病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀

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第26章 冬合宿は続く

第224話 平穏な日々?

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 朝の魔獣解体時間。これが俺に対しては宝石採取の時間になってしまった。
 勿論やるのは俺一人ではない。魔獣解体に加わらないうちの何人かという形。

 そしてこの作業、何気に色々疲れる。歩いてしゃがんで冷たい水の中から掘り起こしての連続だから。
 川がため池に流れ込む一番手前側はほぼ採取が完了。少しずつ上流に向かって魔法アンテナを移動させていく。

 だいたいため池から20腕40m程上ったところで。

「今日はここまでにしましょう。向こうも解体が終わって受付に運び込みました」

 ユキ先輩から撤収命令が下る。
 本日の収穫はまあまあだ。そこまで多くも大きくも無いけれどそこそこ石が集まっている。

 他に珪砂が多そうな場所の砂もバケツ1個分採取しておいた。後程タカモ先輩に分別してもらって珪砂だけにして、ガラス繊維を作る予定。

 鉛バッテリー、出来れば18個セルで36ボルトくらいのを複数作りたい。前世で自動車用に使っていた一般的なバッテリーは12ボルトだけれど、あれだと電圧が低すぎてその分電流が多くなってしまう。
 配線の太さとかを考えれば電圧は高い方がいい。あまり高いと感電して危険だけれどさ。でもまずは二酸化鉛を蓄積しないと。そのために色々な材料を収集と。

 まずはタカモ先輩に頼み込む。

「すみません。これでガラス繊維を作りたいので珪砂だけを分けてもらえますでしょうか」

「何なら繊維を作るところまでやりましょうか。太さも任意に作れますけれど」

 それは非常にありがたい。

「なら2万分の1指0.001mm位の細さで、長さは10指20cm位でお願い出来ますか」

「わかりました。どうぞ」

 早い!もう言ったとおりの極細のガラス繊維が机上に乗せた紙の上に出来ている。

「凄いですね。こんなの真似できない」

「微細領域の工作系魔法は得意ですから。でもそれ、面白そうな素材ですね。後程自分でも研究してみていいですか」

「勿論です。なら半分置いていきます」

「ありがとうございます」

 こちらこそありがとうございますだ。俺ではあの工作系魔法用の杖を使ってもとても出来ない技だから。

 あとは二酸化鉛作成装置用の小型記述魔法杖を作って、鹿魔獣の魔石使用の発電装置を作って……
 よく考えたらまだガラス繊維はいらなかったかな。二酸化鉛が出来てからで十分だった。でもまあいいか。
 そう思ってふと気づく。アルミニウムをボーキサイト以外からも魔法で精錬できる魔法使いは、二酸化鉛くらい鉛から魔法で作れるのではないだろうか。

 疑問は解消するに限る。ということで鉛のインゴットを持って再びタカモ先輩へ。

「先輩再度すみません。この鉛を呼吸に必要な空気と化合させたものって作る事は出来ますか」

「ちょっと待ってください。やってみますね」

 やっぱり出来るのか。そう思ってみてみる。

「うーん、何種類か……私がここで作って安定しているのは4種類です。どれを使うのでしょうか」

 おいおい、本当に出来るのかよ……こんな魔法ありかよと思うけれど、あるのだから仕方ない。
 ちなみに出来ているのは一酸化鉛(薄い赤色)、二酸化鉛(黒褐色)、二酸化鉛(黒色)、四酸化三鉛(オレンジ色)だ。鑑定魔法によるとだけれど。
 鑑定魔法によると鉛蓄電池用には二酸化鉛の黒いものを選ぶべきだと出る。なのでタカモさんにお願いし、全部を二酸化鉛(黒色)にしてもらう。

「何かやっぱりとんでもない魔法ですね」

「でも作ったものをどう活用するか結果が見える方が面白いと思います。これは一体何に使うつもりなのでしょうか」

「電気を貯める蓄電池という装置を作るために使おうと思っています。電気はわかりますよね」

「ええ、私達の研究室にも発電機をつけてもらいましたから。あれはなかなか興味深い機械ですね。私が思ってもみない方法で液体の中身を分けたりすることが出来て面白いです。ものをかき混ぜたり照明にも使えたりしますし」

 この人の場合は電気とは電気分解をするための装置というのが第一義なのか。うーん、流石素材系魔法使い。
 ともあれ思ってもみなかった早さで鉛蓄電池の材料がそろってしまった。これはもう作るしかない。お昼ご飯までには試作品が作れるだろうか……

