172 / 266
第20章 それでも続く夏合宿
第163話 僕は歩くつれづれなるままに
しおりを挟む
翌朝は自由起床という事になった。勝手に起きて勝手に朝食を食べて勝手にうだうだする。理由は簡単で、肉祭りが楽しすぎて宴会状態が長引いてしまったが故である。
しかし俺は習慣的に早く目が覚めてしまう方だ。そんな訳で洗面した後、キッチンで昨日出来なかった事をしてみる。
具体的には米の炊飯だ。ほどよく炊けた米に昨日作ったトロトロの肉をのせる。まずは角煮から。うん、文句なくうまい。
次にゼリー状のトロトロが出た冷製肉。これもたまらん。味付けなしなのに肉の旨みがでて最高。
どっちも白いご飯と一緒にかっ込むともう最強だ。
朝からヘビーなものを食べていると糾弾しないでくれ。これが昨日からの心残りだったのだ。
さて朝食を食べたら暇になった。借りた漫画は全部読んでしまったしどうしようか。さしあたって作ったり考えたりするような物も無い。
多分皆さんはそう簡単に起きてこないだろう。食べ過ぎで動けない状態だろうから。ひたすら肉を詰め込んだものな、昨晩は。俺は絶対的に量を食べられないから朝になれば何とかなったけれど。
ちょっとその辺を散歩でもしようかな。他国部隊にいきなり襲われるなんて事ももう無いだろうし。
念の為万能魔法杖入りのディパックを背負って、テーブルに『その辺を散歩していきます』と書き置きを残して出かける。
考えてみれば俺独りで歩くのは珍しい。ウージナでも独りで歩くのは通学路くらいだしな。
いや通学路でさえも大体ミド・リーかシンハ君と一緒だ。理由は簡単、昔の俺は本当によく倒れたから。独りでふらふら出かけるなんて危ない真似は出来なかったのだ。
カーミヤへ蒸気ボートで出かけた時が一人歩きをした最初だろうか。あの街なら比較的平らだし人が多いから倒れても安全だし。
しかし今は体力こそ無いが一応健康体。その上万能魔法杖なんてものも装備している。だからこういう人が多くないリゾート地でも独りで散歩して問題無い。最悪道に迷ったら魔法で人のいる方向を調べて歩けばいいだけだ。
よし、思い切りよく一人歩きを満喫しよう。
そんな訳でまずは湖畔方面へ。ここはカヌーだのウィンドサーフィンだの湖で色々なスポーツが出来る。遊泳場もあるようだ。俺は泳げないからパスだけれど。
のんびり湖沿いに歩きながら色々と見て回る。船を漕いだりするのって楽しいのだろうか。俺には今ひとつそういった楽しみ方がわからない。
でも海で遊んだ時のボディボードもどきは楽しかった。あれと同じ延長線なのだろうか。
いつもならミド・リーやシンハ君にその辺を聞いたりする処だ。今日は1人だから誰にも話しかけられないけれど。
ただ1人だとその分周りの景色や音に敏感になれる気がする。鳥がさえずっている声もそよ風で木々が揺れる音も聞き分けられる。
高原だから風は涼しいけれど夏の太陽そのものの熱量は結構厳しい。直射日光は暑いけれど木陰に入ると確かに涼しい。
そうか、俺は今外にいるんだ。そう感じた。病室から見ていた窓の外に。
無論前世でもずっと病院にいたわけじゃ無い。入院していなかった時期もあるし長期入院中でも状態が安定していれば一時的に家に戻ったりする事もあった。だから病院の外にだって普通に出た事もあるわけだ。
でも俺が今感じたのはそういう事実とはまた別の感覚。どう表現していいのだろう。
厳密で正しい言い方で言えば、人工物のあまり無い人の手の入っていない自然に近い場所で人以外の気配の中にいる。俺は今そういう状況を感じているのだろう。
ただし気分としては前世で病室から見た外の世界。そんな気分なのだ。
勿論ここが完全な自然の中という訳じゃない。リゾート地に作った人工の散策路だ。
