病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第24章 冬がはじまるよ

第209話 2人の先輩の本音

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「ふふふふ、これが出たら魔力回復薬の市場が崩壊よ。まあ高価すぎてもともと市場なんて殆ど無かったけれどね」

「この杖を強化したおかげでここまで品種改良できました。水に浸かる環境であれば2か月あれば収穫できますし病害虫にも強い筈です」

「あとは減圧環境で水分を飛ばし一度粉末状にした後固めて錠剤にするだけだ。普通に水が沸騰する温度にすると魔力が減るから圧力を減らして極力低温で行う」

 おいおい。とんでもないだろうどっちにしろ。
 ただちょっとだけ不安になったので聞いてみる。

「そこまで丈夫だと漏れたら猛烈に蔓延って自然環境を制覇するなんてことは無いよね」

 侵略的外来種みたいにならないか不安になったのだ。

「ご心配なく。私が品種改良した植物はある特殊な栄養素を与えないと枯死するように操作してあります。この物質は自然には存在しませんし自然環境下では数日で分解しますのでまず問題ないです」

 なかなか高度な対策をとってあるんだな。

「つまりこれさえあれば魔法を使い放題なのだ」

 要はそういう事だよな。魔法使い用ドーピング薬だ。

「含有している物質は魔力の他は元のクレソンとほぼ変わらない。だから多分人体にも問題ないと思うわよ。私の魔法で解析しても毒性や習慣性は出てこなかったわ」

「殿下が聞いたら飛びつきそうだ。軍にも有用だろう」

「そしてターカノさん辺りがこれを飲まされつつこき使われて、結果私たちが恨まれるのねきっと」

 おいおい。ありうるだけに洒落にならない。

「どうしましょうか。私達の研究室では有用そうなものが出来たら副院長に直接報告しなければならないのですけれど」

「冬休み中だけれどいるの、副院長?」

「学内に戻れば連絡体制は確保されています」

 なら話は簡単だ。

「行ってこようよ。どうせそろそろタカモさんも戻ってくるでしょ。そうしたら私とフールイ先輩あたりでオマーチまで送るわよ。移動魔法ならすぐだしね。報告したら帰ってきて合宿続行。それでいいでしょ」

 ミド・リーの言うとおりだ。ここからオマーチまではそこまで遠くは無い。
 ほぼウージナまでと同程度。ミド・リーやフールイ先輩なら余裕で往復可能だ。

 そこでトントントンとドアノックの音。

「ただいまー」

 ヨーコ先輩の声。買い出し組だけかと思ったら解体組もいる。どうやら途中で合流したらしい。これはこれで好都合だ。

「ちょっと実は今……」

 そんな訳でミド・リーが今の状況を説明する。

「わかりましたわ。でもそれなら3人と3人、合計6人で行った方がいいでしょう。オマーチならうちの誰でも往復出来るでしょうから、誰か行きたい人はいらっしゃいますか」

 ミド・リーが真っ先に手を上げる。
 俺はどうしようかな。オマーチというと殿下の本拠地。なのでどうしても微妙に抵抗がある。しかも確か向こうの研究室は女子ばかりだと聞いているし。
 そう思ったところでナカさんとシモンさんが手を上げているのが見えた。定員は充足したようだ。

「それではこちらはのんびり待っていますわ」

「戻ってくるのでしたら準備は簡単でいいですね」

「この植物の実物と製品、あとは種くらいです」

「オマーチの場所はどの辺ですか」

「今説明します」

 そんな感じでちょっとだけ話あった後。

「では行ってきます」

 6人とも姿を消した。

「それにしても買い物に行っている間だけですのにそんなに研究が進んだのですね」

「ミド・リー先輩とミナミ先輩それぞれの魔法全開で凄い事になっていた。あとオマーチのキーンさんが魔法杖を効率化してくれたおかげで魔法操作がより楽になった」

「なるほど、そんな事があったのですね」

 アキナ先輩はそう行ってユキ先輩の方を見る。

「オマーチに行かないでこちらに来た事を後悔していませんか、ユキは」

 えっ、どういう事だ。

「元々ユキは向こうにスカウトされていたんですよ。あの3人のまとめ役兼調整役として」

 そう言われれば色々思い当たる事もある。殿下や向こうの副院長にもそれっぽい事を言われていたような記憶もあるし。

「ウージナの方が自由に出来ると思ったんです。アキナもいましたしね。向こうの3人には申し訳無いとも思いましたけれど。実際ウージナは特に管理される事もなく比較的自由にやってこれました。でも結局オマーチの皆さんと一緒に活動をすることになるとは思いませんでしたね。まだ冬合宿だけですけれど」

「一緒にしない方が良かったかしら」

「いえ、あの3人の為には良かったと思っています。ただ時代というか時流にはなかなか逆らえないようです。少しずつ包囲網を狭められている気もします」

「今の情勢にかたをつけるまではこの調子でしょうね。必要性も必然性もわかるのですけれど時にいらいらしてきますわ。私自身以外の誰かにコントロールされているようで」

 そこまで言った後、アキナ先輩ははっとした表情をする。しまった! という感じの表情だ。

「でも取りあえず今は冬合宿を楽しむ事に専念しましょう」

「昼食は久しぶりに私とアキナで作ってみます。乞うご期待」

 アキナ先輩、ユキ先輩ともいつもの調子に戻った。でも俺は何となく感じる。
 今の最後の方の台詞。あれがきっとアキナ先輩とユキ先輩の本音だろうと。
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