261 / 266
第29章 春の嵐
第252話 研究室の方針
しおりを挟む
目が覚めるとすぐ近くに天井。
ここは何処だとちょっと考えて気付く。仮眠室のカプセル風ベッドだ。治療室になっている会議室からここへと運び込まれた模様。
ミド・リーは大丈夫だろうか。慌てて小さい個室のカーテンを開ける。
外は明るい。影の感じからして午後2~3時と言ったところだろう。俺は運んであった靴をはいて仮眠室から出る。
研究室にいたのはシンハ君、ヨーコ先輩、タカス君、フルエさん。会議室前に机を並べて大きな四角にして座っていた。
いつもはシモンさんとフールイ先輩の超大型魔法アンテナが並んでいる処だ。
「大丈夫か、ミタキ」
シンハ君の台詞に俺は頷く。
「ああ。ミド・リーは?」
「今はナカさんとシモンさんが当番で看ている。アキナ先輩やユキ先輩とさっき交代したところだ」
そういう事か。ちょっとほっとする。
「今先輩達はミド・リーの治療情報を材料にここの当番の出席免除を認めろと交渉に行っている。行ったばかりだから戻るまでにはもう少しかかると思う。フールイはまだ寝ているな。大分無理をしたようだしさ」
これはヨーコ先輩だ。
「わかりました。念のためミド・リーの状態を見ていいですか」
「室内の無菌状態維持が大変だ。外から鑑定魔法で見た方がいい」
タカス君の台詞になるほどなと思ってそして気付く。彼がそれを知っているという事は、全員に情報共有がなされたという事か。
言われた通り会議室外から鑑定魔法で見てみる。先輩達と交代した時に比べ大分良くなっていた。
更に白血病細胞が減っている。貧血状態も大分改善されている感じだ。少なくともすぐには輸血が必要になる事も無いだろう。
「安心したと思うので飯でも食べるのだ。今回は私が作ったのだ」
フルエさんがキッチンに入ってお盆を持ってきた。結構いい匂いがしている。
「ありがとう」
見ると押麦の粥と玉子焼き、鶏照り焼き、菜っ葉炒めという優しめのメニューだ。
フルエさんの事だから揚げ物中心だろうと予想していた。しかしこっちの体調を考えたメニューにしてくれたようだ。
「食べながら今の状況を説明しよう。寝ている間に色々決めたからな」
「その為にシモン先輩がこんな物まで持ってきた」
タカス君の台詞で見てみると大型の掛け時計が壁に下がっている。これって確か正金貨1枚でコイで売っていた奴じゃないのだろうか。
そういえば俺だけでなくシモンさんも欲しがっていたけれど買っていたのか。そしてここに持ってきたのか。
ヨーコ先輩から説明が始まる。
「まず昨日夜、私の処にアキナ先輩からナカさん経由で連絡が入った。どうやらミタキ君とフールイさんがミド・リーさんの治療を研究室でしているらしい。状況次第では連絡を入れるがとりあえず明日は普通に登校して普通に研究室に来て欲しい。そんな内容だった。
この内容でここの全員に連絡が回った」
アキナ先輩は昨夜のうちから俺達の状況を知っていた訳か。おそらくはユキ先輩も。
気付いたのはむしろユキ先輩かもしれない。あの人は寮員だし生物系魔法でかなり遠くの気配を知ることが出来る。空間系魔法で色々やりにくい学園内の状況もわかるだろう。
ナカさん経由というのは遠隔で伝達魔法を使えるのがナカさんだけだからだ。強いて言えばユキ先輩も生物系魔法の応用で出来ない事は無いらしいが、かなり効率が悪いと言っていたし。
「それで授業が終わってここに集まってから、アキナ先輩から今の状況の説明を聞いた。ミタキ君とフールイさんが昨日からミド・リーさんの治療を続けていた事。アキナ先輩とユキ先輩がそれを引き継いだ事。ミド・リーさんの病気の概要と現在の状況及び治療方針。そんな処だ。
その後各自の魔法適性から担当と当番を決めて、治療をナカさんとシモンさんに引き継いだ。その後先輩2人で3半時間位で資料を作り、学園に公休と支援体制のお願いをしに行った処だ」
なるほど。全体の状況がやっと飲み込めた。
「すみません皆さん、色々手間かけさせてしまいまして」
「もっと早く俺達を頼れ、むしろそう言いたいけれどな」
これはシンハ君だ。
「でもまあタイミング的には仕方ないかもな。ただ俺はどうもこういった魔法治療には向いていないみたいだからさ。とりあえず授業のノート取りと学級連絡に専念することにする」
「私とシンハ、フルエはそんな訳でとりあえず授業とか学級連絡支援だな。あとミド・リーの治療だから男子のタカス君にも治療当番から外れてもらった。ただタカス君の魔法は万能だし切り札にもなる。だからいざという時は予備要員としてお願いするかもしれない」
タカス君には君付けでシンハ君には君無しなんだなと関係ない事をちょっと思う。本人は意識していない様だけれど。でもまあその辺はいつでもいいか。
「それでミタキ君の次の番は夕方6時から。それまでは栄養を取ってゆっくり休んでくれとの事だ」
すごくほっとした。それと同時に何か涙腺が緩んできた。何か昨日から涙腺が弱くなっているようだ。
いかんいかん、まだまだ事態は終わっていない。その辺は全てが終わった時にしよう。
