機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第35章 高専最後の夏休み ~やり残した事は何ですか~

187 この組み合わせは必然か?

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 あの夜。話が腐り始めてから後の事は、思い出したくもない。
 身の毛もよだつおぞましい話の後に、やっと俺達は小樽の貸別荘に戻ったのだが、そこでも俺は地獄を見た。

 待っていたのは女子大生&女子高専生の集団生着替え。
 無論とっさに着替えを持って隣の貸別荘に逃げたのだが、そこで百物語開催中の由香里姉ら残留組と遭遇。

 さらに逃げた結果、貸別荘の外でこそこそと着替える羽目になった。
 思い切り公道に面していたのだが、背に腹はかえられない。
 通行人がいなかったのが幸いだ。

 濡れたタオルや浴衣を洗濯機で洗って、貸別荘内にロープを張って干して、翌朝乾いたのを回収して詩織便で聟島に送り返してから出発。

 札幌駅すぐのホテルで荷物を預けた後、雪印パーラーで超巨大ジャンボパフェを皆で食べるまでがお約束だ。
 何せ並外れた胃袋を持つ鉄人級の魔法使いが何人もいる。
 中にコーンごと埋まったアイスを発見したり楽しみながら、あっさりと1万円強する巨大パフェを平らげてしまった。

 後は自由行動で、俺は1人抜け出して北大内の食堂で牛とろ丼と単品チキンチーズカツなんて変な組み合わせて食べた。
 魚とか甘味ばかりで、久々にこういった物を食べたい気分だったのだ。
 ついでにキャンバス内をのんびり歩いてホテルに戻る。
 実は昨日の秘湯探検で必要以上に疲れた気がするので、あまり動きたい気分でも無かったし。

 ならわざわざ北大まで行くのは自分でも変だと思うのだが、貧乏性なので何かしら観光せずにはいられなかったのだ。
 実は俺も北海道は初めてだし。
 どうせ時計台を見てがっかりするなら、北大に行ってやれと思っただけだ。

 さて、3時半頃に宿のホテルに戻ると、皆疲れているのか既にチェックインしていた。
 なので香緒里ちゃんにSNSで連絡して部屋を尋ねる。

 俺の部屋はトリプルルームで、風遊美さんと世田谷が同室だそうだ。
 本当は俺とルイスとロビーの、男3人が同じ部屋の予定だったらしい。
 でも勝手に色々な組が部屋を占拠した結果、こういう事になったとの事だ。

 部屋割りを見ると大体想像がつく。
 大ボス組の由香里姉、鈴懸台先輩、月見野先輩が同じ部屋のは想定内だ。
 北米組がロビーを取ってジェニー、ソフィー、ロビーと固まってしまったのが多分悪かったんだろう。

 残った中で攻撃魔法科のルイス、愛希、理奈、エイダが自然に組んだ。
 更に残ったメンバーで1年生の1年の沙知、美雨と同じ部屋に、現学生会役員の香緒里ちゃんと詩織ちゃんが入った。
 結果、俺と同じ部屋は、風遊美さんと世田谷というよくわからない組み合わせになった訳だ。

 まあ世田谷は学生会の面子ではないから、妹と俺以外とはあまり馴染みがない。
 風遊美さんも、今の1年生から見たら既に卒業した人間だ。
 俺も既に学生会はリタイヤしている。
 だからこの3人が一緒なのは、結果的には必然なのかもしれない。

