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第11章 冬休み
46 魔法調理は真似出来ない
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1月4日木曜日。
俺は例の工房で久々の完全な自由を謳歌していた。
島へは昨日の飛行機で帰ってきた。
冬休みは1月9日まで。
薊野姉妹が島へ戻るのは8日の飛行機の予定。
ジェニーもそれくらいの予定。
つまりマンションは俺の天下だ。
でも俺一人でマンションにこもっていてもしょうがない。
ただ今の俺にはやることがあった。
冬休み明けに提出の課題、全自動草刈り機の製作だ。
既にほぼ完成はしている。
後は試用してみるだけ。
俺はゴート君1号と名付けた試作品を校庭へと持ち出す。
校庭の南東には岩場があり不整地での草刈り条件を調べるのにちょうどいい、
刈り取るべき草も南国の島だけに年中不足しないし。
◇◇◇
あたりもすっかり暗くなった頃。
全自動草刈り機『ゴート君1号』の仕上がりに満足して工房から帰る途中。
俺は校門のところで不意に呼び止められた。
「おーい、修君」
この声と長身のシルエットには心当たりがある。
「奈津希さん、お久しぶりです」
次期学生会副会長、宮崎台奈津希さんだ。
あの風呂の後色々とあって、全員下の名前で呼び合おうという事になった。
でも慣れている由香里姉や香緒里ちゃんと違って、年上の異性先輩を名前で呼ぶのはどうも何か恥ずかしい。
「どうしたんだい、学校まだ休みなのに」
「冬休み明け提出の課題の製作で。奈津希さんは」
「軽く魔法の練習。帰る田舎も無いし暇だからね」
そう言えばこの人の実家はうちのマンションの8階だった。
「今日これからどうするの」
「ハツネスーパーで飯買って帰ろうかと」
「何なら飯くらいは作ってやろうか」
お、願ってもみないお誘いだ。
俺は料理が得意ではない。
舌が間違っている薊野姉妹と、パスタしか作らないジェニーと暮らしている為、晩飯はほぼ俺が作っている。
しかし残念ながら評価はあまり高くない。
俺自身もその評価は正しいと感じている。
だから上手な人の料理を一度見て参考にしたいと思っていたのだ。
「お願いします。できればついでに料理を教えてください」
「その代わり例のアレ、使えるんだろう」
奈津希さんの言うアレとは露天風呂のことだ。
何せ昨年も俺達が島を離れる直前まで入りに来ていた。
「昨日メンテナンスしたんで大丈夫ですよ」
「よし決まりだ。スーパーで買い出しして帰ろう。ただし材料費は出せよ。親と同居だと小遣いが厳しくてな」
「大丈夫です」
何せ4人分作るとなると、1日1人500円朝食込みでも1日2,000円。
基本的に自炊だから、そこそこお金に余りが出る。
それに俺の小遣いも結構な余裕があるから、多少豪勢に使っても問題無い。
「よし、じゃあ買い込むぞ!」
……そう意気込まれると若干不安になるけれど。
◇◇◇
離島でかつ農業従事者がいない魔法特区。
故にスーパーの品揃えも本土とは大分異なる。
まず生鮮品があまりない。
メインは冷凍食品と缶詰。
あとは乾物とか粉末とか。
その割にお惣菜コーナーが充実しているのが不思議だが、これは単身赴任者が多いからだろう。
奈津希さんは冷凍野菜を数種類カートの中に放り込む。
他には冷凍の肉もキログラム単位で。
「スパイスとか調味料とかは揃っている?」
「醤油と味噌と砂糖位なら」
色々な葉っぱやら香辛料も放り込む。
お会計は久々の五千円超え。
まあ色々大量に買ったから当然だし、俺の小遣いでなんとかなる範囲だ。
買い物袋をぶら下げて同じマンションへと帰宅。
「僕は一度家に寄ってから行くから、先に行って冷蔵庫にこいつらを入れておいて」
との事なので、俺は重い買い物袋3袋をぶら下げて、10階の我が家に帰宅する。
◇◇◇
奈津希さんが作ってくれた飯は美味かった。
その分台所が戦場状態になったし、今もまだ多少痕跡は残っているけれど。
例えば鳥胸肉2キロは解凍後砂糖と塩をすり込んだ状態で冷蔵庫に入っている。
南蛮漬けは冷蔵庫に入れる為冷ましている最中。
他にも4品、冷蔵庫待ちの常備菜候補が蓋の開いたタッパーに入っている。
そしてそれらを作っている間にささっと冷凍ひき肉と冷凍ナスで作った麻婆茄子が今日のメイン。
おまけに高野豆腐とかぼちゃの煮物もついている。