 ◇◇◇

 本当は魔力の蓄電池も欲しい処だ。でも魔力を化学反応で取り出すシステムなんて残念ながら想像つかない。コンデンサなら作れるけれどあれも長い時間貯めておける代物ではないし。
 だからとりあえずは素直な蓄電池を作る。

 実際工作系魔法を使えれば原理通りのものをほぼ理想的な状態に作成することが出来る。だから材質的に長年研究を重ねた前世の物にこそ劣るが、性能的には悪くない物が出来る訳だ。
 そんな訳で蓄電池は無事完成。あと記述魔法と魔石を使った充電装置だけれど電極作成用に作った記述魔法を改造すれば完成だ。
 残念ながらプラスチックなんてちょうどいいものが無いので陶器&ガラス繊維製。壊れないよう外側は木箱でガードする。

 無事蓄電池が出来たところで、
「ご飯ですよ」
となった。

 さて、午後は蓄電池を充電する傍ら元々の本題だった飛行機の設計だ。
 勿論最初は4人乗りの小型機から。いきなり大型機を設計するほどの度胸は俺にはない。鑑定魔法と工作系魔法を使いながら今まで考えた事を図に落とし込む。
 なおこの段階からはキーンさんにも参加してもらっている。彼女の最適化魔法は図面でも遺憾なく発揮されるようだ。

「ここはもう少しだけ膨らみを大きくした方がいいです」

「ここの角度はもう少し真っすぐで。強度的に辛い分はこの支柱を1指程太しましょう。重くなった以上に効果があります」

 こんな感じで横から指示をうけつつ図面を描いていく。
 ならキーンさんだけでやった方が早いんじゃないかって。何故かキーンさんの最適化魔法は修正する前の原型がないと働かないらしい。なので俺が描いては直しの繰り返しになる訳だ。
 なおシモンさんは水晶のカットとか宝飾品づくりの方へかかりきり。ヨーコ先輩一派は外でトレーニング。夕刻後の魔獣狩りまではこんな感じだ。

 そして夕刻後の魔獣狩りは基本的にフールイ先輩の穴作戦かユキ先輩の誘導作戦で終わる。
 なお夕刻の鉱石採取は魔石が勿体ないので取りやめになった。ただその代わり夕食当番が回ってくる。本日は俺とナカさん、タカス君にフルエさんの4人だ。

「そろそろ肉類に飽きてきたので目先を変えるのだ。揚げ物祭りなのだ」

 単にフルエさんが揚げ物が好きなだけという気もする。ポテトフライとかジャンクフードシリーズとか自分で作っていたし。

「でも焼き肉に飽きつつあるのは事実ですね。なら冷製や煮凝りも含めたサラダを作ります」

「主役は分厚いカツなのだ。タカス手伝うのだ」

 となると俺はスープ担当かな。ソーセージが大量にあるのでちょっと使ってみるか。
 特にミド・リー作の塩やハーブが多すぎる怪しい味の奴。あれはそのままでは酷い出来。だがスープにすれば結構おいしくなるかもしれない。

 塩辛いソーセージが思った以上に化けた夕食の後。本日はカードゲーム大会となった。なので前世からのパクリのカードゲームを投入する。
 色々用意してあるが本日は『壱』というカードゲームだ。中身はまあ、U●Oのパクリだけれど。
 ちらっと確認すると蓄電池の充電がほぼ終わったのでスイッチを切っておく。

 そんな感じで今日が、そして次の日が過ぎていく。討伐した魔獣の報奨金と魔石が貯まっていき、水晶やトパーズを使ったアクセサリーもかなり増えてきたところで。

「そろそろここの魔獣狩りも終わりですね」

 ユキ先輩から終了宣言が出た。

「そうね。今日はもう2離4km以内に魔獣がいなかったし」

「去年より数を獲ったからなあ。報奨金もそろそろ終わりだろう」

「向こうはどんな植物が生えているでしょう」

「温泉が楽しみだよね」

「いよいよ実物大エンジンを作れます」

 確かにあそこの温泉別荘なら村から離れているし、ターボプロップエンジンくらいなら試運転できるだろう。油田からも近いしその辺は楽しみだ。

 ただあそこは温泉と料理作り、研究くらいしかやる事が無い。街はちょっと離れているし小さいし、温泉のせいか魔獣もいないから。
 でもそうなると結果的に温泉からリビング付近まで水着族が徘徊する訳だ。そこが俺やタカス君の悩みどころ。
 まあウージナの研究室でも似たような状況になるときもあるけれど。出来るだけ下の制作室に逃げるようにしようと思う。
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