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第2章 学生会長の野望
9 こんな用途は聞いていない!
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夕方6時、学生会幹部3名が工房にやってきた。
「思った以上に進んでるんじゃない」
由香里姉の言う通り、当初の予想以上のペースで改造や製造が進んでいる。
ポンプの方は、香緒里ちゃん一人でほぼ完成させた。
あとは俺が作る、アルデュイーノ改造の制御部分だけだ。
自動車の方も、大きい工作部分は今日で終わった。
後は細かい部分と制御系、そして魔法を香緒里ちゃんにかけてもらうだけ。
「この分だと金曜夕方には終わるでしょうかね」
「なら土曜日には思い切り試運転できるな」
月見野先輩と鈴懸台先輩の言葉に、何かが気になったので尋ねてみる。
「試運転って車の」
「それとポンプね」
これは由香里姉だ。
車の試運転はわかる。しかしポンプは何に使うのだろう。
実はポンプの方は作業を香緒里ちゃん任せにしていた。
だから仕様書をちゃんと読んでいない。
よって何に使うのか、用途の予想も出来ない。
「まあ期待していて頂戴」
そう言って由香里姉がウィンクする。
困った事にそういう仕草、なかなか決まっているのだ。
◇◇◇
そして金曜日の午後4時過ぎ。
予定通り、仕上げ作業と工房の片付けを含めて作業が終了。
俺が最後の点検をしている間に、香緒里ちゃんが先輩方を呼びに行く。
やってきた学生会幹部3人が、それぞれ荷物を持っているのが気になった。
香緒里ちゃんも何故か、スポーツバックを持ってきている。
「ポンプも車に積んでね。予定より早いけれど今日実際に使ってみたいわ」
そう言われたので、車内の空いているところにポンプも置く。
他にPVC製らしい水色の大きい物体とか色々持ち込んできた。
何をするのか俺には想像がつかない。
皆で乗り込みシャッターを開け、キャンピングカーが走り始める。
工房から出た所で一度止めて、工房のシャッターを閉じて鍵をかけた後、運転方法を由香里姉に説明開始。
「ハンドルの上部分を手前方向に引けば上昇で、押し込めば下降です。車の姿勢は着地時以外は水平で固定。飛行中にアクセルを踏めば前進でハンドルで左右に曲がります」
ハンドルのチルト機構を改造して操作系を作ったから、見かけは普通の車とほぼ同じ。
飛行時の運転方法は、慣れれば直感的に動かせるだろう。
フェイルセーフは二重以上にかかるようにしてるので大丈夫だ。
「地上を走ったまま飛行へ移行は出来るの」
「向きが合っていて邪魔がなければそうしてください。その方が移動エネルギーを稼ぎやすいです」
「OK。だいたいわかったわ」
基本的に由香里姉は飲み込みが早い。
基本スペックと外見は大変に優秀なのだ。
一部性格と審美眼と趣味が間違っているだけで。
車は港と反対の方向に向けて走り始める。
「何処へ向かうんですか」
「飛行場の先よ」
少し気になった事があるので念のため注意しておく。
「飛行場の上は間違っても飛ばないでくださいね。自衛隊に怒られます」
「大丈夫、田奈教官の苦情の件は学生会にも情報が入っているから」
飛行場管制や自衛隊から苦情が来た件については把握済みだったようだ。
考えてみれば、一般学生より学生会の方がそういった情報が入りやすいのは当然。
なら気にしなくてもいいだろう。
空港事務所が見える最後の直線で加速して、そのまま空へ。
ただあまり上昇はせず、台地の形に沿って下降し、そのまま海に面した崖沿いを空中飛行する。
たどり着いたのは、小さな砂浜の入江だった。
「暗くなり始めているから準備は急いで。ミドリとアカリはプールお願い。香緒里と修はポンプ持ってきて」
ここでプールを作って泳ぐのだろうか。
あと1時間もしないうちに暗くなるだろうと思うのだが。
泳ぐなら南浜という、もう少し街に近くて広い浜辺があるのだけれど。
俺と香緒里ちゃんは、車内から持ってきたポンプの給水側を海中へ放り投げ、吐出口を砂浜へ。
その間に先輩2人は水色PVCを手慣れた感じで組み立ててプールを作る。
組み立てプールと言っても結構大きい。
直径が6m近く、深さも目いっぱいだと1mを超えるという大きさだ。
