機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第31章 次の始まりの少し前に ~春の章~

158 春の旅行は温泉から

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 学生会作成分のパンフレット類を学生課に提出し、行事関係の施設を予約して春休みに入る。

 今年も学生会には、追試対象者が出なかった。
 なので旅行は無事全員で決行だ。

 今年は奈津希さんの見送りもあるので、奈津希さんの予定にあわせて22日午前便で出発する。
 なので強制労働は19日の終業式の午後、20日土曜日、21日日曜日の2日半の日程で行われた。
 なお22日出発の奈津希さんまで、強制労働に参加していた。
 少しでも小遣い銭を稼ぎたいからだそうだ。

 そして22日、月曜日の午前11時。
 羽田を発つ奈津希さんを俺達は皆で見送った。

 これで当分の間、奈津希さんとお別れ。
 まあどうせ戻っては来るのだけれども、やっぱり寂しい。
 なにせ一同の中心は実質奈津希さんだったからな。

 さて、気を取り直そう。
 今回の旅行は4泊5日。

 長野方面に向かい1泊。
 その後更に長野市内でもう1泊。
 その後東京へ戻って2泊というスケジュールだ。

 奈津季さんとの別れの余韻も早々に、モノレール→山手線と移動し新幹線の中の人になる。
 新幹線に乗り継ぐ際に皆で弁当を買ったのだが、1人だけ3個も買った奴がいる。
 いつもの事なので誰も気にしない。

 新幹線、長野電鉄特急と乗り継いで、最後にタクシー4台に分乗。
 午後3時半近くに到着したのは、某ジブリ映画のモデルになったとも言われるコテコテな和風旅館だ。

 いかにもな和室3部屋に通された後、早速何組かに別れて建物内探索に温泉街探索にと繰り出していく。
 俺は部屋でゆっくりと休むつもりだったのだが、例によって風遊美さんと香緒里ちゃんに捕まった。
 更に月見野先輩も加わった4人組で、外湯巡りをするんだそうだ。
 食事まで2時間しか無いけれど、大丈夫だろうか。

 フロントで外湯の鍵とガイドマップを貰い、更に巡浴手ぬぐいというスタンプを押せる手ぬぐいを4人分買って歩き始める。

「どこから回りましょうか」

「3番から上っていくか4番から5、6と回るかですね」 

「遅い時間だと遠くに行くのも何ですから、4番がいいのではないかしら」

「6番の目洗の湯は美人の湯らしいから確実に押さえたいです」

 俺はどうでもいいのだけれど。

 結局4番からという事で、石畳風のタイルの道を歩いて行く。
 木製の格子っぽい壁の四番湯まで、旅館の下駄と浴衣というスタイルで徒歩5分。

 基本的にここの温泉はちゃんと男女別で入口がちゃんと男女に別れている。
 なので俺も安心して入れる。
 で、カゴも鍵も扉もない格子状のロッカーに浴衣を入れ、風呂へ。

 あ、熱い!
 こんなの入れないぞ。
 仕方ないのでガンガンに水を入れる。

「修さん、そっちのお湯はどうですか」

 壁の向こうから風遊美さんの声。

「熱くて入れないですね。今薄めてます」
「由香里を連れてくればよかったですわ。一瞬で温度を下げられますし」
「ソフィーでも大丈夫ですね」

 向こうでも水道音。
 やっぱり熱いようだ。
 熱すぎて、なかなか適温にならない。

 うーん、他の外湯もそうなのかな。
 だとすれば、先は長そうだ。

 ◇◇◇

 結局どの外湯も熱すぎて、食事までに4、5、6の3つの湯に入るのがやっとだった。
 実は6番のお湯が、なかなか気持ちよかったせいもある。

 6番は床が他の湯がタイルだったのに対し板製で、しかもかなり色々古びた感じの内装だ。
 しかし何故かお湯の感じが他と違って気持ちいいのだ。
 無論熱かったのでガンガンに水を入れたのだけれど。

 それでつい俺も女性陣も気持ちよく長湯をしていたら、あっという間に食事時間が迫ってきてしまった。
 仕方なく4人急ぎ足で宿へと戻る。

「来年はここに2泊しませんか。1泊だと忙しすぎます」

「いいですわね。どうせならのんびりゆっくり浸かりたいですわ。宿にもお風呂が七ヶ所あるそうですし」

「何なら今年の夏はどうですか」

「すみません。実は既に別の場所を予約中です。でもそこも面白い場所ですよ」

「参考までにどんな温泉か聞いていいですか」

「それは直前までのお楽しみです」

 そうか、この組み合わせは、俺を除き温泉好き連合な訳か。
 まあここを気に入ってくれたようで、幹事としては何よりだ。
 今回の旅行では温泉宿はここだけだけれども。

 時間的にぎりぎりなので、スマホで由香里姉とルイスに連絡を入れ、部屋に戻らず直接食事会場である広間へと向かう。
 それでも広間に着いた時には、俺達以外の面子は全員揃っていた。

