機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第36章 お役目のない学園祭

195 詮索無用・口外厳禁

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 ちなみに少しだけ、弁明というか解説をしておきたい。
 あっさりとダイヤとかルビーを作っているけれど、これは玉川先輩とか上野毛レベルの魔法使いだからこそ出来るのだ。
 実際ダイヤモンドを錬成できる魔法を使える魔法使いは、俺の知っている限り玉川先輩しかいない。
 ルビーだと若干人数が増えるが、それでも2人を含めてこの島全島でも5~6人ってところだろう。

 無論沙知ちゃんは、承知の上で宝石を指定して材料を渡している。
 決して魔法使いなら誰でも出来る訳ではない。

「そう言えば沙知ちゃんは、魔法を使わないの?」

 さっきの怪談と宝石騒ぎで酔いが冷めたらしい三田さんが、言ってはならない事を口にしてしまった。

「私の魔法、知りたいですか……」

 沙知ちゃんの微笑。

「うん、どんな魔法なの?」

「私の魔法は本来は検知魔法で、誰が何処を歩いているかとか何が何処にあるかを調べる魔法です。でも、色々応用は有りますよ。例えば三田先輩、ちょっとこれを見て下さい」

 沙知ちゃんは右手の指を1本立てる。

「え、その指を見ればいいの」

「そうです。では行きますね。貴方は恋人がいるいない別れた1ヶ月2ヶ月3ヶ月原因性格台詞不明性格自分……」

 超早口で色々言っている。
 俺は知っている。これを聞いた時点でもう手遅れという事を。
 30秒程早口言葉のような呪文のような台詞を唱えた後、沙知ちゃんはにやりと笑った。

「じゃあ行きますね、三田先輩のプロファイルデータ。恋人は現在はいない。3ヶ月前に半年付き合った恋人と別れた。なお肉体関係は無かった。別れた理由は性格の不一致、具体的には彼が三田先輩についていけないと思ったから。今の悩みは専門の数学の単位とダイエット。こんな処でいかがですか」

「えー!何でー!」

「これが私の魔法ですから。あ、心は読んでいないですよ。純粋に先程の言葉に対する反応を分析しているだけです。魔法でですけどね」

 可愛くウィンクしてみせるが、全然魔法は可愛くない。

「ははははは、今日一番怖い魔法だわこれは」

 それでも三田さんは怒らずむしろ納得している。
 その反応がわかっているから、沙知ちゃんは平気でさっきの内容を喋ったのだろうけれども。

「さて、トリはやっぱり詩織先輩お願いします」

「了解ですよ。では皆様、こちらにお集まり下さい。

 何処へ飛ばされるんだろう。外は雨だけれども。
 そんな事を思いながら、俺達は詩織ちゃんに指定された枠内に入る。

「これから行く場所は夜間立入禁止なので静かにお願いします。なお、これから使う魔法は口外厳禁詮索無用で宜しくお願いします」

 おいおい理奈ちゃん。

「では、行くですよ」

 ふっと足元の感覚が失われる。

「到着まで約1分なのです。暫くお待ち下さいなのです」

 あ、これはあかん距離だ。東京より絶対遠いぞ。
 そう思いつつも、こうなったらどうしようもない。

 そして着地。きちんと整地された下がある。
 そしてあたりは暗い。

「静かにお願いするのです。足場と柵はちゃんとしているので大丈夫なのです」

 確かに柵があって、その向こう側下方に光る街が広がっていた。

「何万ドルか不明ですが、夜景見物なのです」

 見えるのは結構大きな街だ。かなり高いビルがいくつも立っている。
 光っている水面は、海だろうか湖だろうか。
 活気があって、そして綺麗だ。

「綺麗ね」

 世田谷が似合わない事を言っている。でも確かに綺麗だ。

「でもここって、ひょっとしてハワ……」

「詮索は厳禁なのですよ」

 誰かの台詞は、詩織ちゃんに止められた。

「さて、名残惜しいですが、そろそろ戻るのです」

 詩織ちゃんの言葉とともに、再び浮遊状態になる。
 そして明るい研究室へと、俺達は無事戻ってきた。

 ◇◇◇

「詩織、今回はやり過ぎ」

「だって晴れていて景色のいい場所、今日だとあそこが一番近かったのです」

 学生会室へ戻るグレムリンズと同行中である。
 ちょっと色々釘をさしておきたいなと思ってだ。

「参考までに修先輩、さっきのが何処かわかっています?」

 理奈ちゃんの質問。

「ハワイのホノルル近郊」

「正解です。やっぱりわかりますか」

「夜景があれだけ鮮やかな時間を考えれば想像できるだろ。気温もここより暖かかったしな」

「更に正確に言うとダイヤモンドヘッド山頂の展望台なのです。夜間立入禁止なのでちょうどいいのです」

「無断新入で捕まったらどうするんだ」

「なので沙知を連れてきたのです。レーダー完備で問題ないのです。ついでなので司会進行もお願いしたのです」

 要はグレムリンズ全員が、計画犯にして故意犯であると。

「あと何故に上野毛がいるんだ」

 しっかり上野毛まで、グレムリンズに紛れている。
 なまじ小柄で女装が似合うだけに、区別がつかない。

「いやマジックショーをすれば甘い物食べ放題と詩織っちに聞いてさ。まさか行き先が長津田の研究室だとは思わなかった。まあおかげで色々食べられたし、悪くは無かったかな」

 上野毛はお土産のケーキ類が入った箱を片手に持っている。
 他の面々もそれぞれの戦利品を手にしている。

「本当はオスカーちゃんにサファイアとルビーを作ってもらう予定だったのです。リビングデッド先輩がいたのでダイヤに予定変更したのです」

「玉川師匠がいたから詩織ちゃんに教えといたんだよ。師匠ならダイヤモンドを作れるって」

 上野毛が詩織ちゃんとツーカーで共犯なのも、よくわかった。

「詩織っちとは、リアルロボット大戦で色々協力しているしね」

「今年の企画用の敵メカを一緒に量産したのです。また一儲け出来たのです」

 ついでに上野毛と詩織ちゃんのつながりも、よくわかった。
 確かに上野毛は技術屋としては魔技高専トップクラスだし、色々勉強になることもあるだろう。

「何れにせよ、今後はあまり今回みたいな派手な事は禁止な。また妙な組織や国に狙われたらたまったもんじゃない」

「長津田はそう言うけどさ、詩織っちの魔法の威力の半分は、お前の処の研究室が作った異常性能の魔力増幅機構の賜物だろ」

「わかっている。それを含めてだ」

 上野毛の言っている事も、また事実だ。

「まあ長津田の言っている事もわかるし正しいけどな。詩織っちも、次からは移動範囲はこの島限定にしとこうな」

「一応了解なのです」

 この辺のバランスをわかってくれる辺りは、見かけはグレムリンズでもやはり上野毛だ。

「じゃあ俺は研究室に戻る。あとは宜しくな」

「戻るのか」

「一応さっきの連中にも口止めをしておくからさ」

「相変わらず苦労性だな。ハゲるぞ」

「禿げたら頭皮だけを培養再生するよ。じゃあな」

 大学との境の渡り廊下で皆と別れ、廊下を引き返す。
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