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第24章 冬がはじまるよ
第211話 企みの内容(上)
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キーンさんの最適化魔法、洒落にならない。今日の午後だけで俺は航空機エンジン史のウン十年分を飛び越えてしまった。
出来た模型エンジンは軸出力が大体20馬力位のターボプロップエンジン。重さ1重と小型で1分に大体600立法指の燃料を消費する。
これはまだエンジンの模型で動かしてさえいない代物だ。でも俺の鑑定魔法ではそういう性能があると判定されている。間違いなく学園祭で飛ばしたパルスジェット飛行機以上の性能が出る筈だ。
しかし疑問が生じたので聞いてみる。
「キーンさん。この魔法強烈に便利なんだけれど、昔は何に使った魔法なんだろう」
俺にはこの魔法を近代技術以外に使う場面を思いつかない。
「元は船、それも三角帆の帆船を作るときに出来た魔法だと聞いています。帆の形から船体の設計等まで最適な形を求めるうちに、鑑定魔法と計算魔法が変化したのではないかと父は言っていました」
なるほど。それにしても恐ろしい魔法だ。
「この魔法があれば文字通り歴史が変わるな。技術の進歩が恐ろしいくらいに短縮される」
「でも元になる形が無いと発動しないんです。例えば学園祭の時に飛ばしたあの模型飛行機のエンジンをこの魔法で最適化しても今の状態にはなりません。基本的な形が出来ていて初めて発動するんです」
「いずれにせよこれでエンジンの目処はついた。あとはカナヤ・マの別荘に行ったら実際に動かして確認してみよう」
ここの砦には俺たち以外の人もいるから騒音が出るエンジンの試運転は出来ない。カナヤ・マの温泉別荘なら村からも離れているからある程度なんでも大丈夫だ。
「これで人が乗って空を飛べる機械は理論上作れるんですね」
ユキ先輩の台詞に俺は頷く。
「少なくともエンジンはこの延長線で大丈夫です。あとは可変プロペラですがこれも多分キーンさんと先輩に手伝ってもらえば出来ると思います」
「実際に人が乗るにはどれくらいの大きさのエンジンが必要なんでしょうか」
キーンさんに聞かれて俺はちょっと考える。セスナの最小機種って確か軸出力100馬力のレシプロエンジンだったよな。
「出力的にはこの5倍程度必要です。でも実際の大きさはそこまで大きくはならないと思います」
実際はこのくらいの大きさならレシプロエンジンの方が燃費も効率もいいだろう。ただちょっと大型の機体が欲しくなった際は圧倒的にターボプロップの方が有利な筈だ。
あと俺自身がタービン系の機関の方が好みだというのもある。最初から動力を回転という形で得られる方が自然な感じがするのだ。だから最初に試作した蒸気機関もタービン形式だった訳で。
「何か僕が手を出す間も無くここまで出来ちゃったよね」
いつの間にか来ていたシモンさんがそんな事を言う。
「ごめん、ついつい夢中になって」
「でもこのエンジン凄いよね。力としてはこれ2~3個であの蒸気自動車の力より強くなるし。大きさはこんなに小さいのにね」
うわっシモンさん、今の台詞はひょっとして。
「シモンさんって鑑定魔法を使えたっけ」
「タカス君用の鑑定魔法魔道具を参考に作ったんだ。物を作るときにはやっぱりあると便利だしね」
シモンさんのチート度がまたまた上がった。
「この調子ですと春休みには人が乗れる飛行機も作れそうですわね」
アキナ先輩までやってきてそんな事を言っている。
「でも人が乗れる飛行機を飛ばすには飛行機本体以外にも色々準備が必要ですよ。
① 燃料を大規模に精製できる装置を作ったり
② 飛行機を発着させるために飛行場という大きな施設を作ったり
する必要がありますから」
「逆に言えば最低限その2つの条件が揃って飛行機の現物が出来れば人が空を飛べるのですね」
おいアキナ先輩。
「確かにそうですけれど、どちらもかなり大掛かりな施設ですよ」
「技術的に難しいのかしら」
「いえ、飛行機の現物に比べれば遥かに簡単ですけれど」
