機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第25章 バネ工場のお引っ越し

125 思わぬ場所の物件

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 本日は人数が多すぎて、寝場所が足りない状態だ。
 なので以前俺がお世話になった、隣の田奈家の客間2室を借りた。
 具体的に言うと、1年生3人が田奈家の客間宿泊だ。
 なお奥様と長女は、GW中東京へお出かけ中とのこと。

 詩織ちゃんは何故行かなかったのか尋ねてみた。

「こっちで皆と遊んでいる方が楽しいですよ」

 そう思ってくれるのなら、俺としても結構嬉しい。
 去年までの分も含め、充分以上に楽しんで欲しいなと思うところだ。

 さて、今日の天気は生憎の雨。
 なので未だ膨満感が消えない胃腸をいたわってゴロゴロする者、雨の中まったりと露天風呂を楽しむ者、趣味と学生会の仕事を兼ねてWebページの更新をしている者等、皆マンション内で時間を潰している。

 そんな中、俺達4人は10時過ぎ、マンションの部屋を出た。
 4人とは俺、風遊美さん、奈津季さん、香緒里ちゃんだ。

「まずは役所の公示の方へ行くよ」

 役所とは言うが、要はいつも行くハツネスーパーと同じ建物の2階だ。
 俺達は通称ハツネスーパーと呼んでいる建物は、厳密には『魔法特区市街化総合施設』という施設。
 スーパーや喫茶店等の店の他に、いわゆる役所関連の機関も一通り入っている。
 この前お世話になった法務局の支所や税務署等も、この建物内だ。

 奈津希さんは役所の端末を操作して、何枚かを印字して取り出す。

「該当の物件だ」

 奈津季さん以外の3人で覗き込む。
 賃料は月25万円。やや高いけれど問題のない範囲だ。
 広さは約50坪、充分以上だろう。

 場所は特区聟島初寝100市街化総合施設1階。
 具体的に言うと……

「ここの1階ですね」

 そう、今いる建物の1階で、いつも通っている道に面した場所だ。
 成程、俺達はレンタルラボや研究団地に目が行っていて、商業区域内は探していなかった。
 紙を見る限り、商店でなくても入居可能。
 現に事務所も何件か入っている。

「ああ。これから案内するよ」

 奈津希さんはそう言って歩きだした。
 既にこの紙の内容については全て把握済みのようだ。

 何故そんな情報を持っていたのだろう。
 何か理由があるような気がする。

 ただその疑問は、まだ聞く時ではない気がした。
 もう少しだけ待った方がいいような、そんな気が。

 ◇◇◇

 いつも行っているハツネスーパーの並び、美容室と理髪店の横の空きスペースがその場所だった。
 学校から帰る際、いつも通る道路に面した、良く知っている場所だ。

 該当の場所は、シャッターが閉まったままの状態になっている。

「ここだよ。裏は搬入車が入れるし学校にもマンションにも近い。ちょっと家賃が高いけどさ。ほぼ条件通りだろ」

「そうですけれど、一つ聞いていいですか」

 条件的には問題ないというか、ほぼ希望通りだ。
 学校から近くマンションからも近い。
 運送会社の車も後ろに付けられる。
 賃料も会社の経理上問題ない額だ。

 でもきっと、このまま契約する訳にはいかない。
 これからする話を聞いてからでないと、きっと後悔する。

 聞くべき時はきっと今しかない。
 だから俺は奈津希さんに尋ねる。

「聞くって何をだい」

「何故ここの事を知っていたかです」

「空いていたから気になって、という答えは」

「駄目です」

 奈津希さんはため息をつく。

「何か修、そういう厳しい処、風遊美に似てきたな」
「どうしても言いたくないなら別ですけれど」

「そんな大したものじゃないさ。感傷とかそういったつまらない事だ」

 俺達は奈津季さんの次の言葉を待つ。

「ここは前は洋品店が入っていたんだ。個人商店じゃなくて本土系のさ。5年前に潰れたから皆知らないと思うけどな。今はネットで買った方が好みの服が安く買えるから、商売にならなくなって撤退したんだ。で、その時ふと思ったんだ。この島でも成立する商売って何だろうなって。
 結論は通販等で代行できない、実際に来店する必要がある商売。もしくは来店したくなるような商売。それならやりようによっては成り立つだろう。そう思ったんだ」

 外は雨。
 この先は本日休みの郵便局だけなので、人影は他にない。
 その中で奈津希さんの話は続く。

「前にも言ったかな、この島を普通の街にしたいって。魔法使いが出来る事って研究や超常的な活動の他にも、もっと色々あると思うんだ。もっと日常に近い、例えばこんなところのお店だって。
 それにこの島は普通の仕事が少ないからさ。例えば中学の時に一緒にいた連中、高校を卒業したらほとんど島を出てしまう。魔法が使えないならこの街に住んでいる意味が無いからさ、現状では。
 なんて大きな事を言っているけれど、実は僕がやろうとしている事はそれ程たいした事じゃない。修は知っているよな、江田先輩」

 俺は頷く。

「さっきの普通だの何だのってのは、元はと言えば江田先輩の受け売りさ。奴の家はこの先のハイツ聟島初寝台で、この辺は時々一緒に帰ったりしたんだけれど、その時に奴がぼそっと言っていたんだ。『ここだと人通りもあるし、この島で店を出すとしたらちょうどいいかな』。それでこの場所は気になっていたんだ」
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