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第16章 新人歓迎! 新学期
72 ロボットはロマンなのです
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俺の知らない世界を垣間見た後。
全員風呂から上がってリビングでまったりしている。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るけれど、詩織ちゃんはどうする。何なら送っていくけれど」
と奈津希さん。
「大丈夫です。10秒もあれば寮の部屋まで着けるのです」
事も無げに詩織ちゃんは言う。
でも10秒というのは。
「それって瞬間移動?」
詩織ちゃんは首を横に振った。
「瞬間移動出来るほど空間を曲げるのは無理なのです。だから既に曲がっている場所をうまく繋いで、最短最速で帰れるルートを作るのです。寮とここの場合、行きは歩いて来たのでルートはわかっているのです。10歩で寮の部屋内に着けるのです」
それって実用的には、瞬間移動とほとんど同じではないのだろうか。
「確かに遅くなりましたので失礼です。明日もよろしくお願いするのです」
詩織ちゃんはそう言うと、軽くひざを曲げ次の瞬間姿を消した。
それきり。
痕跡も何もない。
「これって、事実上の瞬間移動ですよね」
「僕もちょっと範囲外だな」
「私もここまでの魔法は見たことが無いわ」
奈津希さんだけでなく由香里姉までそう言う。
「本人は意識していないかもしれないけれど、とんでもないレベルの魔法なのかもしれないな。明日風遊美に聞いてみよう」
そういえば風遊美さんも似たような魔法を使っていた。
それで奈津希さんがひどい目にあったけれど。
◇◇◇
3限終了後しばらくしての学生会室。
今日も比較的何もなくて暇だ。
「その魔法はかなり特殊ですし危険だと思います」
風遊美さんの意見だ。
「私も見える範囲での空間の歪みを短絡することは出来ますが、それ以上は出来ません。私が前にいたEUの魔法特区にも、知っている限りそこまでの空間操作魔法は無かったと思います」
「やっぱりな」
奈津希さんが頷く。
「うちの両親にも聞いてみたが、そこまでの空間操作魔法は知らない。ただ、もしそんな魔法使いがいたら、それこそ世界中の諜報機関の取り合いになりかねないという話だった」
「物騒だね」
「ただあの魔法の性質上、捕まえるのは無理だよね」
「案外何度も誘拐されかけているけれど、天然で気づかないだけだったりして」
「シャレにならないれす」
ここにいない詩織ちゃんの話題で話が進む。
「あと、ソフィーちゃんやルイス君は」
「ソフィーはいい子れすよ。真面目だし熱心そうだし」
「そうですね。本当に補助魔法、それも医療系を真面目にやりたいという感じです」
「ルイスは面白いな。僕のような浅く広くじゃなく、風の魔法に極端に特化した魔法使いだ。あれで戦略とか魔力の使い方とかきちんと憶えれば化けるぞ。潜在的には由香里さんと互角レベルの力はあると思う」
「でも叩きのめしたんでしょ、模擬戦で」
「まあな。こういう時は実力差を見せてやったほうが向上心も出ると期待してさ」
「でも3人共今日も来るかしら」
「詩織ちゃんは絶対来そうだな」
そんな事を話しながら彼女達が来るのを待ち受ける。
今日もガイダンスがあるので1年生の授業は4限まで。
この前と同じ時間に学生会室の扉がノックされる。
入ってきたのは2人だ。
「今日はソフィーちゃんは色々回ってからくる予定だそうです」
現れたのは詩織ちゃんとルイス君。
「今日はどうしますか」
「私は工房へ行きたいです」
との事なので、俺と香緒里ちゃんは詩織ちゃんに付き合って工房へ。
詩織ちゃんは倉庫へ行くなりストック倉庫の方へ。
「ここにあるストックは、使った後に補充しておけばいいのですか」
