病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第16章 新人到来

第134話 焼肉後のお話時間

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 夕陽はやっぱり綺麗だった。しかしテーブル上は荒れていた。
 一応皿の上とかテーブル上は清拭魔法で綺麗にはなっている。ただ皿や食器類は片付いていない。片付ける余力も無く皆さん倒れたからだ。

 結局残っているのは3人だけ。俺とタカス君、それにユキ先輩だ。
 他の皆さんは全滅してそれぞれの個室へ。フルエさんに至っては自分の部屋にすらたどり着けなかった。仕方ないなという顔をしたタカス君がひょいと抱えて部屋に入れて戻ってきた。彼も色々大変そうだ。

「この上は片付けた方がいいか?」

「いえ、明日起きたら皆でやるから大丈夫です。焼肉やるといつもこうですから」

 ふふっとユキ先輩が微笑む。

「どうかしたんですか」

「いや、あのアキナまで食べ過ぎで自室撤退なんて思うとね。随分と皆さんに気を許しているなと思って」

 でも残った俺以外の2人が新人というのも何だかなという感じだ。なるほどなという気もしないでもないけれど。ユキ先輩もタカス君も自分をコントロールしそうなタイプだから。

「ここは散らかっているし夕陽も沈みましたから下へ行きましょうか。さっき行った通り片付けは明日起きてからやりますから」

「そうですね」

 3人で下の部屋へ。
 灯りを4カ所にともせばここでもそこそこ明るい。話をするなら手頃な明るさだ。
 取りあえずサイダーとつまみ代わりのチーズクラッカーを出して延長戦開始。

「アキナ先輩とは古い知り合いなんですか」

「ええ」

 ユキ先輩は頷いて肯定する。

「同い年で従姉妹ですしね。以前は私もウージナにいたのでよく遊んだりもしてました。初等部に入る前に私がエビゾ・ノに引っ越してしまいましたけれど」

 なるほどな。
 この国の貴族は結構転勤がある。領地は変わらないが国での役職は結構変わるのだ。大体において偉い人ほど異動は多いらしい。

「でも先輩は何故ウージナの学校へ来られたのですか。家はエビゾ・ノですよね」

「なんとなくですね」

 ユキ先輩は俺達の方を見る。

「エビゾ・ノも悪くないのですけれどね。同じ処にずっといると息苦しくなるのです。今日と同じ明日がありその先に同じ明後日がある。そう感じると特に。少しでも動いて新鮮な空気を吸いたくなります。そうしないと窒息しそうに感じて。
 私独りあがいても何も変わらないのですけれどね。それでも明日は今日と少しは違って欲しいのです。だからちょっと環境を変えてみました。それでも全く知らないオマーチやシンコ・イバシではなく少しは知っているウージナにしてしまったのは私の甘えですね。でも今は悪くない選択だったかな、そう思っています」

 ちょっと置いてユキ先輩は続ける。

「アキナも私と同じです。同じように違う明日を探していた仲間でした。少なくとも私と一緒にいた頃は。彼女は私よりおとなしく見えるけれど内面は私より過激ですから。
 そのアキナが楽しそうにしている。前は2人でいつも焦ってじたばたしてその癖何も出来ないでいたんですけれどね。そういう場所なら私も来てよかったかな、そう思います。
 本当はもうひとつ大きな理由があるのですけれど、それは秘密です」

 それは秘密です、か。
 でも秘密より前の理由について俺は以前、同じような話をアキナ先輩から聞いた。ヨーコ先輩からもやっぱり聞いた。今日と違う明日が欲しいと。
 ヨーコ先輩は今はシンハ君と稽古したり勉強したり色々楽しそうだ。彼女はそこに違う明日を見つける事が出来たのだろうか。そしてアキナ先輩は今はどう思っているのだろうか。

 俺自身はそこまで焦りや息苦しさを感じた事は無い。この研究会だって元々は俺とシンハ君の金儲け活動が原点だった。それなりに稼いだ後でも色々作ったりここで皆といるのが楽しかったりで、そのまま続けている感じだ。
 そんなぬるい活動だけれどもアキナ先輩は楽しんでくれているのだろうか。変な誘惑は無くなったけれどそれは満足しているという事なのだろうか。それとも諦めただけなのだろうか。
 アキナ先輩は俺より年上だし頭の回転も上だ。だからアキナ先輩の気持ちを俺が想像しようと思っても限界がある。

「ミタキ君、何か難しい事を考えていますか?」

 俺ってそんなに表情が読みやすいのだろうか。
 先輩は続ける。

「大丈夫、アキナもここの皆も楽しんでいます。魔法を使わなくてもわかる程に。だからミタキ君は自分のやりたいようにやればいいだけです。今のところは」

 来たばかりの人にそう言われてしまった。まあ確かに2年先輩だし読心魔法を含む生物魔法の使い手なんだけれど。

「ところで今ちょうどタカス君がいるから話しますけれど、記述魔法ならあの脱臭壁掛けのように自動で動く魔法も作れますよね?」

 不意に自分の所に話が回ってきたのでタカス君は一瞬硬直。その後いつもの返事が出る。

「ああ」

「でしたら近くに人が来て、かつ周りが暗い場合は魔法が起動する。そんな記述魔法も作れますか」

「魔力がそれほど必要で無いものなら」

「なら大丈夫ですね」

 何の話なのだろう。

「ならこんな記述魔法を作れますか。
  ① 近くに人が来て
  ② 周りが見えないほど暗い場合
  ③ 灯火ライト魔法を発動する
という仕組み。
 具体的に言うと夜の廊下とかトイレとかにあれば便利かなと思ったんです」

 確かに便利かもしれない。
 普通は灯火ライト魔法を発動させて歩くのだけれど、日常魔法の灯火ライト呪文は一定区画を過ぎるたびにかけないとならない。具体的には部屋から廊下に出るとか、廊下からトイレに入った時とか。その辺の面倒が無くてすむ。
 日常魔法が使えない子供がいる家でも便利だ。

「出来る。簡単だが灯火ライトは光とともに発熱する。媒体素材は燃えない物で熱を通しにくい物がいい」

「ガラス板あたりなら大丈夫でしょう」

 ここからはそんな話になった。
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