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第25章 加速する情勢
第217話 企みの内容(下)
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「でもそうなると、当然抑えられる前にスオーは動こうとするでしょう。違いますでしょうか」
これはユキ先輩だ。
「ああ。既に色々動きは起きている。今のところ予想の範囲内だし何とか押さえこんでいるけれどね。スオーだけじゃない。イーヨは既に動いた。具体的には大船団を出して制海権を取り戻そうとしたんだ。あの学園祭の少し後の話さ」
おいおいそんな話があったのか。ニュースにもなっていないぞ。
「結果は聞く必要も無いのでしょうね」
「ああ。イーヨの艦隊は撤退した。しばらくイーヨが海経由で仕掛けてくる事は無いだろう」
つまりアストラムに敗れたという訳か。ある意味当然の結果だろう。
イーヨが繰り出したのはおそらく縦帆を組み合わせた大型帆船に魔法使いを乗船させたもの。帆船としては大型で機動力も高いが、新型の蒸気船と比べると当然機動力に劣る。
しかもアストラムの戦闘船舶は射程が長い大型魔法アンテナを積んでいるのだ。敵が従来の私掠船よりは大型高性能とはいえ戦って負けるわけがない。
「陸の方も国境地帯は現在厳戒中さ。君達が知っている色々な新兵器を活用してね。スオーも諦めてくれればいいのだけれどさ。あそこは政治体制上、意思決定者が多い上に個々が責任を取らないからね。結果威勢が良くて自分達に口当たりの良い意見ばかり通りがちだ。何かしら必ず起こすだろうな。アストラム相手かブーンゴ相手かはわからないけれど」
中途半端な民主主義の欠点という奴だな。そう思った時だ。
アキナ先輩がにやり、と笑った。あの何か企んでいる方の笑みだ。
「なら更に事態を加速しそうなものがありますわ」
「アキナ!」
ユキ先輩の方を見てアキナ先輩は微笑む。
「この先の自由の為、こちらも切り札を出しましょう」
俺は気付いた。これがこの前アキナ先輩が企んでいた事だ。だからあえて俺から口に出す。
「切り札とはこの前出来るかどうか聞いた、大型で長距離を飛ぶ飛行機の事ですか」
アキナ先輩は頷いた。
「ええ、その通りです。10人強を7時間以内で1000離の地へと運ぶことが出来る、究極の交通機関ですわ」
一瞬場が静まり返る。
「ちょっと待ってください」
最初に口を開いたのはジゴゼンさんだった。
「飛行機とはあの学園祭で見せて頂いた、あの空を飛ぶ機械の事ですよね。あの時点ではまだ人を飛ばす事は出来ないとお伺いしたのですけれど」
「勿論まだ実物が出来たわけではありません。でも最大の難関だったエンジン部分についてはつい先日、ミタキ君とキーンさんで小型実証模型ではありますが完成させました」
「見せて頂けませんか、それを」
「ミタキ君、お願いしていいかしら」
「ええ」
物だけを移動させるのは人が移動するよりは簡単だ。
俺は寝るときと風呂以外はつけっぱなしの魔道具を起動。あのターボプロップエンジンの試作機を砦のリビングから取り出した。
今ではエンジン単体だけでなく4翅タイプのプロペラも付けてある。記述魔法によるピッチ可変タイプのプロペラで、形状は当然キーンさんの魔法によるものだ。
「鑑定魔法による試験までしかできていませんが、これが実証模型です。実際の機体ではこれを大型化したものを2組使います。燃料は学園祭で使用したものに少し潤滑用の油脂を混ぜる予定です」
ジゴゼンさんは食い入るように凝視した後。
「こんなに小さいのに私の蒸気自動車の半分近い出力があるんですね」
はあっとため息をついて続ける。
「確かにエンジンの問題はこれで解決していると認められます。無論実際の大きさのエンジンを試作する必要はありますけれど。それ以外の制御技術は基本的にあの学園祭の模型と同じ技術の延長線で足りるでしょうから」
一方で殿下はにやにやしている。
「まいったね。せっかく大型蒸気船と量産型の自動車を自慢しようと思ったら、こんなとんでもない物までだされるとはさ」
「本当にそれだけで呼ばれたのでしょうか」
「いやそろそろまた新しい何かが無いかな、なんて思っていなかったとは言わないけれどさ」
正直というか何というか……
食えない人というか面倒な人というか何というか……
勿論敵ではないのだけれど。
「さてそれじゃ話の続きだ。確か飛行機を実用化するにはエンジンの開発の他にも色々な設備が必要だ。学園祭でミタキ君はそう説明したよね。確か広い土地と燃料を作る施設だっけ」
殿下もよく覚えているな。その通りだ。
「ええ。飛行機が離着陸するための滑走路という施設が必要です。馬車道の石畳以上に平らで滑らかな直線路が1離程度。他に飛行機を保管したり整備したりする大きい倉庫が必要ですね。あとは燃料。液体の燃料を大量に必要としますから、原油を精製して燃料を得る施設が必要です。これは空気を汚しますのである程度人里離れた場所、または常に風下になってそこの風下には海しかないような場所がいいでしょう」
「なかなかに大掛かりな話だね。でもそういった事の調整こそ国王庁の出番だろうからね。ちょっと時間はかかるだろうけれど期待してもらっていいよ」
飛行機を作るのに難題だった事があっさり解決した。
でもこうなったら本当に作らなければならないんだよな、きっと。ふと気づくと色々プレッシャーが……