「それでは説明していただけるでしょうか」
以前蒸気ボートを作った時の事がよみがえる。あの時はまさかアキナ先輩が蒸気ボートの元になる軍用連絡船を調達してくるとは思わなかった。まさか今回も……
そう思いつつも俺は説明を開始する。
「まずは飛行場です。これは……」
安全を見込んで1離の滑走路を説明。エンジン性能から滑走路を造る場所は出来れば低地で風の少なく見晴らしのいい場所に作るよう希望。
更に水が蒸発する温度を基準にして原油の常圧蒸留装置の説明もする。
「でしたらミタキ君やシモンさんの手を借りればその常圧蒸留装置を原油採掘場のそばに作ることは出来ますか」
「出来ると思います。ただ装置を動かしている間は監視して操作する人が必要でしょうけれど」
「その辺の作業を誰か雇った人でも出来るようにすることは可能ですか」
「可能だと思います。ある程度魔力があれば記述魔法で制御することも可能でしょうから」
「もう一つ、ここの全員が乗ることが出来る位の飛行機を作ることは可能ですか」
何を考えているのだろうアキナ先輩。
「おそらく可能です。大きさはそれなりに大きくなりますけれど」
絶対何かを考えている。それもきっと俺たち全員が乗って空を楽しむとかそういう事ではない。
「あと大事な事を忘れていました。燃料を十分に積めば長距離、例えば1,000離を往復させることは可能でしょうか」
何だ、何を考えているアキナ先輩。
「可能な筈です。それだけの燃料を積んでエンジンその他機体の耐久性が確かなら」
「その場合1,000離を飛ぶにはどれだけ時間が必要でしょうか」
ターボプロップなら輸送機でも時速300kmくらいは余裕で出せるだろう。
「6時間強から7時間弱程度あれば片道は大丈夫ですね」
考えているというより間違いなく何かを企んでいる。念のために聞いてみよう。そう思ったところで。
「アキナ、何をするつもりなの?」
ユキ先輩が先に尋ねた。
「時計の針を進められるかな、そう思ったんです」
「技術的な意味で? それとも?」
「自由の為ですね」
どういう意味だろう。ユキ先輩には通じたようだけれど。
アキナ先輩の表情はいつもの微笑。俺にはそこから何かを読み取ることは出来ない。
出来た模型エンジンは軸出力が大体20馬力位のターボプロップエンジン。重さ1重と小型で1分に大体600立法指の燃料を消費する。
これはまだエンジンの模型で動かしてさえいない代物だ。でも俺の鑑定魔法ではそういう性能があると判定されている。間違いなく学園祭で飛ばしたパルスジェット飛行機以上の性能が出る筈だ。
しかし疑問が生じたので聞いてみる。
「キーンさん。この魔法強烈に便利なんだけれど、昔は何に使った魔法なんだろう」
俺にはこの魔法を近代技術以外に使う場面を思いつかない。
「元は船、それも三角帆の帆船を作るときに出来た魔法だと聞いています。帆の形から船体の設計等まで最適な形を求めるうちに、鑑定魔法と計算魔法が変化したのではないかと父は言っていました」
なるほど。それにしても恐ろしい魔法だ。
「この魔法があれば文字通り歴史が変わるな。技術の進歩が恐ろしいくらいに短縮される」
「でも元になる形が無いと発動しないんです。例えば学園祭の時に飛ばしたあの模型飛行機のエンジンをこの魔法で最適化しても今の状態にはなりません。基本的な形が出来ていて初めて発動するんです」
「いずれにせよこれでエンジンの目処はついた。あとはカナヤ・マの別荘に行ったら実際に動かして確認してみよう」
ここの砦には俺たち以外の人もいるから騒音が出るエンジンの試運転は出来ない。カナヤ・マの温泉別荘なら村からも離れているからある程度なんでも大丈夫だ。
「これで人が乗って空を飛べる機械は理論上作れるんですね」
ユキ先輩の台詞に俺は頷く。
「少なくともエンジンはこの延長線で大丈夫です。あとは可変プロペラですがこれも多分キーンさんと先輩に手伝ってもらえば出来ると思います」
「実際に人が乗るにはどれくらいの大きさのエンジンが必要なんでしょうか」
キーンさんに聞かれて俺はちょっと考える。セスナの最小機種って確か軸出力100馬力のレシプロエンジンだったよな。