更についでにアジフライまでついている。
奈津希さんはこれらの作業を全て、炊飯器のご飯が炊き上がるまでに終わらせた。
料理が得意でない俺としてはまさに神業だ。
ただ、奈津希さんの調理方法は神業過ぎて誰も真似はできない。
何故なら熱を通すのも冷やすのも圧力をかけたり抜いたりさえ魔法を使うから。
麻婆茄子を作るときも、
① 冷凍ひき肉と冷凍茄子をフライパンに入れる。
② 唐辛子粉と味噌とケチャップと砂糖と牡蠣油等を適当としか見えない雑さで入れる。
③ 睨みながら菜箸で1分もかき混ぜる。
④ 電磁調理器のスイッチも入れていないのに何故か完成
という感じだ。
アジを揚げた方法はもっと酷い。
① 冷凍のアジフライをビニル袋に入れ、その袋にサラダオイルも入れて冷凍アジと油とをなじませる。
② 油が馴染んだ冷凍アジを袋から出して皿に並べ、睨みつける。
③ あら不思議、いつの間にかこんがり色づいてアジフライになっているし中まで火も通っている。
という感じだ。
あんなの絶対真似できない。
それでいて結構美味しいから困る。
なお、煮物は熱を通す他、圧力をかけたり冷ましたりも魔法でやったとの事。
そうしないと短時間で味が染み込まないそうだ。
そう言われても真似できる訳ないけれど。
まあ材料とか調味料や香辛料の使い方くらいは参考にはできそうだが。
俺が飯を食っている今、既に奈津希さんは露天風呂の人となっている。
一通り造り終えるとダッシュで露天風呂へ行ってしまった。
ちなみに本人は、食べたい時に適当に作って食べるからいいとの事だ。
やる気になれば米すら3分で炊ける魔法持ち。
だからそれでいいのだろう。
「美味しかったです。ご馳走様でした」
俺は真ん中の部屋越しに外にいる奈津希さんに礼を言う。
……返事はない。
多分風呂でくつろいでいて気づかないのだろう。
一応ちらっと外を見ると、顔がちゃんと湯の外に出ているし大丈夫なようだ。
俺は食べた食器等を台所へ運んで片付け始めた。
ちなみに使用した鍋類は既に奈津希さんの手で洗われてしまってある。
だから俺の皿と箸だけ洗えば終わり。
当然片付けた後も奈津希さんからの反応はない。
ちらっと見るとメインの浴槽で泳いでいるのが見えた。
まあ生きているからいいとするか。
俺は自分の部屋へと入る。
俺は例の工房で久々の完全な自由を謳歌していた。
島へは昨日の飛行機で帰ってきた。
冬休みは1月9日まで。
薊野姉妹が島へ戻るのは8日の飛行機の予定。
ジェニーもそれくらいの予定。
つまりマンションは俺の天下だ。
でも俺一人でマンションにこもっていてもしょうがない。
ただ今の俺にはやることがあった。
冬休み明けに提出の課題、全自動草刈り機の製作だ。
既にほぼ完成はしている。
後は試用してみるだけ。
俺はゴート君1号と名付けた試作品を校庭へと持ち出す。
校庭の南東には岩場があり不整地での草刈り条件を調べるのにちょうどいい、
刈り取るべき草も南国の島だけに年中不足しないし。
◇◇◇
あたりもすっかり暗くなった頃。
全自動草刈り機『ゴート君1号』の仕上がりに満足して工房から帰る途中。
俺は校門のところで不意に呼び止められた。
「おーい、修君」
この声と長身のシルエットには心当たりがある。
「奈津希さん、お久しぶりです」
次期学生会副会長、宮崎台奈津希さんだ。
あの風呂の後色々とあって、全員下の名前で呼び合おうという事になった。
でも慣れている由香里姉や香緒里ちゃんと違って、年上の異性先輩を名前で呼ぶのはどうも何か恥ずかしい。
「どうしたんだい、学校まだ休みなのに」
「冬休み明け提出の課題の製作で。奈津希さんは」
「軽く魔法の練習。帰る田舎も無いし暇だからね」
そう言えばこの人の実家はうちのマンションの8階だった。
「今日これからどうするの」
「ハツネスーパーで飯買って帰ろうかと」
「何なら飯くらいは作ってやろうか」
お、願ってもみないお誘いだ。
俺は料理が得意ではない。
舌が間違っている薊野姉妹と、パスタしか作らないジェニーと暮らしている為、晩飯はほぼ俺が作っている。
しかし残念ながら評価はあまり高くない。
俺自身もその評価は正しいと感じている。
だから上手な人の料理を一度見て参考にしたいと思っていたのだ。
「お願いします。できればついでに料理を教えてください」
「その代わり例のアレ、使えるんだろう」
奈津希さんの言うアレとは露天風呂のことだ。
