機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第21章 優雅で感傷的な日本行事~冬の章・前編~

104 優雅で日本的なクリスマスパーティ?

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「さて、まずはディナーだな」

 奈津希さんとジェニーが、キッチンの冷蔵庫等からケーキだのフライドチキンだの手巻き寿司だのを出してくる。

「それにしてもこの島でケーキを作るのは大変だったんじゃないですか」

「卵も牛乳も生クリームもイチゴも通販で買った。やっぱりジャパニーズ・トラディッショナルなクリスマスケーキと言えば生クリームにイチゴだからな」

 外国に変な日本文化が伝わるのは、きっとこういう人のせいだ。

「あとチキンもあえてケンタッキー風に作ってみたぞ。圧力かけたり香辛料使ったりしてな」

「手巻き寿司ってのは」

「日本のファミリーパーティなら手巻き寿司だろ」

 誤解が多そうだが、面倒なので無視。

「あとアルコール無し炭酸入りのシャンメリー。これがお約束だよな」

「蓋は私が開けるです」

 詩織ちゃんがシャンメリー3本を取り、ルイス君とソフィーちゃんに手渡す。

「それでは開けるですよ。3,2,1でメリークリスマスとご唱和頼むっすよ」

 3,2,1!

「メリークリスマス!」

 号砲代わりのシャンメリーの栓が飛ぶ。

「まずケーキを切るな。修、悪いが魔法を使って正確に9等分出来るか」

「9等分でいいんですか」

 この場にいるのは8人だ。

「由香里さんの分。今日は遅いと聞いているけどケーキくらいは取っておいてもいいだろ」

「了解です」

 この手の魔法は得意だ。
 という事で、正確に40度ずつ切り分けられたケーキが出来上がる。

「じゃあ後はプレゼント交換まではフリーだ。食べようぜ」

「奈津希、すみませんけれど、手巻き寿司ってどう食べるのですか」

 そうか。手巻き寿司を知らない人がいるのは、考えてみれば当たり前だ。

「これはこの海苔を取って、このスプーンで御飯を伸ばして載せて、適当な具を入れたいだけ載せて、何なら醤油ソイソースかマヨネーズを付けて丸める。で、かじる」

「手を使ってもいいんですか」

「当然、むしろ最後は手で掴まないと食べられないしな」

 手巻き寿司が始めてらしい風遊美さんとルイス君が、真面目に奈津希さんの説明を聞いている。
 一方でジェニーとソフィーちゃんは、フライドチキンを巻いたり好き勝手に作って食べている。
 どうもあっち側には、日本人が知らない日本食文化があるようだ。
 フライドチキン巻以外にも、きゅうりサーモン裏巻きとか色々作っている。

 それにしてもきょうの料理、ケーキ以外も材料を用意するのが大変だったろう。
 手巻き寿司だけでもたまご、きゅうり、かんぴょう、しいたけ、まぐろ、サーモンと色々揃っている。

 まぐろはこの前釣ったのの流用だろうが、後はわざわざ注文したのだろうか。
 ここのスーパー、品揃えが不確かだし。

「さて、宴たけなわではございますが、そろそろお待ちかねのプレゼント交換の時間になってまいりました」

 奈津希さんがそう宣言。

「という訳で、こちらのスペースで円を作って」

 部屋の北西側、何もないスペースで円状に集まる。
 そこで奈津希さんは、全員にカードを渡した。
 カードと言っても3つ折りになっていて、中は見えない、

「それでは説明するよ。これからかける曲にあわせ、右の人にカードを渡して左の人からカードを受け取る動作を繰り返す。曲が止まった瞬間に持っていたカード、それがプレゼントを貰う相手になる。自分の名前が書かれていたら、強制的に左隣の人と交換だ。
 なおプレゼント授与式は順番にやるから、呼ばれるまでは待っていてくれ。それでは、ちゃんと円を作って隣を確認して」

 俺達は円を作る。
 俺の右隣は香緒里ちゃんで、左隣が風遊美さんだ。
 奈津希さんはポケットからスマホを取り出し、何か操作する。
 遠隔で部屋のステレオから音楽が鳴り出した。

「それでは3、2、1、スタート」

 WHAM!のクリスマスの定番曲が流れる中、カード交換が始まる。

「ちなみに曲は5分近くあるのでご了承を」

「ちょっと長すぎです」

「手渡しにちょうどいいテンポの曲が思いつかなくてさ」

 確かに、ちょっと長いかも。
 最後のララララーの部分が小さくなっていく。

「はいストップ。自分のカードの中を確認!」

 俺は3つ折りのカードを開く。
 中には『風遊美』と書いてあった。

「さて、それでは順にプレゼント授与式だ。まずは風遊美から貰うのは誰だ」

「俺です」

 風遊美さんは、ウェットティッシュの入れ物位の大きさの箱を持ってくる。
 水色の包装紙に赤のリボン付き。

「私からのプレゼントです。大事に使っていね」

「開けてみていいですか」

「そうだな。時間があるから一つずつ確かめながらいくか。いいかい風遊美」

「そうですね。その方が楽しいです」

 俺はリボンを解き、包装紙を外す。
 箱を開けると出てきたのはちょっと大きめのマグカップ。
 形は湯呑みを上に伸ばしたような、下部分が曲線ですぼまっていて縁が少しだけ開いている形。
 白地に青色で花が描かれていて、そして取っ手が綺麗な青色。

「普段使い用の大きめのマグカップです。良かったら使って下さい」

 俺が見てもいいものだとわかる。
 大きさも0.4ℓとあるので結構入るし、使いやすそうだ。

「ロールストランドのだね。ノーベル賞の授賞式で使われている有名メーカーだ」

「奈津希、説明は無粋ですよ」

「確かにそうだね」

 そして次々とプレゼントが渡され、開封されていく。

 奈津希さんの「某北海道有名パティシエのチーズケーキセット」はジェニーへ。
 俺の魔法杖機能付ストラップはソフィーへ。
 香緒里ちゃんの魔石入りペンダントは風遊美さん。
 ジェニーの白とピンクのソーラーダイバー腕時計は香緒里ちゃん。
 ルイス君のガーネットのネックレスは詩織ちゃん。
 ソフィーのエッセンシャルオイルとディフューザーセットは奈津季さん。
 詩織ちゃんの護り刀(小刀版)はルイスくんへと渡った。

 結構皆、プレゼントを気に入っているようだ。

 一番わかり易いのがルイス君と詩織ちゃんの2人。
 詩織ちゃんはネックレスを付けて浮かれているし、ルイス君は刀を仕舞っては見て、抜いては見てを繰り返している。

 確かに詩織ちゃんは今日のドレス姿に赤い石のついたネックレスが似合っているし、ルイス君のものになった護り刀は白木の鞘と柄、そして中身は本格的な刀の造りでいい出来だ。

 俺とジェニーは早々に戦利品を自分の部屋へと持っていったし、奈津希さんは客間にディフューザーをセットして起動している。
 今日泊まるつもり満々だ。

 ソフィーちゃんも何回もストラップを使って魔法を試していて、結果キッチンのシンク内に氷柱が出来ている。
 風遊美さんのペンダントも似合っているし、香緒里ちゃんは腕時計を今まで使っていなかったのでちょうどいいだろう。

「さて、それではパーティそのものはお開きだ。食べ物は一皿にまとめて、あとは適当につまむなり何なりしよう」

 という事で、全員で片付けを開始する。
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