「鋼材なんかは年度で補充されるから気にしなくていいよ。機械類は使った分だけ補充するか、使った後にまた戻しておいてくれるかで。あとは台帳を見て判断して」
「了解であります」
何か凄く嬉しそうに在庫の確認を始める。
「何か本当に工作類が好きそうだな」
「修兄並の工作フェチを久しぶりに見たです」
香緒里ちゃんのこっそり言った毒舌も、全く聞こえていないようだ。
「この辺の工作機械も使っていいですか」
「使っていいけど怪我はするなよ」
「一応ネットで予習済みなので大丈夫であります」
その手つきから大丈夫だろうと判断。
俺は香緒里ちゃんのバネ作業の手伝いを始める。
時々見ている限りでは、何やら順調に作っている様子だ。
金属板を曲げたり切ったり。
どうも割と大きいものを作っている感じだ。
何を作っているのだろう。
どうしても我慢できなくて、バネ作業が一段落したところで詩織ちゃんに聞いてみた。
「これ、何を作っているの」
「例の課題の空飛ぶ機械なのです。どうせ私の場合は正規の課題ではないですから、思い切り趣味に走ったものにしようと思ったのです」
どれどれとCADの図面を見てみる。
「うわっ、これは凄い」
空飛ぶ機械としては邪道だが、凄まじく面白い図面が描けている。
「でもこれじゃ重くて飛びにくいだろ。余分な部分が多くて」
「脚部分は自重を支えるからしょうがないのです。でもストックにA7N01があったので大分軽量化できるのです。若干板が薄い分は構造で強度を出すのです」
まさか番号でアルミ合金の性質が分かる新入生が来ると思わなかった。
あ、待てよ。
「そうか。VRロボプロは素材指定もあったな」
そういう妙にリアルさを追求したゲームだった。
「そういう訳です。なので折角ですから今まで作れなかった、リアルロボットを作るのです」
「それで空飛ぶパワードスーツという訳か」
そう、CADに描かれていたのは、まさに空飛ぶパワードスーツだった。
空を飛ぶには不要な腕や脚がある、実用というより趣味的な機体。
「本当はクァドランとかマヤールみたいのを作りたかったのです。でも素材と加工の都合があるのでこの辺で勘弁してやるのです。後で外甲をつければジェットライザーくらいにはなるのです」
「ヴァンガードの方、それともマシンロボ」
「マシンロボの方なのです。操縦方法は違うですが。いや形態的にはウォーカーマシンですかねえ」
「しかしどうやって飛ばすんだ。結構重いだろこれ」
ジュラルミンとはいえ金属だ。
操縦席以外に腕や脚など余分な部分がある分かなり重くなる筈。
重力低減魔法でも使うつもりだろうか。
でも俺の勘ではそんな事は考えていない気がする。
意地でも自分の魔法と技術だけで作りそうな感じだ。
「汎用性は無いけれど、ロマンたっぷりな方法を考慮済みなのです」
「とすれば、出来上がるまで細かい図面を見るのは野暮かな」
俺はCADから目を離す。
「そうですね。出来上がりを楽しみにして欲しいのです」
と、俺はある事を思いついた。
こそこそと香緒里ちゃんのところへ行き、ひそひそと相談。
「確かに使いそうですしね。修兄がいいならいいですよ」
と許可をもらう。
ストックヤードから適当な厚さの鋼材の端材を探し、俺のポケット内にあるものと同一の形状に魔法で加工。
再びパソコンの方へ歩いていって、今作ったばかりの鍵を詩織ちゃんに渡す。
「この工房の合鍵。とりあえずその機体が完成するまでは自由に使っていい」
「ありがとうなのです! やっほい! やっほい! やっほい……」
お、変な踊りを踊りだしたぞ。
これは喜びの表現なんだろうか。
と、ぱたっと踊りが止まる。
「でも私が、ここの工作機械を使っていいのですか」
「どうせここを使うのは俺と香緒里ちゃんだけだしな。製作実習の課題は各学年重ならないようになっているし」
「なら期限までに必ずこの子を完成させるのです!」
