機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第33章 詩織ちゃんの新魔法と裏切りの黒魔女

178 風遊美さんの宿題

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 やがて風遊美さんは軽く頷いて、俺達の方を見た。

「これから使う魔法は、かなりの魔力を消費します。ですのでこの杖を使わせてもらいます」

「予知魔法ですか?」

 世田谷の質問に、風遊美さんは首を横に振る。

「結果としては同じですが、あくまで空間操作魔法の応用です。
 さて、詩織さんには、これから私とじゃんけんをしてもらいます。勝負は10回。一度でも勝つか引き分けになったら、この魔法の使い方を教えます。ただこの魔法は魔力をかなり使うので、1日に一度しか勝負はしません。
 もう一度言いますが、1日に勝負は1度です。1度の勝負で10回連続のじゃんけん。なので準備ができたら言って下さい」

 大技を使うからよく解析してね。そう、あからさまに言っている。
 ただ、じゃんけんか……

 風遊美さんがこれから使うのは、空間操作魔法の応用。そう自分で宣言している。
 つまり詩織ちゃんでも使える可能性が高い魔法という訳だ。
 あと、予知魔法ではないけれど、結果としては同じとも言っていたな。
 それがじゃんけんで効果を出すというのは、どういう理屈だろう。

 じゃんけんで確実に勝つには、未来予知を使うか相手の出す手を読心魔法で読むか……
 それがどう空間操作魔法と結びつくか。
 あ、待てよ、空間とは、つまり……

 風遊美さんはふっと笑う。

「修さんは気づいても言わないで下さいね。今回は詩織さんに考えてもらうつもりですから。でも、特別におまけとして、世田谷さんやルイスさんに手助けしてもらってもいいですよ」

 なので俺は何も言わない。

 詩織ちゃんが自分の杖を取り出した。
 解析魔法と何か空間魔法らしきものを同時に発動する。

 縦横高さの俺が感じる世界に伸びる、立体方眼紙のようなものが一瞬見えた気がした。
 恐らくは俺が見えないし感じられない方向へも、座標軸や方眼が伸びているのだろう。
 見えない部分すら解析してしまう、かなり強力な解析魔法のようだ。

 同時に世田谷も解析魔法を展開する。
 世田谷の魔法は、残念ながら俺にはよくわからない。
 発動したのをただ感じるだけだ。

「風遊美先輩、お願いするのです」

 俺もこっそり解析魔法と審査魔法を同時発動する。
 俺の魔法では、きっと何も感知できない。
 でも感知できないのも結果であり、証拠でありヒントになる。

「では行きます。私が勝っている限り同じテンポで連続して行います。では!」

「ジャンケン、ポン」

 グー対パー
 グー対パー
 チョキ対グー
 パー対チョキ
 チョキ対グー
 グー対パー
 パー対チョキ
 パー対チョキ
 チョキ対グー
 グー対パー

 風遊美さんの完勝だ。

「どうですか、見えましたか」

 風遊美さんが詩織ちゃんに聞く。

「まだ見えてない。まだ見えていないのです」

 俺の魔法でも、何も感じなかった。
 わかるのは、風遊美さんが魔法を発動した事だけ。
 その魔力が何処に作用したのかは、俺の魔法では感知できなかった。

 そして、俺が見えなかったことこそが、俺の予想を裏付ける。
 ただそれを、俺が実証する方法は無い。
 おそらく空間操作系の魔法使いでないと見えないし、使えない方法だろうから。

「1つ聞いていいですか」

 世田谷が風遊美さんに尋ねる。

「直接的な回答でなければ」

「鷺沼先輩は今使った魔法、どれ位前から使えたんですか」

 風遊美さんは軽く頷く。

「ついさっきからです。まさか空間魔法でこういう事が出来るとは、今まで思っていませんでしたから。そういう意味では、やっぱり奈津希って怖いですよね」

 おいおい、ぶっつけ本番かよ。
 でも何となく俺も、そして質問した世田谷も、きっとそれに気づいていた。

 つまり風遊美さんは、俺達に相談を受けてから今の魔法を編み出したのだ。
 俺達の持っていた情報だけで。

「では、次の勝負は明日です。それまでのんびり考えて下さい」

 そう言って風遊美さんは立ち上がり、そのまま客間の方へ消えた。
 それを見送ってから、世田谷はため息をつく。

「何かやっぱりとんでもないわよね。あれだけのヒントで未来予知の魔法を作り出すなんて」

「奈津希先輩と風遊美先輩は全くタイプが違うのに、こういう時はツーカーなんだ。僕達には全くわからないんだけどな」

 世田谷やルイスの言葉に、俺はあえて何もコメントしない。
 実は俺にも、風遊美さんがどんな魔法を使ったのかわかるような気がしたからだ。

 じゃんけんという形式にした理由も、何となく想像がつく。
 その辺は後で、こっそり風遊美さんに確かめてみよう。

 一方、詩織ちゃんはまだ無言で考えている。
 本当は俺もヒントを言いたいのだが、俺の予想が正しいか、まだ答え合わせをしていない。
 俺がヒントを出す事自体も、風遊美さんに禁止されている。

「ちょっと部屋で作業してくる」

 俺は3人に断って自分の部屋へ。
 扉を閉めたと同時に、背後に気配を感じた。
 1人じゃない、2人だ。

「答え合わせですか」

 俺は振り向かずに言う。

「修さんは気づくと思ったんです。やっぱりわかりましたね」

 風遊美さん、そしてもう1人は香緒里ちゃんだ。
 3人で俺の部屋の小テーブルを囲む。
 椅子は2つなので、俺はベッドに腰をかけているけれど。

「香緒里ちゃんも気づいたんだな」

「その前に、世田谷先輩と詩織ちゃんが話していたのが聞こえましたから」
 成程、俺より早く気づいていた訳か。

「俺は風遊美さんにヒントを出してもらうまで気づかなかったな。香緒里ちゃんに負けたな」

 風遊美さんが微笑む。

「あれで気づけば充分です。向こうの部屋の3人には、もう少し魔法の方向性や組み立て方を考えてもらいましょう。自分で自分の持ち魔法を整理して新しい魔法を開発する訓練をしておけば、今後別の壁にぶつかった時にも役に立つと思うのです」

 風遊美さんが言っている事は、俺にはよく分かる。
 実際、風遊美さんと奈津希さんのおかげで、俺も攻撃魔法や治療魔法に準じる魔法を使えるようになったのだ。

「それでは答え合わせをお願いします。でもその前に、確認をいくつかしていいですか」

 俺の言葉に、風遊美さんは頷く。
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