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第31章 次の始まりの少し前に ~春の章~
159 二日目もやっぱり温泉から
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「でもそれならコンビニに行くなりすればいいだろ。普通の人は往復4~50分だけど、詩織ちゃんなら魔法を使えば実質すぐそこだし」
「コンビニは飽きたのです。そこで修先輩にお願いなのです」
しかし俺は、食べ物なんで持っていない。
「何なんだ」
「ディバックの横、内側に隠している杖をよこせなのです」
おいおい、ちょっと待て。
何故それを知っているんだ。
「魔法工学科を舐めるでないです。増強魔道具の気配くらい感じるのです」
いや、俺も魔法工学科だけれども。
確かに杖は持ってきた。
新型最強杖比較用に試作中の現有理論最強杖、ヘリテージ1号だ。
実は島では調達できない部品があり、今回の旅行で購入するつもりだった。
その為ついつい持ってきてしまった訳だ。
足りない部品とは魔力安定用のバランサーとして使うもので、主な機能はほぼ完成している。
つまり最強の杖の能力は既に発揮可能な状態だ。
「まだ完成品では無いし、貸せる段階じゃないな」
一応嘘ではない。
「でも使用には問題ない状態なのですよね」
見抜かれている。
「別に買い物に使うだけなのです。何ならバックの中身を出してカバンに入れた状態のまま貸してくれれば、そのままカバンから出さずに使うです。問題はないのです」
いやいやいやいや。
「だいたいどこまで出かける気だよ。今までの魔道具だって1000キロ往復して問題ないんだろ。それがこの杖必要って、何処へ行く気だよ」
あ、黙った。
これは相当にとんでもない処へと行くつもりだったようだ。
詩織ちゃんはちょっと考え込んで、そして再び口を開く。
「修先輩は折角の新しい杖、性能を試してみたくないのですか」
あ、悪魔の誘いを始めやがった。
確かに試してみたいけれど……
「何も今試す事は無いだろう。まだバランサー部分が未完成だしな」
「逆に言うと、バランサーが必要無い使い方をすれば問題無い訳なのですか」
あ、しまった。
つい口にしてしまった。
と、階段上から気配が近づいてきた。
どうも3人組の露天風呂タイムが終わったらしい。
「まあ今日は、受け入れ体制も実はまだなので我慢するです。明日こそは宜しくなのです」
そう言って詩織ちゃんはちょっと場所を変える。
ちょうど3人組が部屋に戻ってきた。
「こんばんわなのです」
「こんばんわ。どうしたの、詩織」
「布団の数の問題があるので、今晩はこちらにお世話になるです」
おい、さっきと言っている事が違うじゃないか。
「それでは、もう少ししたらまた来るです。宜しくなのです」
詩織ちゃんはそう言って部屋を出て行く。
きっとこれから。何処かへ買い出しに行くのだろう。
しかし一体この杖で、何をするつもりだったのだろうか。
明日の夜が怖い。
◇◇◇
そして翌日朝も、温泉三昧から始まった。
朝4時30分に起こされ、旅館内の入っていない風呂を制覇した後、朝6時ちょうどに残りの外湯、大湯に入る。
やっぱり熱すぎたので10分以上水を入れたような気がしたけれど、何とか食事前にクリア。
食事後もう一度館内を回り、午前9時に階段登って渋高薬師に行って手ぬぐいに判子をもらい、外湯めぐりはクリア。
そして更にぎりぎりまで館内の貸切風呂に入り、チェックアウトしたのは10時ちょうどだった。
風呂も造りも食事も温泉街も何もかも良かったのだが、俺個人としては次は別の宿にしようと固く思ったのだった。
何故かと言うと、この宿は貸切温泉を自由に使えるからだ。
空いていれば中に入って鍵をかければ自動的に貸切温泉。そのシステムは大変に素晴らしいし、ひとつひとつの風呂も色々凝っていてなかなかいい。
ただこの形式だと、まっとうな人々ならともかくうちの連中は勝手に混浴化してしまうのだ。
そして小さな湯船で4人位というのは、10代後半の健康な青少年にとって刺激が大き過ぎる。