 なおこの24畳の部屋は俺達で貸切。
 13人と大勢なので、旅館側が配慮してくれたようだ。

「どうせ何処かで長湯していたんでしょ」

 これは由香里姉。
 完全にこっちの行動がバレているようだ。

「皆はどうしていたのですか」

「ここのお風呂入った後、温泉街の散策だな」

「温泉饅頭、色々な種類あるですよ」

「あと無料で出来る卓球屋なんてのもあったな」

 攻撃魔法科プラス詩織組はそんな感じのようだ。

「ここの旅館探検したれすよ。公式ツアーも行ったれすよ」

「面白い建物です。映画に出てきた場所もありました」

 北米組はそんな感じのようだ。
 確かにこの建物、なかなか面白そうだ。
 木造4階建てなんて今では絶対許可下りないような作りで、しかも細かい所まで色々凝っている。

 夕食が運ばれてきる。
 メインが鶏と根菜の鍋だからだとうか。
 ちょっと田舎っぽい感じのメニューだ。

 この場合の田舎っぽいは悪い意味ではない。
 地のものを使っていて美味しそうだという意味だ。

 メインの鶏と根菜の鍋の他は凍み豆腐やとろろそばややたら美味しいきのこ汁など。
 見栄えは地味だか結構いい。
 点数も多いし量もなかなかだ。

 食事をしながら色々情報交換をしていたら、あっという間に1時間以上経っていた。

「これからどうしますか」

 風遊美さんの質問に、月見野先輩が反応した。

「午前0時で男女が変わる風呂がありますよね。それを今日中には攻めたいですわ。勿論外湯も制覇したいですし。外湯は午後10時まででしたかしら」

「なら温泉街巡りと外湯巡りで午後10時まで回れるところを回った後、最後に浪漫風呂で終わりにしましょうか」

 どれだけ温泉好きなんだ、そう俺は思うは。
 ふやけるのが先か湯あたりが先か。

 まあどうせ熱いお湯を埋める時間も必要だから、そんなに長くは浸かっている事も無いだろうけれど。

 他の皆様は適当に街を散策したり、宿の風呂入ったりだそうだ。
 そうだよな、宿にもいい風呂が何箇所もあるのに、わざわざ熱くて質素な外湯めぐりする必要はあまり無いよな。

 そう思っても言えないのが俺の弱いところだ。
 まあ外湯も場所ごとに湯質が違うそうなので、意味がない事はない……かもしれないけれど。
 
 ◇◇◇

 という訳で部屋に戻ってきた時には、もう俺はくたくた状態だった。
 時間帯が良かったのか、今回は人が入れる温度になっていたところが多かったためもある。

 結局外湯制覇はあと1箇所、大湯を残すのみとなった。
 そして更に宿の風呂を2箇所入っている。
 おかげで俺は限界だ。
 もう倒れたい。

 ちなみに本日は別棟の3階にある3部屋を取ってある。
 この棟の3階はこの3部屋しかないから、事実上このフロア借り切りだ。

 そしてこの部屋、部屋専用の露天風呂なんてものまでついている。
 当然温泉好き3人がそれを見逃すはずはなく、現在入浴中。
 俺は『狭いから』という名目で逃げるのに成功したけれど。

 ちなみにこの部屋が和室15畳と次の間。攻撃魔法科+詩織組が和室14畳プラス6畳談話室プラスバス・トイレ付。北米連合が和室10畳プラス囲炉裏付次の間プラスバス付となかなか広くて豪華だ。
 作りもこの棟は鉄筋コンクリート造だけど部屋の調度が色々凝っている。
 確かにここで2泊でも良かったかな、そんな事を考えている時だ。

 トントン、と入口がノックされて開かれる。
 入ってきたのは詩織ちゃんだ。

「あ、修先輩だけですか」

「他3人はそこの階段上の露天風呂だぞ」

「いや、修先輩だけの方が都合がいいのです」

 何だろう。
 あまりいいことではない予感がする。

「まず理由は簡単なのです。お腹が空いたのです」

 おいおいまたかよ、と言いたくなる。

「今日の夕食はそれなりにボリュームあっただろ」

「でも派手さが足りなかったのです。率直に言わせてもらうとギブミー肉なのです」

 ちなみに明日の夕食は精進料理の予定だ。
 大丈夫だろうか。
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