病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第21章 やはり迷惑なあの御方

第170話 やっぱり迷惑なこの御方

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「それでは改めて君達に依頼しよう。この魔法杖と魔法銀《ミスリル》を使って有用な魔法杖を作ってくれ。出来れば色々な種類の魔法杖があった方がいいな。ただ1本は必ずターカノの魔法杖を基にしたもので頼む。
 こちらに渡して貰うのは見本の1本ずつでいい。魔法銀《ミスリル》が足りない分は事務局経由で言ってくれれば提供する。報酬はあの大型魔法杖と同じ形式だ。1本ずつの成功報酬とこちらで製造した魔法杖の個数分の加算になる」

「具体的な内容はこの通りだ」

 シャクさんが封筒入りの書類を取り出す。

「具体的に言うと契約代金が大金貨100枚《5000万円》、杖1種類ごとに大金貨10枚《500万円》。新型杖を1個作るごとに小銀貨10枚10万円の割当金だ」

「金額には問題ないですけれど質問がありますわ」

 うん、アキナ先輩が言いたいことはもう想像がつく。俺も言いたい。多分皆さん同じだと思う。

「失礼ですけれどこの流れを最初から計算していたのでしょうか?」

「計算はしていないさ。でも可能性として一番高そうだから一応事前に全部準備しておいた」

 殿下は悪びれず平然とそう言い切った。

「君達はまだいい」

 シャクさんが珍しく口を開く。

「私とターカノはこいつと学生時代からほぼ一緒に行動しているんだ。苦情も文句も大体こっちに来る。その苦労を察してくれ」

 ああああ、そうなのか。思わず同情してしまう。

「他人事ながらご愁傷様です」

 皆さん俺と同じ気分だろう。ただ張本人だけは胸を張ってこう言い切る。

「その分高い手当も出しているからな」

「会計部には『苦労手当』とか『胃痛手当』とか呼ばれています」

 なるほど。思わずうんうんと頷いてしまった。この性格は一部の人にとっては周知の事実らしい。
 色々納得。

 ◇◇◇

「何というか結局向こうの思い通りになっちゃったね」

 ミド・リーの台詞に俺は頷く。

「仕方無いさ。確かにこの国が住みやすいのは確かだ」

「実は教育が間違っていて、他の国はもっと進歩していて暮らしやすいかもしれませんよ」

「多分それは無い」

 これはタカス君だ。

「俺の記憶からもここの生活水準がかなり高い事がわかる。それに俺と逆に進歩している世界から来たミタキ先輩も不自由を感じていないようだ。ならおそらくここはこの世界でもかなり生活水準が高い筈だ」

「俺もそう思う」

 俺も同意して頷く。
 だいたい元々そんな疑義を出したユキ先輩すら表情からどう考えているかわかる。間違いなくこの国は住みやすい場所だ。確かに政治体制はやや古めだけれど効率を考えれば正しい。

「なら向こうの注文通り作りますか、魔法杖。形は杖じゃ無いですけれど」

「そうだね」

「あと材料的に注文分を作ってもまだ余裕があると思うぞ。全員の移動魔法用の杖を作っても」

「それは楽しそうですね。危険でもありますけれど」

「それくらいの役得は無いとね、やっぱり」

 無論報酬は報酬でいただくのだけれど。

 構造がわかっているものを作るのは難しくない。杖の長さを測りコンデンサーとコイルの容量を計算で求める。アンテナ部分の長さもそれに必要なコンデンサーやコイルも今までのものから計算で最適値がわかる。

 ただ俺自身は工作系魔法にシモンさん程慣れていない。だからその場で練成なんて出来ないが、それでも部品から一つ一つ作っていけば。

 お昼前に移動魔法用の杖というかウエストポーチが完成した。作成者の特権で早速テストしてみる。
 これは凄い! 意識するだけで研究室の外、更に遠くが自由自在に知覚できる。

 何処まで知覚可能か試してみる。ウージナ市街地は余裕。
 最初に合宿したイーツクシマの別荘は隣接区画に工場が出来ていた。新しい水飴製造工場のようだ。
 ドバーシのアキナ先輩別宅も大丈夫。アージナの夕陽が見える別荘も何とか。

 北側はどうだ。カーミヤの博物館は余裕。ヌクシナの砦も何とか。カナヤ・マの別荘はわかるけれど大分しんどい。この辺が限界のようだ。
 オマーチは完全に無理だった。


 流石に本職のターカノさん達程の威力は無いようだ。あの人達は殿下を連れた状態で平気でオマーチからやってくるからな。

 それでは試しに移動してみるか。誰もいないのを確認してからとりあえず家の俺の部屋へ。

 軽い浮遊感の後、景色が見慣れた部屋に切り替わった。うん移動成功。
 それでは家の誰にも気づかれないうちに研究室に戻ろう。あれ、戻れない! 研究室が見えない!

 少し考えて気がついた。研究院を含む学校は全体に移動魔法禁止の魔法陣が張ってある。出るのはともかく入るのはアウトという事だろう。

 仕方無い。研究院近辺の誰もいない場所へ移動してから歩いて戻ろう。そう思って付近で飛べそうな場所を探す。
 研究院どころか学校全体に移動魔法禁止の魔法陣が張ってあるようだ。これはまずい。早く戻らないと皆が心配する……

『ミタキ君、どうしましたでしょうか。何処にいますか?』

 ナカさんから伝達魔法が入った。良かった。これで事情を説明できる。

『移動魔法の実験で自宅に移動しました。学校は移動魔法で入れないようになっているので、何処か近くへ移動して歩いて戻ります』

『わかりました』

 さて学校の近くで誰もいない場所は……
 何とか学校近くの路地に誰もいない場所を見つけた。こそこそ移動して、歩いて橋を渡って研究院側の門から入る。
 学校の中へ入ってしまえば安全圏だ。何せこの魔法杖、バレたら色々危険過ぎるな代物。用心するに越したことは無い。

 玄関から入って廊下を通って研究室へ。

「もうミタキ、実験で出るなら言ってよ!」

 ミド・リーに怒られた。

「ごめん。移動魔法用のこれ、出来たから実験してみたんだけれどさ。学校内は移動魔法禁止の魔法陣が張ってあるのを忘れてた。おかげで戻ってこれなくなった」

「なら移動は出来た訳ね。どれどれ、試してみたい!」

 まあそうだよな。でも、だ。

「どうせならシモンさんに全員分量産して貰うのを先にした方がいいんじゃないか。現物があればすぐだろ」

「そうだね。ついでに言うと殿下に出すもののうち電気魔法用、風魔法用、工作魔法用、万能魔法用の魔道具は作っておいたよ。大きい杖の現物をあの万能杖と同じようにまとめるだけだったからね。ただ他の魔法用はミタキ君に作って貰わないと無理かな。何か色々計算があるようだし」

 現物の見本がある万能魔法用はともかくだ。他は以前作った魔法アンテナから解析して作ってしまった訳か。
 何かシモンさんのチート度合いが更に増しているような気がする。もう歩く有用危険知識の宝庫みたいなものじゃないのだろうか。

「じゃあ俺が作るのは地魔法、爆発魔法、熱魔法、生物魔法用か。結構めんどいな」

「でもその前にご飯にしましょう。ちょうどお昼ですから」

 そうだった。

「今日のお昼は私とフールイさん担当ですわ」

 何かと思ったらピザだった。手軽だし美味しいしちょうどいい。
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