機械がこの子になっちゃったよ。
「まあ、頑張ってくれ」
そろそろ詩織ちゃんのノリについていけなくなり、俺は香緒里ちゃんの方へ戻る。
全員風呂から上がってリビングでまったりしている。
「それじゃあ、僕はそろそろ帰るけれど、詩織ちゃんはどうする。何なら送っていくけれど」
と奈津希さん。
「大丈夫です。10秒もあれば寮の部屋まで着けるのです」
事も無げに詩織ちゃんは言う。
でも10秒というのは。
「それって瞬間移動?」
詩織ちゃんは首を横に振った。
「瞬間移動出来るほど空間を曲げるのは無理なのです。だから既に曲がっている場所をうまく繋いで、最短最速で帰れるルートを作るのです。寮とここの場合、行きは歩いて来たのでルートはわかっているのです。10歩で寮の部屋内に着けるのです」
それって実用的には、瞬間移動とほとんど同じではないのだろうか。
「確かに遅くなりましたので失礼です。明日もよろしくお願いするのです」
詩織ちゃんはそう言うと、軽くひざを曲げ次の瞬間姿を消した。
それきり。
痕跡も何もない。
「これって、事実上の瞬間移動ですよね」
「僕もちょっと範囲外だな」
「私もここまでの魔法は見たことが無いわ」
奈津希さんだけでなく由香里姉までそう言う。
「本人は意識していないかもしれないけれど、とんでもないレベルの魔法なのかもしれないな。明日風遊美に聞いてみよう」
そういえば風遊美さんも似たような魔法を使っていた。
それで奈津希さんがひどい目にあったけれど。
◇◇◇
3限終了後しばらくしての学生会室。
今日も比較的何もなくて暇だ。
「その魔法はかなり特殊ですし危険だと思います」
風遊美さんの意見だ。
「私も見える範囲での空間の歪みを短絡することは出来ますが、それ以上は出来ません。私が前にいたEUの魔法特区にも、知っている限りそこまでの空間操作魔法は無かったと思います」
「やっぱりな」
奈津希さんが頷く。
「うちの両親にも聞いてみたが、そこまでの空間操作魔法は知らない。ただ、もしそんな魔法使いがいたら、それこそ世界中の諜報機関の取り合いになりかねないという話だった」
「物騒だね」
「ただあの魔法の性質上、捕まえるのは無理だよね」
「案外何度も誘拐されかけているけれど、天然で気づかないだけだったりして」
「シャレにならないれす」
ここにいない詩織ちゃんの話題で話が進む。
「あと、ソフィーちゃんやルイス君は」
「ソフィーはいい子れすよ。真面目だし熱心そうだし」
「そうですね。本当に補助魔法、それも医療系を真面目にやりたいという感じです」
「ルイスは面白いな。僕のような浅く広くじゃなく、風の魔法に極端に特化した魔法使いだ。あれで戦略とか魔力の使い方とかきちんと憶えれば化けるぞ。潜在的には由香里さんと互角レベルの力はあると思う」
「でも叩きのめしたんでしょ、模擬戦で」
「まあな。こういう時は実力差を見せてやったほうが向上心も出ると期待してさ」
「でも3人共今日も来るかしら」
「詩織ちゃんは絶対来そうだな」
そんな事を話しながら彼女達が来るのを待ち受ける。
今日もガイダンスがあるので1年生の授業は4限まで。
この前と同じ時間に学生会室の扉がノックされる。
入ってきたのは2人だ。
「今日はソフィーちゃんは色々回ってからくる予定だそうです」
現れたのは詩織ちゃんとルイス君。
「今日はどうしますか」
「私は工房へ行きたいです」
との事なので、俺と香緒里ちゃんは詩織ちゃんに付き合って工房へ。
詩織ちゃんは倉庫へ行くなりストック倉庫の方へ。
「ここにあるストックは、使った後に補充しておけばいいのですか」
「鋼材なんかは年度で補充されるから気にしなくていいよ。機械類は使った分だけ補充するか、使った後にまた戻しておいてくれるかで。あとは台帳を見て判断して」
「了解であります」
何か凄く嬉しそうに在庫の確認を始める。