それでも気分は窓の外。あの頃憧れていた窓の外だ。
そう、俺は外に普通に出ることができるようになったんだな。それを何故かしみじみ感じた。
変な話だけれどやっと来ることが出来た。そんな感覚だ。
無論ここは日本でも地球でもない異世界だ。その上やはり心臓に欠陥があったけれど、魔法のおかげで何とかやってこれた。
ミド・リーなりシンハ君なりがいてくれたというのも大きい。2人のおかげで学校と通学路以外にも色々出かけられたようなものだから。
そして今は一人でこんな処にいたりも出来る訳だ。今の俺は一人でも自由に歩いて行ける。それが感慨深くてそして楽しい。
気がつくと湖を半周以上してしまった。前方向に商店街の端が見える。俺達の別荘とちょうど反対側の端だ。
ついでだから少し一人で見てみるとするか。俺はそっちに向かってみることにした。
◇◇◇
商店街で色々な店をのぞいてみて、そして俺は思った。ここの食べ物は健全すぎると。
例えばここの商店街の食料品店で売っているもの。野菜とか肉とかの材料や、出来合いのものでもちゃんとしたおかずの一品になるものが多い。
お菓子類もあるけれどケーキとかクッキーとかお上品な物ばかりだ。しかも輸入砂糖を使っているから値段もお高い。
折角の日常から外れたリゾートなのだ。もっと庶民的で身体に悪くて癖になりそうな物があってもいいと思うのだ。いわゆるジャンクフーズの類い。
ウージナではジャンクフードに近い扱いのものとしてフィッシュチップがあった。これは某国の屋台フードとは違いイワシや小鯖の内臓を取って二度揚げしたもの。
ただ材料が小魚というところが健全過ぎる。カルシウムが健康にいいですよとか言われそうだ。
そしてここリゾートなコイにはそれすら無い。もっとジャンクを、不健康を!
そんな物は健全な生活に必要ないなんてまとも過ぎる意見はパス。健全な生活にはたまには毒も必要だ。例えば酒とかタバコとかジャンクフードとか。
しかし俺は習慣的に早く目が覚めてしまう方だ。そんな訳で洗面した後、キッチンで昨日出来なかった事をしてみる。
具体的には米の炊飯だ。ほどよく炊けた米に昨日作ったトロトロの肉をのせる。まずは角煮から。うん、文句なくうまい。
次にゼリー状のトロトロが出た冷製肉。これもたまらん。味付けなしなのに肉の旨みがでて最高。
どっちも白いご飯と一緒にかっ込むともう最強だ。
朝からヘビーなものを食べていると糾弾しないでくれ。これが昨日からの心残りだったのだ。
さて朝食を食べたら暇になった。借りた漫画は全部読んでしまったしどうしようか。さしあたって作ったり考えたりするような物も無い。
多分皆さんはそう簡単に起きてこないだろう。食べ過ぎで動けない状態だろうから。ひたすら肉を詰め込んだものな、昨晩は。俺は絶対的に量を食べられないから朝になれば何とかなったけれど。
ちょっとその辺を散歩でもしようかな。他国部隊にいきなり襲われるなんて事ももう無いだろうし。
念の為万能魔法杖入りのディパックを背負って、テーブルに『その辺を散歩していきます』と書き置きを残して出かける。
考えてみれば俺独りで歩くのは珍しい。ウージナでも独りで歩くのは通学路くらいだしな。
いや通学路でさえも大体ミド・リーかシンハ君と一緒だ。理由は簡単、昔の俺は本当によく倒れたから。独りでふらふら出かけるなんて危ない真似は出来なかったのだ。
カーミヤへ蒸気ボートで出かけた時が一人歩きをした最初だろうか。あの街なら比較的平らだし人が多いから倒れても安全だし。
しかし今は体力こそ無いが一応健康体。その上万能魔法杖なんてものも装備している。だからこういう人が多くないリゾート地でも独りで散歩して問題無い。最悪道に迷ったら魔法で人のいる方向を調べて歩けばいいだけだ。