「さて、飛行機の話はこれくらいにしよう。他にもトモさんからとんでもない植物とそれから作った薬が出来ていると聞いているよ。そっちの話も聞いていいかな」
あの魔力回復・増強食品の話か。その辺の情報は本当に早いんだな。今は年末の休み時期だというのに。
これはユキ先輩だ。
「ああ。既に色々動きは起きている。今のところ予想の範囲内だし何とか押さえこんでいるけれどね。スオーだけじゃない。イーヨは既に動いた。具体的には大船団を出して制海権を取り戻そうとしたんだ。あの学園祭の少し後の話さ」
おいおいそんな話があったのか。ニュースにもなっていないぞ。
「結果は聞く必要も無いのでしょうね」
「ああ。イーヨの艦隊は撤退した。しばらくイーヨが海経由で仕掛けてくる事は無いだろう」
つまりアストラムに敗れたという訳か。ある意味当然の結果だろう。
イーヨが繰り出したのはおそらく縦帆を組み合わせた大型帆船に魔法使いを乗船させたもの。帆船としては大型で機動力も高いが、新型の蒸気船と比べると当然機動力に劣る。
しかもアストラムの戦闘船舶は射程が長い大型魔法アンテナを積んでいるのだ。敵が従来の私掠船よりは大型高性能とはいえ戦って負けるわけがない。
「陸の方も国境地帯は現在厳戒中さ。君達が知っている色々な新兵器を活用してね。スオーも諦めてくれればいいのだけれどさ。あそこは政治体制上、意思決定者が多い上に個々が責任を取らないからね。結果威勢が良くて自分達に口当たりの良い意見ばかり通りがちだ。何かしら必ず起こすだろうな。アストラム相手かブーンゴ相手かはわからないけれど」
中途半端な民主主義の欠点という奴だな。そう思った時だ。
アキナ先輩がにやり、と笑った。あの何か企んでいる方の笑みだ。
「なら更に事態を加速しそうなものがありますわ」
「アキナ!」
ユキ先輩の方を見てアキナ先輩は微笑む。
「この先の自由の為、こちらも切り札を出しましょう」
俺は気付いた。これがこの前アキナ先輩が企んでいた事だ。だからあえて俺から口に出す。
「切り札とはこの前出来るかどうか聞いた、大型で長距離を飛ぶ飛行機の事ですか」
アキナ先輩は頷いた。
「ええ、その通りです。10人強を7時間以内で1000離の地へと運ぶことが出来る、究極の交通機関ですわ」
一瞬場が静まり返る。
「ちょっと待ってください」
最初に口を開いたのはジゴゼンさんだった。
「飛行機とはあの学園祭で見せて頂いた、あの空を飛ぶ機械の事ですよね。あの時点ではまだ人を飛ばす事は出来ないとお伺いしたのですけれど」
「勿論まだ実物が出来たわけではありません。でも最大の難関だったエンジン部分についてはつい先日、ミタキ君とキーンさんで小型実証模型ではありますが完成させました」
「見せて頂けませんか、それを」
「ミタキ君、お願いしていいかしら」
「ええ」
物だけを移動させるのは人が移動するよりは簡単だ。
俺は寝るときと風呂以外はつけっぱなしの魔道具を起動。あのターボプロップエンジンの試作機を砦のリビングから取り出した。
今ではエンジン単体だけでなく4翅タイプのプロペラも付けてある。記述魔法によるピッチ可変タイプのプロペラで、形状は当然キーンさんの魔法によるものだ。
「鑑定魔法による試験までしかできていませんが、これが実証模型です。実際の機体ではこれを大型化したものを2組使います。燃料は学園祭で使用したものに少し潤滑用の油脂を混ぜる予定です」
ジゴゼンさんは食い入るように凝視した後。
「こんなに小さいのに私の蒸気自動車の半分近い出力があるんですね」
はあっとため息をついて続ける。
「確かにエンジンの問題はこれで解決していると認められます。無論実際の大きさのエンジンを試作する必要はありますけれど。それ以外の制御技術は基本的にあの学園祭の模型と同じ技術の延長線で足りるでしょうから」
一方で殿下はにやにやしている。
「まいったね。せっかく大型蒸気船と量産型の自動車を自慢しようと思ったら、こんなとんでもない物までだされるとはさ」
「本当にそれだけで呼ばれたのでしょうか」
「いやそろそろまた新しい何かが無いかな、なんて思っていなかったとは言わないけれどさ」
正直というか何というか……
食えない人というか面倒な人というか何というか……
勿論敵ではないのだけれど。
「さてそれじゃ話の続きだ。確か飛行機を実用化するにはエンジンの開発の他にも色々な設備が必要だ。学園祭でミタキ君はそう説明したよね。確か広い土地と燃料を作る施設だっけ」
殿下もよく覚えているな。その通りだ。
「ええ。飛行機が離着陸するための滑走路という施設が必要です。馬車道の石畳以上に平らで滑らかな直線路が1離程度。他に飛行機を保管したり整備したりする大きい倉庫が必要ですね。あとは燃料。液体の燃料を大量に必要としますから、原油を精製して燃料を得る施設が必要です。これは空気を汚しますのである程度人里離れた場所、または常に風下になってそこの風下には海しかないような場所がいいでしょう」
「なかなかに大掛かりな話だね。でもそういった事の調整こそ国王庁の出番だろうからね。ちょっと時間はかかるだろうけれど期待してもらっていいよ」
飛行機を作るのに難題だった事があっさり解決した。
でもこうなったら本当に作らなければならないんだよな、きっと。ふと気づくと色々プレッシャーが……
「さて、飛行機の話はこれくらいにしよう。他にもトモさんからとんでもない植物とそれから作った薬が出来ていると聞いているよ。そっちの話も聞いていいかな」
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