ポンプの吐出口をプール内へ入れ、そして由香里姉が魔力を通す。
由香里姉の魔力は流石で、凄まじい勢いでお湯が吐出口から湧き出す。42℃の適温のお湯が。
え、これってひょっとして。
「これなら20分もしないうちに使えるかな。最初はちょっとぬるいかもしれないけれど」
「最悪どうしてもぬるければ、私の魔法剣で熱するから大丈夫だ」
俺はこれが何か察してしまった。
42℃といえば、風呂の適温。
つまりこれは露天風呂だ。
しかし水着を用意しているという話は聞いていない。
という事は……
ここなら近くに町も航路も無い。
どこからも見られる事はない。
ただひとつ、俺の目を除けばだが。
「大丈夫。修の分のタオルは私が用意したわ」
「ってまずいでしょ。俺は車の中にいますよ」
仮にも思春期の男女なのだ。
「誰もまずいと思わないと思うわ。昔は香緒里も一緒に3人でよく一緒に風呂に入ったじゃない」
風呂であることが確定してしまった。
「それって10年以上前の話じゃないですか」
「10年じゃない。7年と3ヶ月、私が中学に入る直前までよ」
「そんなに遅くまで、一緒にお風呂にはいってたのか?」
鈴懸台先輩が尋ねる。
「ええ、親にそれとなく言われて、それ以上は諦めたけどね」
頼む由香里姉、やめてくれ。
その辺は黒歴史だ。
年齢的にに思春期まっただ中の今は、特に。
「それに修が一緒に入る事に問題があると思う人、いる?」
由香里姉の問いかけに、先輩方や香緒里ちゃんがお互いを見やる。
頼む! 先輩方か香緒里ちゃん。
世間の常識と良識を持って、由香里姉を説得してくれ。
「うーん、戦闘系だと結構男子の裸に近い姿も見慣れているから、問題ないかな」
「私は魔法医師ですから。やはり殿方の裸も見慣れていますし問題ないですわ」
「ちょっと恥ずかしいけれど、修兄ならかまわないです」
あ、この人達、常識ぶっち系だ。
頼りにならない。
よろしい、ならば逃走だ。
南国の海はそれ程冷たくない。
1kmも泳げば港手前の浜に辿り着けるだろう。
俺は逃げようとするが、その前に由香里姉の手が伸びて俺の肩をつかむ。
「ここで賢い修君に質問です。魔法工学科の修君は攻撃魔法科の精鋭を前にしています。ここから逃げ延びる可能性と捕まる可能性、掴まって剥かれる可能性を考えると、どのような行動を取るのが正解でしょう」
逃がさない、逃げると剥くぞという脅迫だ。
「ついでに言うと、私は氷雪魔法を使って海の上を凍らせて走れるわ。まあ5km位は大丈夫かな」
どこの漫画の大将だそれは。あれは氷上を自転車走行だっけか。
でもとりあえず理解した。
俺に勝ち目も逃げ道も無いことに。
◇◇◇
「風呂はいいね。風呂は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないか? 修君」
かなり古いアニメで聞いたような台詞を、鈴懸台先輩が言っている。
しかしその原典を思い出している余裕など、俺にはない。
風呂として持ってきたプールは円形。
普通に端に背中を向けて入っていると、他の全方向が見えてしまう。
由香里姉も鈴懸台先輩も月見野先輩も香緒里ちゃんも。
湯船にタオルを浸けるのは無粋だそうなので、隠すものは何もない。
髪を濡らさないように、由香里姉と月見野先輩が髪をまとめてタオルを巻いているだけ。
身体部分は全く隠れていない。
しかもまだ陽が落ちていないので明るい。
「そう言えば7年3ヶ月前、この前一緒に風呂に入った時の修は可愛かったな。由香里姉ちょっとおっぱい出てきたねと言って私のおっぱいもんだりして。あと私のおっぱいもんだあと、香緒里の胸さわってまだ硬いねと言ったり、一緒にお風呂に入るとよくおちんちん大きくなるけれど何故かなと私に聞いたりして」
由香里姉、本人も覚えていない黒歴史を語るのはやめてくれ。
当時は何も知らない小学4年生だったんだ。
「そうですよ、確かその時由香里姉と私の股間触って、やっぱり2人とも大きくならないね何でだろうって言ったんです。まだ憶えています」
おい香緒里ちゃんまで。
「何なら私の胸、今はもっと大きくなったからもんで確認してみる」
「ついでに修兄のも大きくなったか確認してあげるです」
こら調子に乗るな、お前ら。
確かに大きくなっているけれど確認しないでくれ。
だが真の地獄はきっとまだ先だ。
風呂にはいつか上がる時間がくる。
大きくなったものを衆目にさらしてしまう瞬間が。
その時こそどうしようか。
俺の悩みは尽きない……
「思った以上に進んでるんじゃない」
由香里姉の言う通り、当初の予想以上のペースで改造や製造が進んでいる。
ポンプの方は、香緒里ちゃん一人でほぼ完成させた。
あとは俺が作る、アルデュイーノ改造の制御部分だけだ。
自動車の方も、大きい工作部分は今日で終わった。
後は細かい部分と制御系、そして魔法を香緒里ちゃんにかけてもらうだけ。
「この分だと金曜夕方には終わるでしょうかね」
「なら土曜日には思い切り試運転できるな」
月見野先輩と鈴懸台先輩の言葉に、何かが気になったので尋ねてみる。
「試運転って車の」
「それとポンプね」
これは由香里姉だ。
車の試運転はわかる。しかしポンプは何に使うのだろう。
実はポンプの方は作業を香緒里ちゃん任せにしていた。
だから仕様書をちゃんと読んでいない。
よって何に使うのか、用途の予想も出来ない。
「まあ期待していて頂戴」
そう言って由香里姉がウィンクする。
困った事にそういう仕草、なかなか決まっているのだ。
◇◇◇
そして金曜日の午後4時過ぎ。
予定通り、仕上げ作業と工房の片付けを含めて作業が終了。
俺が最後の点検をしている間に、香緒里ちゃんが先輩方を呼びに行く。
やってきた学生会幹部3人が、それぞれ荷物を持っているのが気になった。
香緒里ちゃんも何故か、スポーツバックを持ってきている。
「ポンプも車に積んでね。予定より早いけれど今日実際に使ってみたいわ」
そう言われたので、車内の空いているところにポンプも置く。
他にPVC製らしい水色の大きい物体とか色々持ち込んできた。
何をするのか俺には想像がつかない。
皆で乗り込みシャッターを開け、キャンピングカーが走り始める。
工房から出た所で一度止めて、工房のシャッターを閉じて鍵をかけた後、運転方法を由香里姉に説明開始。
「ハンドルの上部分を手前方向に引けば上昇で、押し込めば下降です。車の姿勢は着地時以外は水平で固定。飛行中にアクセルを踏めば前進でハンドルで左右に曲がります」
ハンドルのチルト機構を改造して操作系を作ったから、見かけは普通の車とほぼ同じ。
飛行時の運転方法は、慣れれば直感的に動かせるだろう。
フェイルセーフは二重以上にかかるようにしてるので大丈夫だ。
「地上を走ったまま飛行へ移行は出来るの」
「向きが合っていて邪魔がなければそうしてください。その方が移動エネルギーを稼ぎやすいです」
「OK。だいたいわかったわ」
基本的に由香里姉は飲み込みが早い。
基本スペックと外見は大変に優秀なのだ。
一部性格と審美眼と趣味が間違っているだけで。
車は港と反対の方向に向けて走り始める。
「何処へ向かうんですか」
「飛行場の先よ」
少し気になった事があるので念のため注意しておく。
「飛行場の上は間違っても飛ばないでくださいね。自衛隊に怒られます」
「大丈夫、田奈教官の苦情の件は学生会にも情報が入っているから」
飛行場管制や自衛隊から苦情が来た件については把握済みだったようだ。
考えてみれば、一般学生より学生会の方がそういった情報が入りやすいのは当然。
なら気にしなくてもいいだろう。
空港事務所が見える最後の直線で加速して、そのまま空へ。
ただあまり上昇はせず、台地の形に沿って下降し、そのまま海に面した崖沿いを空中飛行する。
たどり着いたのは、小さな砂浜の入江だった。
「暗くなり始めているから準備は急いで。ミドリとアカリはプールお願い。香緒里と修はポンプ持ってきて」
ここでプールを作って泳ぐのだろうか。
あと1時間もしないうちに暗くなるだろうと思うのだが。
泳ぐなら南浜という、もう少し街に近くて広い浜辺があるのだけれど。
俺と香緒里ちゃんは、車内から持ってきたポンプの給水側を海中へ放り投げ、吐出口を砂浜へ。
その間に先輩2人は水色PVCを手慣れた感じで組み立ててプールを作る。
組み立てプールと言っても結構大きい。
直径が6m近く、深さも目いっぱいだと1mを超えるという大きさだ。
ポンプの吐出口をプール内へ入れ、そして由香里姉が魔力を通す。
由香里姉の魔力は流石で、凄まじい勢いでお湯が吐出口から湧き出す。42℃の適温のお湯が。
え、これってひょっとして。
「これなら20分もしないうちに使えるかな。最初はちょっとぬるいかもしれないけれど」