何せ昨年も俺達が島を離れる直前まで入りに来ていた。
「昨日メンテナンスしたんで大丈夫ですよ」
「よし決まりだ。スーパーで買い出しして帰ろう。ただし材料費は出せよ。親と同居だと小遣いが厳しくてな」
「大丈夫です」
何せ4人分作るとなると、1日1人500円朝食込みでも1日2,000円。
基本的に自炊だから、そこそこお金に余りが出る。
それに俺の小遣いも結構な余裕があるから、多少豪勢に使っても問題無い。
「よし、じゃあ買い込むぞ!」
……そう意気込まれると若干不安になるけれど。
◇◇◇
離島でかつ農業従事者がいない魔法特区。
故にスーパーの品揃えも本土とは大分異なる。
まず生鮮品があまりない。
メインは冷凍食品と缶詰。
あとは乾物とか粉末とか。
その割にお惣菜コーナーが充実しているのが不思議だが、これは単身赴任者が多いからだろう。
奈津希さんは冷凍野菜を数種類カートの中に放り込む。
他には冷凍の肉もキログラム単位で。
「スパイスとか調味料とかは揃っている?」
「醤油と味噌と砂糖位なら」
色々な葉っぱやら香辛料も放り込む。
お会計は久々の五千円超え。
まあ色々大量に買ったから当然だし、俺の小遣いでなんとかなる範囲だ。
買い物袋をぶら下げて同じマンションへと帰宅。
「僕は一度家に寄ってから行くから、先に行って冷蔵庫にこいつらを入れておいて」
との事なので、俺は重い買い物袋3袋をぶら下げて、10階の我が家に帰宅する。
◇◇◇
奈津希さんが作ってくれた飯は美味かった。
その分台所が戦場状態になったし、今もまだ多少痕跡は残っているけれど。
例えば鳥胸肉2キロは解凍後砂糖と塩をすり込んだ状態で冷蔵庫に入っている。
南蛮漬けは冷蔵庫に入れる為冷ましている最中。
他にも4品、冷蔵庫待ちの常備菜候補が蓋の開いたタッパーに入っている。
そしてそれらを作っている間にささっと冷凍ひき肉と冷凍ナスで作った麻婆茄子が今日のメイン。
おまけに高野豆腐とかぼちゃの煮物もついている。
更についでにアジフライまでついている。
奈津希さんはこれらの作業を全て、炊飯器のご飯が炊き上がるまでに終わらせた。
料理が得意でない俺としてはまさに神業だ。
ただ、奈津希さんの調理方法は神業過ぎて誰も真似はできない。
何故なら熱を通すのも冷やすのも圧力をかけたり抜いたりさえ魔法を使うから。
麻婆茄子を作るときも、
① 冷凍ひき肉と冷凍茄子をフライパンに入れる。
② 唐辛子粉と味噌とケチャップと砂糖と牡蠣油等を適当としか見えない雑さで入れる。
③ 睨みながら菜箸で1分もかき混ぜる。
④ 電磁調理器のスイッチも入れていないのに何故か完成
という感じだ。
アジを揚げた方法はもっと酷い。
① 冷凍のアジフライをビニル袋に入れ、その袋にサラダオイルも入れて冷凍アジと油とをなじませる。
② 油が馴染んだ冷凍アジを袋から出して皿に並べ、睨みつける。
③ あら不思議、いつの間にかこんがり色づいてアジフライになっているし中まで火も通っている。
という感じだ。
あんなの絶対真似できない。
それでいて結構美味しいから困る。
なお、煮物は熱を通す他、圧力をかけたり冷ましたりも魔法でやったとの事。
そうしないと短時間で味が染み込まないそうだ。
そう言われても真似できる訳ないけれど。
まあ材料とか調味料や香辛料の使い方くらいは参考にはできそうだが。
俺が飯を食っている今、既に奈津希さんは露天風呂の人となっている。
一通り造り終えるとダッシュで露天風呂へ行ってしまった。
ちなみに本人は、食べたい時に適当に作って食べるからいいとの事だ。
やる気になれば米すら3分で炊ける魔法持ち。
だからそれでいいのだろう。
「美味しかったです。ご馳走様でした」
俺は真ん中の部屋越しに外にいる奈津希さんに礼を言う。
……返事はない。
多分風呂でくつろいでいて気づかないのだろう。
一応ちらっと外を見ると、顔がちゃんと湯の外に出ているし大丈夫なようだ。
俺は食べた食器等を台所へ運んで片付け始めた。
ちなみに使用した鍋類は既に奈津希さんの手で洗われてしまってある。
だから俺の皿と箸だけ洗えば終わり。
当然片付けた後も奈津希さんからの反応はない。
ちらっと見るとメインの浴槽で泳いでいるのが見えた。
まあ生きているからいいとするか。
俺は自分の部屋へと入る。
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