「何か本当に工作類が好きそうだな」
「修兄並の工作フェチを久しぶりに見たです」
香緒里ちゃんのこっそり言った毒舌も、全く聞こえていないようだ。
「この辺の工作機械も使っていいですか」
「使っていいけど怪我はするなよ」
「一応ネットで予習済みなので大丈夫であります」
その手つきから大丈夫だろうと判断。
俺は香緒里ちゃんのバネ作業の手伝いを始める。
時々見ている限りでは、何やら順調に作っている様子だ。
金属板を曲げたり切ったり。
どうも割と大きいものを作っている感じだ。
何を作っているのだろう。
どうしても我慢できなくて、バネ作業が一段落したところで詩織ちゃんに聞いてみた。
「これ、何を作っているの」
「例の課題の空飛ぶ機械なのです。どうせ私の場合は正規の課題ではないですから、思い切り趣味に走ったものにしようと思ったのです」
どれどれとCADの図面を見てみる。
「うわっ、これは凄い」
空飛ぶ機械としては邪道だが、凄まじく面白い図面が描けている。
「でもこれじゃ重くて飛びにくいだろ。余分な部分が多くて」
「脚部分は自重を支えるからしょうがないのです。でもストックにA7N01があったので大分軽量化できるのです。若干板が薄い分は構造で強度を出すのです」
まさか番号でアルミ合金の性質が分かる新入生が来ると思わなかった。
あ、待てよ。
「そうか。VRロボプロは素材指定もあったな」
そういう妙にリアルさを追求したゲームだった。
「そういう訳です。なので折角ですから今まで作れなかった、リアルロボットを作るのです」
「それで空飛ぶパワードスーツという訳か」
そう、CADに描かれていたのは、まさに空飛ぶパワードスーツだった。
空を飛ぶには不要な腕や脚がある、実用というより趣味的な機体。
「本当はクァドランとかマヤールみたいのを作りたかったのです。でも素材と加工の都合があるのでこの辺で勘弁してやるのです。後で外甲をつければジェットライザーくらいにはなるのです」
「ヴァンガードの方、それともマシンロボ」
「マシンロボの方なのです。操縦方法は違うですが。いや形態的にはウォーカーマシンですかねえ」
「しかしどうやって飛ばすんだ。結構重いだろこれ」
ジュラルミンとはいえ金属だ。
操縦席以外に腕や脚など余分な部分がある分かなり重くなる筈。
重力低減魔法でも使うつもりだろうか。
でも俺の勘ではそんな事は考えていない気がする。
意地でも自分の魔法と技術だけで作りそうな感じだ。
「汎用性は無いけれど、ロマンたっぷりな方法を考慮済みなのです」
「とすれば、出来上がるまで細かい図面を見るのは野暮かな」
俺はCADから目を離す。
「そうですね。出来上がりを楽しみにして欲しいのです」
と、俺はある事を思いついた。
こそこそと香緒里ちゃんのところへ行き、ひそひそと相談。
「確かに使いそうですしね。修兄がいいならいいですよ」
と許可をもらう。
ストックヤードから適当な厚さの鋼材の端材を探し、俺のポケット内にあるものと同一の形状に魔法で加工。
再びパソコンの方へ歩いていって、今作ったばかりの鍵を詩織ちゃんに渡す。
「この工房の合鍵。とりあえずその機体が完成するまでは自由に使っていい」
「ありがとうなのです! やっほい! やっほい! やっほい……」
お、変な踊りを踊りだしたぞ。
これは喜びの表現なんだろうか。
と、ぱたっと踊りが止まる。
「でも私が、ここの工作機械を使っていいのですか」
「どうせここを使うのは俺と香緒里ちゃんだけだしな。製作実習の課題は各学年重ならないようになっているし」
「なら期限までに必ずこの子を完成させるのです!」
機械がこの子になっちゃったよ。
「まあ、頑張ってくれ」
そろそろ詩織ちゃんのノリについていけなくなり、俺は香緒里ちゃんの方へ戻る。
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