いえいえ、こちらこそお越しいただいて光栄でございます」

「本当、今回はホンの我が儘で私的な顔出しですから。新しい物を見るとつい気になってしまう性格なんです。玩具を見つけた子供の方がまだましな位ですから」

「厳しいな、今日は」

 殿下が苦笑を浮かべつつそんな事を言う。怒ってはいないようだなと少し安心。

「事実です。こちらに限らずあちこちでご迷惑をおかけしていますし、毎回振り回される私や兄の身にもなってください」

 いままでは無口だと思っていたターカノさんだが本日は王子に容赦ない。ところで今、兄という言葉が出てきた。と、言う事は……

「ターカノとシャクは双子で中等部以来のつきあいさ。シャクは今回は休暇中なんで王都に置いてきている」

 殿下があっさりそうネタばらし。なるほど、双子だったのか。そして双子で殿下の護衛というかお付きをしている訳か。
 何というか、大変だなと思う。

「無茶な魔法を使わされて疲労困憊状態なんです」

「確かにあれは悪かったな。1日でシンコ・イバシとクマノを回って王都へ戻るのは流石に申し訳なかった。シャクでなければ無理だったな」

 えっ!? 何だって!
 シンコ・イバシは西北部の指定都市で、クマノは北方山脈に近い北部運河沿いの街だ。どちらも王都オマーチから100離200km以上離れている。
 シンコ・イバシとクマノの間も50離100km以上はあるはずだ。それをそれだけ簡単に往復できるという事は……

「ターカノもシャクも移動魔法持ちさ。噂は聞いた事があるだろう。ただ噂は本当だったなんて他では言わないでくれよ」

 ちょっと待って欲しい。移動魔法持ちなんてのは超貴重な存在。そんなのここで話していい事では無いだろう。

「いいのでしょうか、そんな事をこんな処で話されても」

 皆の疑問を察してかアキナ参拝がさらっとそう尋ねてくれる。
 殿下は軽く頷いた。

「かまわないさ。どうせお互い秘密持ちだ。それにシャクとターカノがそうなのかはともかく、私が移動魔法持ちの補佐官を持っている事は公然の噂になっているしね」

 ターカノさんがふっとため息をついて口を開く。

「大変だったんですよ。一昨日はシンコ・イバシであった魔法制御学会に出た後、クマノで筆の品評会を見に行って、それから王都に戻ったのですから。シャク兄は私以上の移動魔法持ちですけれど、流石にそれだけ移動したら翌日はダウンです。今日もまだきっと寝ていると思います」

「学会とあればやはり王室の担当者として出なければならないだろう。会っておきたい参加者もいたしね」

「単に御自分が参加されたかっただけでしょう。確かに魔法制御学はこれから重要になってくる分野です。でも会長がいなければ開けない学会と言うわけでもありません。ましてやクマノの筆品評会は完全に趣味で行った以外の何物でも無いです」

 何だかな。そう思ったのは俺だけでは無いようだ。他の皆さんの表情をみればわかる。


「まあそんな訳でさ、今日はこの前あの馬無し馬車が何故あれだけ乗り心地がいいか聞くのを忘れたなと思って、つい尋ねて来てしまった訳だ。こっちにちょっとお願いしたい件も1つあったしね。
 ところであの馬無し馬車以外にも何か作業をしていたのかな。なにやら表に見慣れない作業道具らしいものが転がっていたけれど」

 あっ。ここでその話題が出てしまったか。
 俺達はまたもや顔を見合わせる。
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