後でこっそり話を聞いてみると、ルイスも同じ意見だそうである。
ルイスの場合は随行人員が多かったため、もっと酷い目にあったらしい。
という訳で俺達2人の結論だ。
この宿は本当にいい宿だ。
作りは最高にいい感じだし、料理もいかにもという感じで悪くない。
しかし残念ながら、俺達にはあっていない。
次は別の宿にしよう。
さて、バスで湯田中に出て、長野電鉄の各駅停車でのんびり1時間ちょっと。
地下鉄のような作りの善光寺下という駅で下車して、徒歩8分。
ほぼお昼ちょうどに、本日の宿であるお寺についた。
ここで荷物を預かってもらい、昼食を食べに街に出る。
なお女性陣は、お目当てのスイーツな店があるらしい。
なので宿帳上はいつも同じ部屋の筈なのに、なかなか同じ部屋にも同一行動にもならない、俺、ルイス、ロビーの3人で店を探す。
「何がいいデスかね」
「今日の夕食は精進料理だからな。つまり肉魚等無しのベジアリアンな料理だ」
「なら昼は肉だ。ごっついのがいい」
「同意デス」
昨日の宿、どうもルイスやロビーにはパンチが足りなかったようだ。
そんな訳で色々見てみたのだが、どうも蕎麦屋ばかりでガッツリ系が見当たらない。
本当は焼肉食べ放題なんていうのが正解なのだろうけれど。
結局定食もある系の蕎麦屋に入って、3人とも量が多そうなソースカツ丼、そば、サラダ等が大きな器に入った弁当形式のものを頼む。
結果的にはこれは結構美味しかった。
カツ丼のソースはさらっと甘めでカツも充分厚い。蕎麦も食べてみると結構今まで食べたものと違って美味しい。
「思ったより良かったな」
「もっと肉食べたいデス」
「明日の昼まで我慢してくれ。明日の昼は高級バイキングだ」
この後は女子組と合流して善光寺見学だ。
本日宿泊する宿坊の方が案内をしてくれる予定。
そして待ち合わせの10分前、午後1時20分に全員集合が完了した。
女子組は近くに有名なスイーツの店があるらしく、そこでパンケーキを食べてきたそうだ。
詩織ちゃんはその店のものらしい紙袋を下げている。
気の早いお土産だろうか。
食べ物だといたまないかな、夏だし。
そして本職の坊さんが案内する、善光寺見学がスタートする。
「コンビニは飽きたのです。そこで修先輩にお願いなのです」
しかし俺は、食べ物なんで持っていない。
「何なんだ」
「ディバックの横、内側に隠している杖をよこせなのです」
おいおい、ちょっと待て。
何故それを知っているんだ。
「魔法工学科を舐めるでないです。増強魔道具の気配くらい感じるのです」
いや、俺も魔法工学科だけれども。
確かに杖は持ってきた。
新型最強杖比較用に試作中の現有理論最強杖、ヘリテージ1号だ。
実は島では調達できない部品があり、今回の旅行で購入するつもりだった。
その為ついつい持ってきてしまった訳だ。
足りない部品とは魔力安定用のバランサーとして使うもので、主な機能はほぼ完成している。
つまり最強の杖の能力は既に発揮可能な状態だ。
「まだ完成品では無いし、貸せる段階じゃないな」
一応嘘ではない。
「でも使用には問題ない状態なのですよね」
見抜かれている。
「別に買い物に使うだけなのです。何ならバックの中身を出してカバンに入れた状態のまま貸してくれれば、そのままカバンから出さずに使うです。問題はないのです」
いやいやいやいや。
「だいたいどこまで出かける気だよ。今までの魔道具だって1000キロ往復して問題ないんだろ。それがこの杖必要って、何処へ行く気だよ」
あ、黙った。
これは相当にとんでもない処へと行くつもりだったようだ。
詩織ちゃんはちょっと考え込んで、そして再び口を開く。
「修先輩は折角の新しい杖、性能を試してみたくないのですか」
あ、悪魔の誘いを始めやがった。
確かに試してみたいけれど……
「何も今試す事は無いだろう。まだバランサー部分が未完成だしな」
「逆に言うと、バランサーが必要無い使い方をすれば問題無い訳なのですか」
あ、しまった。
つい口にしてしまった。
と、階段上から気配が近づいてきた。
どうも3人組の露天風呂タイムが終わったらしい。
「まあ今日は、受け入れ体制も実はまだなので我慢するです。明日こそは宜しくなのです」
そう言って詩織ちゃんはちょっと場所を変える。
ちょうど3人組が部屋に戻ってきた。
「こんばんわなのです」
「こんばんわ。どうしたの、詩織」
「布団の数の問題があるので、今晩はこちらにお世話になるです」
おい、さっきと言っている事が違うじゃないか。
「それでは、もう少ししたらまた来るです。宜しくなのです」
詩織ちゃんはそう言って部屋を出て行く。
きっとこれから。何処かへ買い出しに行くのだろう。
しかし一体この杖で、何をするつもりだったのだろうか。
明日の夜が怖い。
◇◇◇
そして翌日朝も、温泉三昧から始まった。
朝4時30分に起こされ、旅館内の入っていない風呂を制覇した後、朝6時ちょうどに残りの外湯、大湯に入る。
やっぱり熱すぎたので10分以上水を入れたような気がしたけれど、何とか食事前にクリア。
食事後もう一度館内を回り、午前9時に階段登って渋高薬師に行って手ぬぐいに判子をもらい、外湯めぐりはクリア。
そして更にぎりぎりまで館内の貸切風呂に入り、チェックアウトしたのは10時ちょうどだった。
風呂も造りも食事も温泉街も何もかも良かったのだが、俺個人としては次は別の宿にしようと固く思ったのだった。
何故かと言うと、この宿は貸切温泉を自由に使えるからだ。
空いていれば中に入って鍵をかければ自動的に貸切温泉。そのシステムは大変に素晴らしいし、ひとつひとつの風呂も色々凝っていてなかなかいい。
ただこの形式だと、まっとうな人々ならともかくうちの連中は勝手に混浴化してしまうのだ。
そして小さな湯船で4人位というのは、10代後半の健康な青少年にとって刺激が大き過ぎる。
後でこっそり話を聞いてみると、ルイスも同じ意見だそうである。
ルイスの場合は随行人員が多かったため、もっと酷い目にあったらしい。
という訳で俺達2人の結論だ。
この宿は本当にいい宿だ。
作りは最高にいい感じだし、料理もいかにもという感じで悪くない。
しかし残念ながら、俺達にはあっていない。
次は別の宿にしよう。
さて、バスで湯田中に出て、長野電鉄の各駅停車でのんびり1時間ちょっと。
地下鉄のような作りの善光寺下という駅で下車して、徒歩8分。
ほぼお昼ちょうどに、本日の宿であるお寺についた。
ここで荷物を預かってもらい、昼食を食べに街に出る。
なお女性陣は、お目当てのスイーツな店があるらしい。
なので宿帳上はいつも同じ部屋の筈なのに、なかなか同じ部屋にも同一行動にもならない、俺、ルイス、ロビーの3人で店を探す。
「何がいいデスかね」
「今日の夕食は精進料理だからな。つまり肉魚等無しのベジアリアンな料理だ」
「なら昼は肉だ。ごっついのがいい」
「同意デス」
昨日の宿、どうもルイスやロビーにはパンチが足りなかったようだ。
そんな訳で色々見てみたのだが、どうも蕎麦屋ばかりでガッツリ系が見当たらない。
本当は焼肉食べ放題なんていうのが正解なのだろうけれど。
結局定食もある系の蕎麦屋に入って、3人とも量が多そうなソースカツ丼、そば、サラダ等が大きな器に入った弁当形式のものを頼む。
結果的にはこれは結構美味しかった。
カツ丼のソースはさらっと甘めでカツも充分厚い。蕎麦も食べてみると結構今まで食べたものと違って美味しい。
「思ったより良かったな」
「もっと肉食べたいデス」
「明日の昼まで我慢してくれ。明日の昼は高級バイキングだ」
この後は女子組と合流して善光寺見学だ。
本日宿泊する宿坊の方が案内をしてくれる予定。
そして待ち合わせの10分前、午後1時20分に全員集合が完了した。
女子組は近くに有名なスイーツの店があるらしく、そこでパンケーキを食べてきたそうだ。
詩織ちゃんはその店のものらしい紙袋を下げている。
気の早いお土産だろうか。
食べ物だといたまないかな、夏だし。
そして本職の坊さんが案内する、善光寺見学がスタートする。
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