「出力的にはこの5倍程度必要です。でも実際の大きさはそこまで大きくはならないと思います」
実際はこのくらいの大きさならレシプロエンジンの方が燃費も効率もいいだろう。ただちょっと大型の機体が欲しくなった際は圧倒的にターボプロップの方が有利な筈だ。
あと俺自身がタービン系の機関の方が好みだというのもある。最初から動力を回転という形で得られる方が自然な感じがするのだ。だから最初に試作した蒸気機関もタービン形式だった訳で。
「何か僕が手を出す間も無くここまで出来ちゃったよね」
いつの間にか来ていたシモンさんがそんな事を言う。
「ごめん、ついつい夢中になって」
「でもこのエンジン凄いよね。力としてはこれ2~3個であの蒸気自動車の力より強くなるし。大きさはこんなに小さいのにね」
うわっシモンさん、今の台詞はひょっとして。
「シモンさんって鑑定魔法を使えたっけ」
「タカス君用の鑑定魔法魔道具を参考に作ったんだ。物を作るときにはやっぱりあると便利だしね」
シモンさんのチート度がまたまた上がった。
「この調子ですと春休みには人が乗れる飛行機も作れそうですわね」
アキナ先輩までやってきてそんな事を言っている。
「でも人が乗れる飛行機を飛ばすには飛行機本体以外にも色々準備が必要ですよ。
① 燃料を大規模に精製できる装置を作ったり
② 飛行機を発着させるために飛行場という大きな施設を作ったり
する必要がありますから」
「逆に言えば最低限その2つの条件が揃って飛行機の現物が出来れば人が空を飛べるのですね」
おいアキナ先輩。
「確かにそうですけれど、どちらもかなり大掛かりな施設ですよ」
「技術的に難しいのかしら」
「いえ、飛行機の現物に比べれば遥かに簡単ですけれど」
「それでは説明していただけるでしょうか」
以前蒸気ボートを作った時の事がよみがえる。あの時はまさかアキナ先輩が蒸気ボートの元になる軍用連絡船を調達してくるとは思わなかった。まさか今回も……
そう思いつつも俺は説明を開始する。
「まずは飛行場です。これは……」
安全を見込んで1離の滑走路を説明。エンジン性能から滑走路を造る場所は出来れば低地で風の少なく見晴らしのいい場所に作るよう希望。
更に水が蒸発する温度を基準にして原油の常圧蒸留装置の説明もする。
「でしたらミタキ君やシモンさんの手を借りればその常圧蒸留装置を原油採掘場のそばに作ることは出来ますか」
「出来ると思います。ただ装置を動かしている間は監視して操作する人が必要でしょうけれど」
「その辺の作業を誰か雇った人でも出来るようにすることは可能ですか」
「可能だと思います。ある程度魔力があれば記述魔法で制御することも可能でしょうから」
「もう一つ、ここの全員が乗ることが出来る位の飛行機を作ることは可能ですか」
何を考えているのだろうアキナ先輩。
「おそらく可能です。大きさはそれなりに大きくなりますけれど」
絶対何かを考えている。それもきっと俺たち全員が乗って空を楽しむとかそういう事ではない。
「あと大事な事を忘れていました。燃料を十分に積めば長距離、例えば1,000離を往復させることは可能でしょうか」
何だ、何を考えているアキナ先輩。
「可能な筈です。それだけの燃料を積んでエンジンその他機体の耐久性が確かなら」
「その場合1,000離を飛ぶにはどれだけ時間が必要でしょうか」
ターボプロップなら輸送機でも時速300kmくらいは余裕で出せるだろう。
「6時間強から7時間弱程度あれば片道は大丈夫ですね」
考えているというより間違いなく何かを企んでいる。念のために聞いてみよう。そう思ったところで。
「アキナ、何をするつもりなの?」
ユキ先輩が先に尋ねた。
「時計の針を進められるかな、そう思ったんです」
「技術的な意味で? それとも?」
「自由の為ですね」
どういう意味だろう。ユキ先輩には通じたようだけれど。
アキナ先輩の表情はいつもの微笑。俺にはそこから何かを読み取ることは出来ない。
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