ここは何処だとちょっと考えて気付く。仮眠室のカプセル風ベッドだ。治療室になっている会議室からここへと運び込まれた模様。
ミド・リーは大丈夫だろうか。慌てて小さい個室のカーテンを開ける。
外は明るい。影の感じからして午後2~3時と言ったところだろう。俺は運んであった靴をはいて仮眠室から出る。
研究室にいたのはシンハ君、ヨーコ先輩、タカス君、フルエさん。会議室前に机を並べて大きな四角にして座っていた。
いつもはシモンさんとフールイ先輩の超大型魔法アンテナが並んでいる処だ。
「大丈夫か、ミタキ」
シンハ君の台詞に俺は頷く。
「ああ。ミド・リーは?」
「今はナカさんとシモンさんが当番で看ている。アキナ先輩やユキ先輩とさっき交代したところだ」
そういう事か。ちょっとほっとする。
「今先輩達はミド・リーの治療情報を材料にここの当番の出席免除を認めろと交渉に行っている。行ったばかりだから戻るまでにはもう少しかかると思う。フールイはまだ寝ているな。大分無理をしたようだしさ」
これはヨーコ先輩だ。
「わかりました。念のためミド・リーの状態を見ていいですか」
「室内の無菌状態維持が大変だ。外から鑑定魔法で見た方がいい」
タカス君の台詞になるほどなと思ってそして気付く。彼がそれを知っているという事は、全員に情報共有がなされたという事か。
言われた通り会議室外から鑑定魔法で見てみる。先輩達と交代した時に比べ大分良くなっていた。
更に白血病細胞が減っている。貧血状態も大分改善されている感じだ。少なくともすぐには輸血が必要になる事も無いだろう。
「安心したと思うので飯でも食べるのだ。今回は私が作ったのだ」
フルエさんがキッチンに入ってお盆を持ってきた。結構いい匂いがしている。
「ありがとう」
見ると押麦の粥と玉子焼き、鶏照り焼き、菜っ葉炒めという優しめのメニューだ。
フルエさんの事だから揚げ物中心だろうと予想していた。しかしこっちの体調を考えたメニューにしてくれたようだ。
「食べながら今の状況を説明しよう。寝ている間に色々決めたからな」
「その為にシモン先輩がこんな物まで持ってきた」
タカス君の台詞で見てみると大型の掛け時計が壁に下がっている。これって確か正金貨1枚でコイで売っていた奴じゃないのだろうか。
そういえば俺だけでなくシモンさんも欲しがっていたけれど買っていたのか。そしてここに持ってきたのか。
ヨーコ先輩から説明が始まる。
「まず昨日夜、私の処にアキナ先輩からナカさん経由で連絡が入った。どうやらミタキ君とフールイさんがミド・リーさんの治療を研究室でしているらしい。状況次第では連絡を入れるがとりあえず明日は普通に登校して普通に研究室に来て欲しい。そんな内容だった。
この内容でここの全員に連絡が回った」
アキナ先輩は昨夜のうちから俺達の状況を知っていた訳か。おそらくはユキ先輩も。
気付いたのはむしろユキ先輩かもしれない。あの人は寮員だし生物系魔法でかなり遠くの気配を知ることが出来る。空間系魔法で色々やりにくい学園内の状況もわかるだろう。
ナカさん経由というのは遠隔で伝達魔法を使えるのがナカさんだけだからだ。強いて言えばユキ先輩も生物系魔法の応用で出来ない事は無いらしいが、かなり効率が悪いと言っていたし。
「それで授業が終わってここに集まってから、アキナ先輩から今の状況の説明を聞いた。ミタキ君とフールイさんが昨日からミド・リーさんの治療を続けていた事。アキナ先輩とユキ先輩がそれを引き継いだ事。ミド・リーさんの病気の概要と現在の状況及び治療方針。そんな処だ。
その後各自の魔法適性から担当と当番を決めて、治療をナカさんとシモンさんに引き継いだ。その後先輩2人で3半時間位で資料を作り、学園に公休と支援体制のお願いをしに行った処だ」
なるほど。全体の状況がやっと飲み込めた。
「すみません皆さん、色々手間かけさせてしまいまして」
「もっと早く俺達を頼れ、むしろそう言いたいけれどな」
これはシンハ君だ。
「でもまあタイミング的には仕方ないかもな。ただ俺はどうもこういった魔法治療には向いていないみたいだからさ。とりあえず授業のノート取りと学級連絡に専念することにする」
「私とシンハ、フルエはそんな訳でとりあえず授業とか学級連絡支援だな。あとミド・リーの治療だから男子のタカス君にも治療当番から外れてもらった。ただタカス君の魔法は万能だし切り札にもなる。だからいざという時は予備要員としてお願いするかもしれない」
タカス君には君付けでシンハ君には君無しなんだなと関係ない事をちょっと思う。本人は意識していない様だけれど。でもまあその辺はいつでもいいか。
「それでミタキ君の次の番は夕方6時から。それまでは栄養を取ってゆっくり休んでくれとの事だ」
すごくほっとした。それと同時に何か涙腺が緩んできた。何か昨日から涙腺が弱くなっているようだ。
いかんいかん、まだまだ事態は終わっていない。その辺は全てが終わった時にしよう。
113
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる