機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
10 / 202
第3章 迷い考えて作るんだ!~魔法工学生の夏~

10 小話1の1 台風来たりておかず無し

しおりを挟む
 結局、俺は懐かしの第1工作室へ帰還する事は出来なかった。
 つまり身分は香緒里ちゃん共々、学生会幹部補助のままだ。

 今では学生会室に俺と香緒里ちゃんの席も出来ている。
 まあ俺は会議でもなければ例の工房にいるけれど。

 午後は学生会室か例の工房で過ごし、夕方になると寮に帰って飯を食って授業の予習復習。
 高専はわりと落第し易い。
 勉強はしっかりやっておかないと学業が厳しいのだ。

 そして金曜夜は晴れていれば恒例の露天風呂大会。就寝も例のキャンピングカーだ。
 キャンピングカーに泊まって好きなときに露天風呂に入って朝までだらだらする。
 就寝場所は6人分あるから余裕だ。

 でも裸でその辺をうろうろするのはやめてもらいたい。
 見ないようにしているし、ある程度は慣れたけれど。

 さて、今日は木曜日。
 現在魔法特区では、大変に深刻な事態が発生している。

 台風が続けて発生したおかげで、連絡船の欠航が3便続いたのだ。
 それが何を意味するか島の者は皆知っている。

 この島は全体が魔法特区で、第一次産業に従事している人間は1人もいない。
 せいぜいプランターで野菜を栽培している人がいる、という程度。
 食料品は全部、船便で他から持ってくるのだ。

 だから食品の在庫が底を尽きつつある。
 飛行場にいる自衛隊が、輸送機で非常食を運んで放出している位だ。

 俺としてはそれ程困っていない。何せ食事にこだわりが無いから。
 スパゲティの醤油味とかマヨネーズ味とかでも平気で一週間暮らせる。
 こんな事態に備えて、缶詰等の買いだめも用意済みだ。

 しかし困る人も結構いる。
 今年がこの島で過ごす、初めての夏で買いだめを怠った人々。
 そして食にこだわりがある人々である。

 そしてそんな困った人達は俺の身近にもいた。
 例えば学生会室等に。

「という訳で、今日の議題は食材の調達ですわ」

 学生会の幹部室内の会議だが、もちろん学校内の食材という意味ではない。
 自分たちが食べる食材についてだ。

「大学カフェテリアが営業していますよ」

 一応俺は報告しておく。

「メニューは自衛隊放出のかしわめし、あとはランチョンミートのチャーハンだけですけれど」

「あれは食べ飽きたわ」

「うん、それに量が少ない」

「いいかげん生物や野菜類も欲しいですわね」

 先輩方がわがままを言っている。
 毎年こんな日が来るのをわかっている筈なのに。

「食べられる野草とかは無いんですか」

 香緒里ちゃん、その認識は甘い。
 ここのことを知らなすぎる。

「食べられる野草はもう鑑定魔法を持つ人間に採取され尽くしている。そうですよね月見野先輩」

 鑑定魔法を持つ張本人に振ってみる。

「ええ、大山側にも象頭山側にも目ぼしい野草は残っていないようですわ」

 やっぱり確認済みだった。

「何ならアホウドリを捕まえて食べるか。あれは結構簡単に捕れて美味しいらしいな。昔の文献では」

「保護されているからやめましょう。ただでさえここに魔法特区作るとき、自然保護団体が煩かったらしいですから」

 鈴懸台先輩の乱暴な意見は俺が却下。

「とすると、あとは海の中しかないわね」

「でも釣り道具を持っている方、この中にいます?」

 僕の問いに全員が首を横に振る。
 ここは確かに面白い魚が釣れるらしい。
 しかし釣り道具を船や飛行機の運賃をかけて、わざわざ持ってくる者は少ない。
 釣りの趣味を持っている者だけだ。

 そしてこの島唯一のスーパーでは、釣り道具も釣りの仕掛けも売っていない。
 魚を突く銛は売っているけれど。玩具みたいなサイズだけれど。

「貝類も今ひとつ安全じゃないですしね、このあたり」

 ここは程よく南なので、貝類も時にシガテラ毒を溜め込んでいたりするのだ。

「やっぱりここは修を剥いて、銛を持たせて海の中へ放り込むか」

「俺の運動神経をなめないでくださいよ」

 勿論運動神経が悪いという意味だ。
 自慢じゃないが小中学校の体育の成績、5段階評価の3より上だったことは一度もない。
 下だったことは実はあるけれども。でも1は無いぞ。

「俺より先輩方の方が泳ぐの上手いんじゃないですか」

「私が本気を出すと周りの水が凍りだすからな。一度それで溺れそうになった」

 さすが氷の女王。

「私は泳ぐのは苦手かな。クラウ・ソラスを水に漬けると水蒸気爆発起こすし」

 鈴懸台先輩の剣は魔法で炎や光の属性を持たせている。
 だから海は苦手ということか。

「私はお肌が荒れるので、海水に浸かるのは御免被ります」

 月見野先輩は体力系じゃないから仕方ない。

「え、私ですか?」

 残ったのは香緒里ちゃん。
 でも香緒里ちゃんに銛を持たせて潜らせるのは少々気が引ける。
 ならば仕方ない。
 できれば関わり合いたくなかったのだけれど。

「わかりました。何とか魚を捕る方向で善処しましょう」

 やむを得ず俺は話を請け負った。

「ただそれなりの準備が必要です。だから魚捕りは明日でいいですか。勿論晴れたらですけれど」

 船が欠航でも常に天気が悪いわけではない。
 少しは晴れ間もある。

「わかったわ。今日はカフェテリアのご飯で我慢する。その代わり明日が晴れていても準備が出来ていないようならば、ひん剥いて銛持たせて海へ放り出すから覚悟してね」

 そんな覚悟はする気はない。
 一応対策は考えてはあるのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...