 さて。部屋をノックして声をかけると、すぐにドアが開いた。
 世田谷が開けてくれたようだ。いつもの実態不明な黒魔法で。

「悪い、遅くなった」

「と言っても皆が早いだけだけどね。昨日の夜は遊びすぎたわ」

 世田谷は昨日、百物語組だった。
 黒魔術で効果音だの動く影だの色々演出をかけ、結果洒落にならない程に話を怖くして、1人でトイレに行けない人を量産したらしい。

 きっと本物の闇属性の魔女に怪談をさせる方が間違っていたのだろう。
 まあ膀胱に支障をきたした人はいなかったようだけれども。

「そうですね。私の方も昨日夜は温泉2つはしごしましたし」

「それで今日はもう予定は無いよね。長津田、どうするの」

「腹が減ったら食べに行く位かな。でもどうせ駅かどこかで何か食べているだろ。一息入れてからでいいんじゃないか」

「そうですね」

「そう言えば長津田って、去年までは結構学生会でハーレム状態だったらしいわね」

 世田谷がいきなり、とんでもない事を言い出した。

「今までの話を色々聞いてさ。これは追及したら面白そうかなと思って」

「勘弁してくれよ。折角の旅行だし」

「せっかくの旅行だからこそ追及のチャンスなんじゃない。ゼミでやったら顰蹙買うだろうし、いつものマンションでやったら利害関係者多くて……それも面白いかも」

「おいおい」

 風遊美さんは止めずに、笑って見ている。

「もう5年で卒業だし学生会も卒業したし、そろそろ引導を渡してあげようかなと思って」

「世田谷自身はどうなんだよ」

「大学行ってから考えるわ。高専うちの連中はどうもちんまりまとまり過ぎていて私向きじゃないし。うちの学年だと、強いて言えば魔法工学科の上野毛かな」

 おい、よりによって奴かよ。
 上野毛は確かに天才的に頭もいいし魔力もあるし顔もいい。性格も付き合ってみれば凄く良い。

 ただし普段から女装してるし言動はぶっ飛んでいる。学校の工作展示にアンドロイドの試作品として、ダッチワイフを持ち込むような奴だ。

「奴の良さをわかってもらえて個人的には嬉しいけどさ。一般的なセンスじゃないな、それ」

「人は人、私は私」

 こいつも我が道を行くタイプだった。

「という訳で私の話はここまで。本題は長津田の恋愛関係の追及よ。そこで長津田に最初の質問。長津田は自分が誰を好きか、誰を気に入っているか誰をもとめているか自覚ある?」

 いきなりの質問だ。

「質問内容が微妙にあやふやなんで答えにくいな」

「言うと思った。でも今の質問で答えた方が傷は少なかったと思うわよ」

 世田谷は悪そうな笑顔がよく似合う。さすが黒魔女。

「じゃあずばり言うよ。由香里先輩、風遊美先輩、香緒里ちゃん、詩織ちゃん。あと私と入れ替えで今はいないけれど奈津希先輩もきっとそう。この5人についていつも視野に入れようとしていたり動向を無意識に気にしているのって、自覚ある?」

 いきなり豪速球がきた。
 しかも直球ストレートのデッドボールだ。

「まあ薊野姉妹は幼馴染だし、風遊美さんと奈津希さんはすぐ上の先輩で何かと相談しやすかったしさ。詩織ちゃんはまあ、色々経緯がある訳で」

「長津田が言っているのは原因というか要因。私が言っているのは観察結果」

 世田谷、容赦無い。
 風遊美さんは世田谷を止めるどころか、面白そうに見ているし。

「さて次行くよ。このうち奈津希さんは彼氏がいるし、風遊美さんとは振ったか振られたかしたんだよね。さあこれで残り3人。ここまでに異義は」

 ありません。というか……

「容赦ないな。世田谷」

「うん、よく言われる」

 黒魔女に言葉のジャブは効かない。

「ついでに言うと風遊美さんの件は某誰かの推測だったんだけど、本人が認めたという事で」

 黒魔女、本当に徹底的に容赦ない。

「更に絞るよ。次は詩織ちゃん。長津田が詩織ちゃんを気にしているのは恋愛感情とかそういうのでは無いと思う。あれはどう見ても疑似兄妹とかそっち方面よね。長津田は詩織ちゃんの事を先輩としてというか兄貴分として色々心配している。詩織ちゃんとは恩人として又は頼りない危なっかしい兄貴分として保護しつつ保護されている。そんな感じかな。
 まあこれは衆目一致する処なんで異義申し立ては省略するよ」

 まあ詩織ちゃんに対しては異義はない。
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