機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第28章 心なき身にもあはれは知られけり~秋・俺の学生会で最後の学園祭~

144 緊急出動!

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 学園祭も期間の中間の平日は結構暇である。
 だれている、とも言う。
 ただこういう時こそ、事故は起こりやすいらしい。

「実行委員長池尻より、学生会宛て緊急連絡」

 おいおい何事だ。
 緊急連絡なんて学生会の3年で初めてだぞ。
 そう思いつつ、マイクを手に取る。

「学校裏、教授会主催リアル空中バトルにて、海上接触事故の模様。詳細不明。学生会長の応答を乞う」

「学生会長津田了解」

 下手をすれば大事だ。
 無線を手に取って立ち上がり、部屋を出て、部屋に鍵をかけながら無線をふく。

「学生会長津田より学生会役員各位宛、至急Bブロック3、空中バトル実施会場へ集合。繰り返す。学生会役員各位にあっては至急Bブロック3、空中バトル実施会場へ集合。なお学生会拠点は移動開始する。回信省略」

 階段を3段抜かしで降り、近くの出口から外へ。
 工房前に駐機中の簡易潜航艇に乗る。

 空飛ぶキャンピングカーは、大学学園祭でヒーリングサロンとして営業中。
 空飛ぶ漁船は教授会貸出中。
 現在時、動けるマシンはこれだけだ。

「学生会長津田より実行委員長宛。当方は現場の海上へ直接向かう。情報あれば一報されたし。どうぞ」

「実行委員長池尻了解。頼む、こっちは足がない」

 実行委員長の池尻君は補助魔法科4年。
 学園祭の度に色々世話になっているので、今では完全な顔見知りだ。

 簡易潜航艇は一気に上昇して、校舎を飛び越える。
 そのまま墜落現場に近い海上を目指す途中で、思いついた。
 そうだ、ジェニーの魔法は使えないかと。

「学生会長津田から学生会ジェニー宛て。魔法で怪我人等の有無は判断できないか、どうぞ」

「学生会ジェニー了解。確認中……怪我人あり、軽症1名。緊急救護の必要性……無しと思われます。どうぞ」

 ほっと一息。

「学生会長津田了解。実行委員長了解でしょうか、どうぞ」

「実行委員長池尻了解」

 ちょっと安心しつつ海上へ。
 何台か飛行機械が集まっている場所がある。
 そこだな。

 1機だけ形も色も違う、真っ赤な塗装に何故か前方カウルに角のついた飛行スクーターがいる。
 乗っているのは腐るほど見知っている中年親父。

「田奈先生、状況どうですか」

 近くにいるロビー製造タイプの飛行機械の騒音で、怒鳴らないと聞こえない。

「長津田か、ちょうどいい。その潜航艇を貸せ」

 おい、状況くらい説明しろ。

「パワードスーツとホバギーが接触して下に沈んでいる。魔法で引上げたいが目視した方が確実だ。潜航艇があれば都合がいい」

 成程な。
 なので近くの浜へ乗り換えのため急行。

「要救助者は無しですね」

「無い、大丈夫だ」

 勿論これも無線で一報。

「学生会長津田より事故現場から一報。事故内容にあっては飛行機械の接触事故。要救助者無し。これから沈んだ飛行機械2台のサルベージ作業実施予定。どうぞ」

「実行委委員長池尻、代表して了解」

 砂浜に到着して、教授と機体を乗り換える。

「操縦方法はそのバイクと同じだな」

「その通りです」

「ちゃんと標準化してあるな。大変よろしい」

 教授はそう言って、ちょっと腹が出た体型できつそうに潜水艇に乗り込む。

「あとその空中スクーターは3倍速い仕様だから気をつけろよ、じゃあな」

 ……何だよ、その3倍速いって。
 そう思いつつ、状況確認の為に無線をふく。

「学生会長津田から学生会副会長宛、大会本部の状況はどうか、どうぞ」

「学生会薊野です。怪我人1人、かすり傷程度です。それ以外にこちらの動きは特にありません。どうぞ」

「学生会長津田了解。では学生会員は詩織とロビーを残して解散願います。あと学生会本部を俺が戻るまで開所願います。どうぞ」

 魔法工学科で機械の設計者2人を残しておけば、その後の問題はないだろうという判断だ。

「学生会薊野了解です」

 さあ、田奈先生のお手並み拝見といこう。
 異常な速度でふっ飛ばして行った潜航艇を追って海上へ。
 俺の魔法で海中で稼働している機械の位置を探り、邪魔にならない場所で待機。

 しかしこの赤い飛行スクーター、無茶苦茶乗りにくい。
 異様にピーキーな設定になっていて、気を抜くとすぐとんでもない速度になる。

 さて、と。
 沈んでいる機械2台は水深70m位の場所。
 そして俺の水中スクーターは、基本そんな深度は想定していない。
 まあ安全のためかなり強度の余裕はとってはいるけれど、設定はせいぜい30m程度。

 しかし俺は全く心配はしていない。
 なにせ搭乗者は田奈先生だ。
 性格体型その他問題は多々あるが、技術と魔法はほぼ俺の上位互換。
 水深10mで壊れる機械なら9.999999mで運用可能な腕と魔法を持っている。

 魔法で見るに、予想通り潜航艇の性能限界に挑戦している模様。
 そして魔力作動の方のパワードスーツが動き始める。
 内燃機関作動の為どうやっても動けないロビー制作の飛行機械を抱えて、ゆっくり浮上し始めた。

 そう言えばロビー制作タイプ、ホバギーって田奈先生は呼んでいたな。
 便利だから、今後俺もそう呼ぶことにしよう。

 潜航艇もゆっくり浮上してくる。
 潜水病とか大丈夫なのだろうか。
 田奈先生だから、どうにでもするだろうとは思うけれど。

 だいぶ水面に近づいてきた。
 パワードスーツの方は、ほぼ正常に稼働している。
 勿論色々壊れている部分はあるが、田奈先生の魔法で無理やり壊れた部分をバイパスさせ、魔法動作部分だけで動いているようだ。
 まあ、そんな事俺が魔法でやったら5分で魔法切れ確実だが。

 一報、ホバギーの方は重症だ。
 水を吸い込んでエンジンが完全に駄目になっている。
 ファンも欠けているし、本格的な修理が必要だ。
 現状では動かす方法は見当たらない。

 田奈先生の潜航艇が浮上した。
 パワードスーツとホバギーは水面すれすれの海面下。
 それ以上浮上する力は無いようだ。
 田奈先生は無線で何事か吹いた後、俺の方に怒鳴る。

「南浜まで持っていく」

 そのまま岩を避けて、浜の方へゆっくりと移動を開始した。
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