「最悪どうしてもぬるければ、私の魔法剣で熱するから大丈夫だ」
俺はこれが何か察してしまった。
42℃といえば、風呂の適温。
つまりこれは露天風呂だ。
しかし水着を用意しているという話は聞いていない。
という事は……
ここなら近くに町も航路も無い。
どこからも見られる事はない。
ただひとつ、俺の目を除けばだが。
「大丈夫。修の分のタオルは私が用意したわ」
「ってまずいでしょ。俺は車の中にいますよ」
仮にも思春期の男女なのだ。
「誰もまずいと思わないと思うわ。昔は香緒里も一緒に3人でよく一緒に風呂に入ったじゃない」
風呂であることが確定してしまった。
「それって10年以上前の話じゃないですか」
「10年じゃない。7年と3ヶ月、私が中学に入る直前までよ」
「そんなに遅くまで、一緒にお風呂にはいってたのか?」
鈴懸台先輩が尋ねる。
「ええ、親にそれとなく言われて、それ以上は諦めたけどね」
頼む由香里姉、やめてくれ。
その辺は黒歴史だ。
年齢的にに思春期まっただ中の今は、特に。
「それに修が一緒に入る事に問題があると思う人、いる?」
由香里姉の問いかけに、先輩方や香緒里ちゃんがお互いを見やる。
頼む! 先輩方か香緒里ちゃん。
世間の常識と良識を持って、由香里姉を説得してくれ。
「うーん、戦闘系だと結構男子の裸に近い姿も見慣れているから、問題ないかな」
「私は魔法医師ですから。やはり殿方の裸も見慣れていますし問題ないですわ」
「ちょっと恥ずかしいけれど、修兄ならかまわないです」
あ、この人達、常識ぶっち系だ。
頼りにならない。
よろしい、ならば逃走だ。
南国の海はそれ程冷たくない。
1kmも泳げば港手前の浜に辿り着けるだろう。
俺は逃げようとするが、その前に由香里姉の手が伸びて俺の肩をつかむ。
「ここで賢い修君に質問です。魔法工学科の修君は攻撃魔法科の精鋭を前にしています。ここから逃げ延びる可能性と捕まる可能性、掴まって剥かれる可能性を考えると、どのような行動を取るのが正解でしょう」
逃がさない、逃げると剥くぞという脅迫だ。
「ついでに言うと、私は氷雪魔法を使って海の上を凍らせて走れるわ。まあ5km位は大丈夫かな」
どこの漫画の大将だそれは。あれは氷上を自転車走行だっけか。
でもとりあえず理解した。
俺に勝ち目も逃げ道も無いことに。
◇◇◇
「風呂はいいね。風呂は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ。そう感じないか? 修君」
かなり古いアニメで聞いたような台詞を、鈴懸台先輩が言っている。
しかしその原典を思い出している余裕など、俺にはない。
風呂として持ってきたプールは円形。
普通に端に背中を向けて入っていると、他の全方向が見えてしまう。
由香里姉も鈴懸台先輩も月見野先輩も香緒里ちゃんも。
湯船にタオルを浸けるのは無粋だそうなので、隠すものは何もない。
髪を濡らさないように、由香里姉と月見野先輩が髪をまとめてタオルを巻いているだけ。
身体部分は全く隠れていない。
しかもまだ陽が落ちていないので明るい。
「そう言えば7年3ヶ月前、この前一緒に風呂に入った時の修は可愛かったな。由香里姉ちょっとおっぱい出てきたねと言って私のおっぱいもんだりして。あと私のおっぱいもんだあと、香緒里の胸さわってまだ硬いねと言ったり、一緒にお風呂に入るとよくおちんちん大きくなるけれど何故かなと私に聞いたりして」
由香里姉、本人も覚えていない黒歴史を語るのはやめてくれ。
当時は何も知らない小学4年生だったんだ。
「そうですよ、確かその時由香里姉と私の股間触って、やっぱり2人とも大きくならないね何でだろうって言ったんです。まだ憶えています」
おい香緒里ちゃんまで。
「何なら私の胸、今はもっと大きくなったからもんで確認してみる」
「ついでに修兄のも大きくなったか確認してあげるです」
こら調子に乗るな、お前ら。
確かに大きくなっているけれど確認しないでくれ。
だが真の地獄はきっとまだ先だ。
風呂にはいつか上がる時間がくる。
大きくなったものを衆目にさらしてしまう瞬間が。
その時こそどうしようか。
俺の悩みは尽きない……
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