よし、思い切りよく一人歩きを満喫しよう。
そんな訳でまずは湖畔方面へ。ここはカヌーだのウィンドサーフィンだの湖で色々なスポーツが出来る。遊泳場もあるようだ。俺は泳げないからパスだけれど。
のんびり湖沿いに歩きながら色々と見て回る。船を漕いだりするのって楽しいのだろうか。俺には今ひとつそういった楽しみ方がわからない。
でも海で遊んだ時のボディボードもどきは楽しかった。あれと同じ延長線なのだろうか。
いつもならミド・リーやシンハ君にその辺を聞いたりする処だ。今日は1人だから誰にも話しかけられないけれど。
ただ1人だとその分周りの景色や音に敏感になれる気がする。鳥がさえずっている声もそよ風で木々が揺れる音も聞き分けられる。
高原だから風は涼しいけれど夏の太陽そのものの熱量は結構厳しい。直射日光は暑いけれど木陰に入ると確かに涼しい。
そうか、俺は今外にいるんだ。そう感じた。病室から見ていた窓の外に。
無論前世でもずっと病院にいたわけじゃ無い。入院していなかった時期もあるし長期入院中でも状態が安定していれば一時的に家に戻ったりする事もあった。だから病院の外にだって普通に出た事もあるわけだ。
でも俺が今感じたのはそういう事実とはまた別の感覚。どう表現していいのだろう。
厳密で正しい言い方で言えば、人工物のあまり無い人の手の入っていない自然に近い場所で人以外の気配の中にいる。俺は今そういう状況を感じているのだろう。
ただし気分としては前世で病室から見た外の世界。そんな気分なのだ。
勿論ここが完全な自然の中という訳じゃない。リゾート地に作った人工の散策路だ。
それでも気分は窓の外。あの頃憧れていた窓の外だ。
そう、俺は外に普通に出ることができるようになったんだな。それを何故かしみじみ感じた。
変な話だけれどやっと来ることが出来た。そんな感覚だ。
無論ここは日本でも地球でもない異世界だ。その上やはり心臓に欠陥があったけれど、魔法のおかげで何とかやってこれた。
ミド・リーなりシンハ君なりがいてくれたというのも大きい。2人のおかげで学校と通学路以外にも色々出かけられたようなものだから。
そして今は一人でこんな処にいたりも出来る訳だ。今の俺は一人でも自由に歩いて行ける。それが感慨深くてそして楽しい。
気がつくと湖を半周以上してしまった。前方向に商店街の端が見える。俺達の別荘とちょうど反対側の端だ。
ついでだから少し一人で見てみるとするか。俺はそっちに向かってみることにした。
◇◇◇
商店街で色々な店をのぞいてみて、そして俺は思った。ここの食べ物は健全すぎると。
例えばここの商店街の食料品店で売っているもの。野菜とか肉とかの材料や、出来合いのものでもちゃんとしたおかずの一品になるものが多い。
お菓子類もあるけれどケーキとかクッキーとかお上品な物ばかりだ。しかも輸入砂糖を使っているから値段もお高い。
折角の日常から外れたリゾートなのだ。もっと庶民的で身体に悪くて癖になりそうな物があってもいいと思うのだ。いわゆるジャンクフーズの類い。
ウージナではジャンクフードに近い扱いのものとしてフィッシュチップがあった。これは某国の屋台フードとは違いイワシや小鯖の内臓を取って二度揚げしたもの。
ただ材料が小魚というところが健全過ぎる。カルシウムが健康にいいですよとか言われそうだ。
そしてここリゾートなコイにはそれすら無い。もっとジャンクを、不健康を!
そんな物は健全な生活に必要ないなんてまとも過ぎる意見はパス。健全な生活にはたまには毒も必要だ。例えば酒とかタバコとかジャンクフードとか。
92
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる